(5)
ーーー私があの男から逃げ続けて一体どのくらいが経過したのだろう…
気がつけば私と加奈子は四人部屋の病室で男から身を潜めていた。
いつ見つかってもいいように私は銃を、加奈子はナイフをそれぞれ自分の利き手に持ち、息を殺してその時を待つ。
「ね…ねぇ、青ちゃん。本当にここにやってくると思う?」
緊張した空気が漂う中で加奈子は声を震わせながら私に尋ねてきた。
「来るよ、絶対」
私は即答した。男は絶対来るという根拠に確信があった。
「どうしてそう言い切れるの?」
また加奈子は私に尋ねて来た。
「…加奈子さんはあいつの服装見ましたか?」
「え?うん」
加奈子は突然の質問に驚きながらも、自分の答えを述べた。
「軍服着てたよね?」
「はい」
私は目で頷いた。
「加奈子さんのいう通り、彼は軍服を着ていました。最初はコスプレかと思っていたんですが、あの身のこなしや銃の扱い方を見て思いました。あれはコスプレじゃない、本物の軍人だって…」
私は言葉を続けた。
「加奈子さん、あいつは軍人です。この意味、分かりますか?」
私は加奈子に聞いた。加奈子は首を横に振ってわからないという意思を示した。
「つまりですね…」
私は加奈子に向かって言った。加奈子はそんな私をただじっと見つめている。
「あいつは見つけた獲物は決して逃さない」
ーーーコツン…
ふとこの近くで足音が静かに響いた。
(来ました)
私は目で加奈子に合図を送る。加奈子は震えながらも黙って決意を込めたように首を縦に振った。
私と加奈子はそれぞれの武器を片手に持ち、死ぬ覚悟を決めて戦闘体制に突入したーーー