(4)
ある階のフロアにて…
「休める場所、あるかしら?」
加奈子はキョロキョロとあたりを見回し、休める所を探していた。
「…なんか血生臭いですね」
「そりゃあ殺し合いなんてしてるところよ?血の臭いがして当然でしょ」
私が手で口を覆っていると、加奈子はさも当然のように言いながら、まだ休憩できる場所を探している。
「まぁ、そうですけど…でもここは特に酷いです」
私はさりげなくここから去ろうと加奈子に訴えたが彼女は聞かずに休憩所を探しまわる。
「あの加奈子さん…」
私は仕方なく加奈子に直接伝えようとした。
その時だった。
「助けてッ」
ふと女性の声が聞こえた。私と加奈子は同時に声のした方を振り向く。目の前には二十代の女性が肩と腹部から血を流してこちらに向かって歩いていた。
「助け…」
女性が手を私達の方へ伸ばし助けを求めていた。
しかし、彼女は後ろから何かを振り下ろされた。それが頭にふれた瞬間バキャという音とグチャという音が同時に聞こえた。女性は床に抵抗なく倒れる。おそらく即死だろう。
女性の頭には斧がめり込んでいた。
女性が倒れている後ろでは五十代男がたっていた。男は女性の頭にめり込んでいる斧を掴み、抜く。気味の悪い音を出しながら女性の頭から斧が抜ける。
斧が抜けると、男はこちらをギロッと睨んできた。
「ひっ…」
加奈子は震えながらその場に座り込む。
「ちょッ、加奈子さん!」
私は座り込んだ加奈子を立たせるために肩を揺さぶりながら名前を呼ぶが、目の前の男に集中しているためか返事はない。
「お…前ら…こ…殺す!」
男は斧を掲げながらこちらに向かって走りだす。
「くッ」
私は男に銃を向ける。
「ははっ…どうせ…おもちゃの…銃だろ」
男は笑いなが走ることを止めない。斧がすぐ目の前まできている。
「青ちゃん!」
加奈子が悲鳴のような叫びをあげている。
私は目を瞑ってトリガーに人差し指を置き、トリガーを引いた。
バンッ
しばらくして、バタッと倒れる音が廊下に響いた。
「あ、青ちゃん…」
加奈子は目に涙を溜めていた。
私がゆっくりと目を開けると、目の前には胸から血を流して仰向けに倒れている男がいた。おそらくもう息を引き取っているだろう。胸のあたりから血が滲んできている。
私が斧を持ったまま死んでいる男を見ていると加奈子が私に抱きついてきた。
「加奈子さん、私は大丈夫ですから」
私は加奈子の頭を撫でながら彼女を落ち着かせた。
「おうおう、なんだよ騒がしいなぁ」
ふとこんな声が聞こえた。振り向くと、軍服を着た三十代くらいの男が不気味な笑みを浮かべてたっていた。右手には自動拳銃をもっている。
「あなた、誰?」
私は男に不機嫌な声を出した。
「おいおい、そんな怖い顔をするなよ…俺はとにかく誰かを殺したいだけなんだからさぁ」
男が右手の銃を私達にむけ、すぐさま発砲した。
銃声がこの階の廊下に響き渡った。