(5)
次の日の朝はなぜかみな忙しそうだった。
(どうしたんだろう?)
私は不思議に思った。何か今日は特別な日なのかな?
え?どうしよう、全然この後なにかあるってわけじゃないから手伝うべきなんだよね?一応ここにいさせてもらってるわけだしさ。
……とりあえず、顔を洗おう。
私はベットから起き、洗面台で顔を洗う。
顔をあげるとそこには死ぬ前と変わらない自分の姿が映っていた。
なんか死んだ後って肌が青白くなったりするとか聞いたことあるんだけど…私の顔は普通だな。髪の毛もサラサラだし。
え?もしかして私ってまだ生きてるんじゃ…ってそんなわけないか。事実私怖い目にあったし。
……だめだ。あの時のことは思い出しちゃいけない。嫌なことは心の奥の引き出しにしまっておこう。うん、そうしよう。
「香織、起きてるか?」
突然、ドアの向こう側からドクロの声が聞こえた。
えぇ、勿論起きてますとも。私割と朝早く起きちゃうんだよね。眠りが浅いのかな?
「あ、うん。起きてるよ」
私はドアの向こう側にいるドクロに聞こえるくらいの大きさで叫んだ。
……タメ口でいいって言ってたけど…年上の人にそれっていいのかな?まぁ、本人がそうしてほしいっていってるからいいんだろうけど。
あれ?でもネネさんって人には勿論敬語の方が絶対いいよね?会ったことないし、初対面の人にタメ口はダメでしょどう考えたって。
私はドアの方へ向かいながらそう思う。
ドアを開けるとそこにはドクロと昨日会ったフウキさんがいた。
「やぁ、おはよう香織ちゃん」
フウキさんは昨日と変わらない笑顔でそう挨拶してくれた。うん、この人いいな。凄く仲良くできそう。
「おはようございます。ドクロ、フウキさん」
「あははっ、僕にもタメ口でいいんだよ香織ちゃん」
フウキさんはそういって面白そうに笑った。
何だろう、なんかこの人めちゃくちゃ笑う人だな。お歳が百を越えてるように見えないんだけど…見た目が可愛いからかな。
「あ、はい…じゃなくて、分かった!」
「うんうん。若い子って可愛いもんだね」
フウキはそう言ってまた笑う。
あ、なんか言ってることはお年寄りみたい。なんだかそこも見た目が可愛いから可愛いなぁ。
「そういえば、今日って何かあるの?」
なんだか皆慌ただしそうな感じだったんだけど。
「ん?どうしてだい?」
フウキが聞き返してくる。
あれ?何もないのかな?
「いや、なんかみんな大変そうな音だしてて…なんか『バトルロイヤルの後片付けが~!』みたいな声とかも聞こえたし…」
バトルロイヤルって言葉も気になるけど、まぁ今は置いておこう。
二人の顔を見ると、なぜかどちらとも困った雰囲気をだしていた。
なんだろう、お母さんも言いたくないことがあるとあんな感じになってたな、大人ってみんなそうなの?
「……あ、やっぱりなんでもないよ~あははははは~」
よし、ここは誤魔化そう。うん、知られたくないことみたいだしね。ここは笑ってごまかせ!
「………そうしてくれると有り難い」
暫くしてドクロが一言そう言った。
なんかドクロってあんまり喋らないよなぁ。恥ずかしがり屋とか?
「あ、そうだ!ねぇねぇドクロ」
ドクロで思い出した。お願いしようと思ってたこと、叶えてくれるかなぁ
「なんだ?」
「あのね…」
ドクロがなんだか身構えてる雰囲気だけど、そこはあえて気にしないでおこう。
「…ここの案内、してほしいなぁって思ったんだけど…ダメ?」
お母さんもこれには弱かったな、なんでか。やっぱり親ってみんな子供には弱いんだろうなぁ。
あれ?そうなるとドクロにやったってダメじゃね?別に親でもないんだし…あぁ、失敗したぁぁぁぁぁ!
「……」
ドクロは黙ったまま何か考え込んでいる。
あ、本気で失敗したな、これ。
「…まぁある程度なら、な」
「……やったぁぁぁぁ!」
よ、良かったぁ。なんとかお願い聞いてもらえそう。
「…いいのかい?」
フウキが心配そうにドクロに言う。
ドクロはただ一言、
「死へ誘うわけじゃない」
と訳の分からないことをいいながら、フウキの肩に手を置いた。