(4)
「はぁぁぁ…なんか、疲れたなぁ」
香織はベットの上にうつ伏せになりながら溜め息をつき、ぼそりとそう呟いた。
「ドクロって…変な名前だよなぁ」
「そうかい?死神みたいなあいつにはピッタリの名前じゃないか」
「そうだけど…って…え?!誰?!」
頭上から聞き覚えのない声が聞こえ、香織は思わずベットから飛び起きる。
彼女の目の前には緑の髪と目を持った少女が座っていた。
少女の髪は肩につくかつかないかくらいの長さで、ライトグリーンの目は緑の髪と程よく調和していた。
「あっはははは、ごめんごめん」
少女は香織のあまりの驚き様が面白かったのか腹を抱えて笑っている。
「驚かせてすまない。僕はフウキ、よろしく」
フウキと名乗った少女は香織に警戒されないようにするためか、ニッコリと笑っている。
「……ボク?女の子なのに?」
香織はベットにあった枕を抱き、そこから少しだけ顔を覗かせながらフウキに聞く。
「ははっ、女の子かぁ…こう見えて僕は一応百を優に越えているんだけどなぁ」
「ひゃッ、百?!」
香織は目を大きく見開きながら叫んだ。フウキはそんな彼女を見てまたケラケラ笑っている。
「そんな驚かなくたって…大体ここの連中はみな、百を越えているご長寿ばかりだよ」
フウキは目に涙を浮かべながらそう言う。
「え、えぇぇ?!?!」
香織は彼女の言葉を聞き、また驚く。
「ちなみに一番上はドクロとネネさんかな。確か884歳だったはずだし…」
「はッ…えぇ!!」
香織の驚き様にフウキは笑う。
彼女の表情は面白く見ていて飽きないな、とフウキは思った。
「…ていうか、ネネさんって誰です?」
ふと、香織はフウキの言っていたネネという人物のことが気になり、フウキに尋ねる。
「ネネさんは僕らにとって、姉みたいな感じの人かな。凄く綺麗で優しいんだ。髪と目が桜色で彼女の目を見るとみんな、なぜか隠し事とか出来ないんだ…なんか姉っていうより神様みたいな人だよな」
「神、様」
フウキが天井を見ながら話している横では、香織が何か考えるように腕を組んでいた。
「?どうかしたのかい?」
そんな彼女の様子を見て不思議に思ったフウキは首を傾げながら尋ねる。
香織はまだ考え事をしているようで、フウキの声が届いていないようだった。
「おーい、香織ちゃん」
「えっ、あ、はい?なんでしょうか?」
香織はフウキの声ではっと我に返った。
「いや、なんでもないよ」
フウキはそんな香織を見て、なぜかフッと優しく微笑んだ。
「…そういえばフウキさんはどうしてここに?」
ふと、香織はそんなことが気になった。フウキはそれを聞いて不敵な笑みを浮かべて、
「いや、ただ珍しい客が来たってランがいうから…ちょっと仕事の前に、ね」
と言った。
「仕事?何の?」
香織は首を傾げながらフウキを見つめる。
フウキはちょっと困ったような顔をしてから、
「秘密」
と、悪戯っぽくウィンクして見せた。