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殺人病棟  作者: 死蘭
殺人病棟ー始まりの悲劇ー
14/30

(1)

「いやァァァァァァァァァァ!」

病院内に悲鳴のような泣き声のような叫び声が響き渡った。

404号室とかかれた病室からそれは聞こえた。

「香織!嘘よ!嘘っていってよ!!」

女性の悲鳴じみた泣き声が病室内で反響する。


何事かと思って来た人がもしいたのなら、彼らはここの光景がどう映っただろうか。

割られた窓ガラス、赤黒く染まって破れたカーテン、赤黒い何かが付着した天井や壁や床、そして鉄臭いような生臭いような匂い…

白かったあの病室は今や赤い箱と化し、幼かったここの患者は見るに耐えない姿になっていた。

少女の体は病室内よりも赤黒く、目玉はナイフが突き刺さり、手首は両方とも切り落とされ、右手には手首を切り落としたであろう錆び付いた鋸が握られていた。

喉は何かでさっくりと裂かれ、体中はナイフで何度も刺された跡が残っていた。

少女の横たわっているベットには彼女からでた液体によって赤黒く染め上げられ、床には赤い池が出来上がっていた。

ベットの脇にはその上で突っ伏している母親らしき女性と、彼女をここから連れ出そうとしている警察官、そして“中富”とかかれたカードを下げた30代の看護師がその様子を悲しげに眺めていた。

「香織…私をおいていかないでよ…」

警察官に連れて行かれる母親が少女に向かって言った言葉は、静かにその空間に溶け込んでいった。






それから約一週間後、ノイローゼになった母親は少女の死を嘆いて首を吊って自殺した。

葬儀には“三宅 春”と“三宅 香織”の二人の名前と写真が飾られていた。

警察はこの事件を必死になって捜査したが、犯人に繋がる有益な情報も証拠もなかったためか、他に理由があるのかは定かではないが、事件は迷宮入りとなってしまった。

例のあの病室はどうなったかというとその後はきちんと清掃され、今は新しい患者が入っているのだという。

彼女の事件は悲劇と共にここで幕を下ろした…





……下ろしたはずだったのだ。

一ヶ月後、404号室の悲劇が幕をあけるまでは。





一ヶ月後のある朝、生臭い血の匂いが漂い、言葉にならない悲鳴が聞こえた。

例の404号室からであった。

亡くなったのは20歳の女性、彼女も香織と同様、鋸とナイフで殺されていた…



それからというもの、そこに入院した者はちょうど一ヶ月経つと香織と同じような死体となって、翌朝発見された。

警察官や探偵、科学者、霊能力者、医者、看護師、記者…さまざまな人がその病室の謎に挑んだが、みな、無残な死体となって謎に敗れた。

いつしかその病室は“呪われた病室”と呼ばれ、誰も使いたがらなくなっていった。






謎が紐解かれたのは、そんな時だった。

ちょうどその時、珍しくその病室を使ってもかまわないという人物がそこを使用していたときのことである。

真夜中の十二時、とある看護師、中富がいつものように病院の見回りをしていたときのこと………





何かが潰れるような音がはっきりと中富の耳に届いた。

音源は例の404号室からだった。

中富はなぜか胸騒ぎがして、急いで404号室の取っ手をつかみ、ドアを横にスライドさせ、中に慌ただしく入った。

まず最初に気づいたことは生臭い血の匂いが漂っていたことだった。

手術の助手をしたことがある中富が口を手で覆うほどなのだからかなりの血の量がでているのだろう。

中富は部屋の明かりをつけようと近くにあったスイッチを押すが、電気はつかなかった。彼女は仕方なく懐中電灯を使って患者の安否確認をする。

懐中電灯を手に強く握りしめ、それからあたりを照らす。


窓や天井には何もなかった。


床やベットの上を照らす。中富は息をのんだ。

そこには、目をえぐり取られ口に包丁を押し込まれ手の平を杭のような物で深く打たれ、さらには体のあちこちが切断されていた患者が横たわっていた。

「な、中沢さん!」

中富は気絶しかけた。あまりの残酷さに吐き気を催した。

ふと、視界の端で何かが動いた。

すかさず中富は懐中電灯をそこへ向けた。

「うわッ、眩しッ!」

子供のような声が静かな病室に異様に響いた。

「あ、ごめんなさい」

中富は反射的に懐中電灯を下げながら、謝った。

声の主はうなり声をあげて目をこすっているようだった。

「う~ん……て、あれ?中富さん?」

声の主が確認するように声をかける。

中富は聞き覚えのある声に心臓が早く脈をうつ。中富はもう一度、今度は懐中電灯を下に向けながら自分が相手を見れる位置まで光をあてる。

そして中富はあまりの出来事に声が出なかった。

「……か」

中富は目を大きく見開きながら、目の前の人物を見つめる。

「香織、ちゃん?」

「うん!」

目の前では「久しぶりだね!」といっていつもの笑顔をこちらに向ける三宅みやけ 香織かおりがそこにいた。


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