プロローグ
静かな木漏れ日の差す庭先で俺はふと昔のことを思いだしていた。
・・ ・・
八歳で不慮の魔力暴走の事故にあってこの世界の裏側に飛ばされて以来本当に様々なことがあった。
この世界の歴史の中で決して終わることのなかった戦争、またその戦争を止めるために共に戦った
戦友達。それらを思い出すたびに、もはやとうの昔に乾ききったはずの眼帯のしたから涙があふれてくるような気がしてくる。こんなところを見られたらあいつらに笑われそうだ、、、もっともそんな戦友たちはもはや一人として残っていない、残っていないといえば俺のこの世界に対するやるべきことも残っていない。ただ一つあるとすれば最後の弟子たちの将来への杞憂だけだろう。
もしも、運命のレールの上を走るのが人の人生だというならば、俺の転移も一つの事実であり、そして、この世界の戦争の終結も俺に課せられた運命の試練だったのだと思う。
そして、このことに思いふけった後、いつもの通りに弟子たちの来る時間までの昼寝が俺の人生の最後であるということも、
そう、俺こと「東条 春樹」この世界での英雄としての人生は終わるのだ。
「あぁ、もう一度だけでもいいから故郷のあの風景が見たかった。」
齢80にしてこんな弱音をはくのも笑いの肴なのだが、それでも自然と今まで言えなかった本当の自分の願いは思いのほかすっと出てきた。
さて、そろそろ自分でも迎えが来たのがわかる、逝くとしよう。
俺は自分の瞼がもはや自分自身の意思では動かないのがわかると、最後に肺の息を吸い込むと静かに死んだ。
、、、、、、はずだった。