第二十話 守山で(上)
連年の戦で国が疲弊した。
天文二十三年(1554)五月、織田上総介信長は新守護・斯波義銀を擁して清洲城へ入った。
先年より度重なる戦にケリをつけ、叔父の織田信光と共同して尾張国の新政権を運営しようというのだ。
だが、その叔父・信光はあっさりと死んでしまう。同年十一月末のことである。
『信長公記』では、
『信長にとっては幸いであった――』
みたいに書かれているが、実際はどうだか分からない。
確かに土地の割譲を約束して、尾張南半国を信長と信光で分け合う話だったが、元々織田家は分裂しているのだ。
東西に細長く伸びたお家は西の信長家と東の信行家に分かれている。この上、那古野の辺りを信光にやったところで、大した違いがあるものではない。
むしろ、信光は信長の数少ない支持者だったのだ。有力な親族の擁護が消えた時点で、信長は虚脱感に見舞われていたろう(この世界線の場合、その心の隙間を愛妾・生駒吉乃との出逢いで埋め合わせるのだが、この場では余談であった)。
信長、数えの二十一歳。すぐに年があらたまるので、現段階では二十二歳になる。
弘治元年(1555)――史実的には秀孝の没年である。
秀孝、数えの十五歳。
別に、この世界線だと死にはしないが、死なないなら死なないでたいへんなのがこの男の娘の持って生まれた星の運であった。
さりとて戦争はやまない。
現段階の秀孝の心配なところは、お百姓さんが労役に倒れてしまわないか、という民力への不安であった。
◇
「上意である。この清洲の南方に蟠踞する石橋義忠を攻め、必ずやこれを逐うように!」
新守護・斯波義銀は清洲南南西十二キロほどのところにある蟹江城攻めの号令をくだした。
石橋氏は斯波氏の分家にあたりながら、先年の混乱を見て見ぬふりをしていたのはけしからぬふるまいである、と義銀は憤怒したのだ。
義銀、逸話から判断しても、割と言いたいことは言うタチである。気性が激しかった。
『気に入らぬものは気に入らぬ!』
そう言いたげな命令である。
周囲の反応はまちまちであった。
(このクソ忙しい時期になに言ってんだ、こいつ)
と言いたげに白目になる武将がいれば、
(好機ではあるのだ――)
と、従う武将もいる。信長が後者であった。
実際には事前のやり取りは済ませてある。
さすがに義銀もいちばんの庇護者の信長を無視するわけにはいかない。相談くらいはした。
たまに忌々しそうなまなざしで信長を見ることはあったが、尾張国の首相格(家臣筆頭)に駆け上がった信長にとってはささいなことだ。
「されば、僭越ながらこの上総介信長。お屋形さまの上意に適い、必ずや石橋義忠を放逐せしめることをここにお約束いたしましょう――」
いちばんの実力者である信長がそう言えば、周囲もしぶしぶ認めるしかない。
六月末のことである。蟹江城攻めは決定事項となっていた。
「現状の境界だと奥行きがない」
合議のあと、蟹江城攻めの話を聴いて秀孝が信長の館城へ行き、なんで? と問うた答えがそれだった(秀孝は城持ちではないので守護臨席の合議の場には出られなかった)。
「清洲は広いよ?」
「違う。石橋義忠が長島の一向宗や水軍の服部党と結び、今川家の支援を受ければ、清洲を衝かれるおそれがある。実際、そういう動きがあるしな。叩くか封じ込めるか、どちらにせよ押し出さねばことはなせぬだろう」
「あ~……」
梅雨は明けている。小氷河期の影響か、気候こそ安定しないが、暑さを感じる季節であった。
「でも、なにもこの時期にお百姓さんに労役をかけなくても……――」
秀孝の影響で戦国期の――少なくとも尾張国南部の――農業は様変わりしつつある。
冷害を避け、なるべく早く農作業を始めるように、という訓令が行き届き、秀孝の声の届く範囲内では例年並みの収穫は採れるようになっていた。
もちろん、究極に寒い年はダメだが、先年の蓄え――惣村に設置させた義倉、もしくは城の倉の貯蓄――を放出すれば、お粥くらいは食べて、元気が出せることは多かった。
ほか、苗床を用いた苗の選別と育苗期の保温体制――ワラなどで包み、寒い時期に育苗を始めても問題ないようにする――を整え、惣村の指導に回っていた。前世の課外活動の記憶のたまものである。
特に信長の領地の篠木三郷が格好の実験場となっており、元々が裕福なこの土地はよりいっそうの繁栄を享受している。
もちろん、一つの事業が栄えると波及効果が広がるので、酒造業その他も隆盛しつつあった。
そのぶん、飛び地の領土が隣接する林家(信長の筆頭家老・林秀貞の家)の人間からは銭が隣村の定期市に吸い取られる、というので、(元々そういう傾向はあったが、現在はかなり)うとましく思われていたが……。
「織田家は裕福になっている。キサマの働きも充分に認めている」
だがダメ、決定事項だ、先手を打って一挙に制圧すべきなのに、動きが遅いと困る、信長はそう言っていた。
秀孝は抗議の声を上げる。軍事的な教練は今生で受けているので、ある種の無理を言っている、というのは秀孝も分かっているが……。
「せめて七月の末に――」
「キサマは民政家だな」
信長は秀孝の資質を評した。秀孝は断られたと思い、しゅんと肩を下げた。だが、諦め切れないのだろう。可愛い唇を引き結び、でも、と言い募ろうとした。
信長が横を向き、げんなりしたが、しかし、苦笑もした。こうと言う。
「早とちりするな。民百姓を大事に想うは殊勝である。手はある」
「それって?」
「常と違い、今回は労役というより雇用である。労働の代価は払う。民百姓にはそれで我慢してもらう」
武具兵糧の荷運びや現場の工事に駆り出す代わりに銭を出すので、最低限の困窮対策にはなるだろう……信長はそう言っていた。
秀孝がパッと明るい顔をした。そわそわとし始める。嬉しがっているのだ。
「抱きしめていい?」
「いらん」
秀孝は前世からスキンシップの多い家に生まれているので、兄弟間でも嬉しいことがあるとすぐ抱きつきたがったが、いまそれどころじゃないから、と信長に断られた。
秀孝は機嫌がよかった。じゃあ、と立ち上がり、言う。
「ボクんとこも準備するね?」
「なんの?」
「えっ、戦の……できるなら早く済ませたほうがいいし……」
「その儀には及ばん」
秀孝は戸惑う。なんかダメなことしちゃっただろうか、と思っている。座り直し、青ざめた顔をした。
信長は、こいつまたなんか、かん違いし始めたな、と内心で判断し、ため息をついた。ふだんからきつく接しすぎたのかも知れん、とちょっと反省している。この信長は秀孝の影響か、通説より人情が分かっていた。信長は説明してやった。
「キサマには別の働き口がある――安房守秀俊は知っているな?」
「兄上だよね、お母さんが違うけど……」
「安房守でよい。庶兄だが、それゆえに家臣扱いをせよ。そのほうが、あいつも喜ぶ」
「ボクには分かんないんだけど、そういう気持ち……兄弟のほうが嬉しいよ?」
「キサマはそうだろう。あいつはそうではない。安房守と呼んでやれ。あいつの立場を認めてやれ」
言われて、初めて秀孝は信長の言うことが分かった気がした。
「分かりました」
「よい。しばし待て。書きつけをやる」
信長は言って、右筆(書記)も呼ばず、自分でさらさらと文を書いた。息をふきかけ、乾かし、書式にのっとって包み、秀孝に手渡した。
「なんて書いてあるの?」
「キサマを一時期、貸し出すと。守山の管理をよろしく、とも」
「もりやま?」
「聴いておらなんだか。叔父・信光の後釜は、安房守に任せてある」
史実的には末の叔父の信次が後釜であったが、この世界線の信次は気弱であり、かつ、秀孝の影響で勢力を増す信長と信行の緩衝材になるのはごめんだと、従来の小さな城の主でいいです、と断ってきたのだ。
従って、現在の守山城主は織田秀俊(信時とも)である。
「二番目の兄上。もりやまじょうしゅ」
「家臣でよいと申したであろう」
「ん~ん。かくにん、かくにん!」
秀孝は現在の守山情勢を頭に入れ、ニッコリと笑った。
ふいに信長が笑う。なにか言いたげであった。
秀孝がコテンと首を傾げた。
信長が手を伸ばし、やおら秀孝は肩を掴まれ、ポンポンされる。思いのほか、やさしげに言われた。
「キサマの名も知られ始めている。武家の誉れぞ」
武家の誉れとかはいまだによく分からない。
でも、今生の兄が嬉しがっているのは分かる。
秀孝は満面の笑みを浮かべ、頷き、言うのだ。
「うん……がんばる~!」
と。
◇
査察旅行というとアレだが、秀孝一行を現代の会社員が見るとそう評するだろう。
「えっと、大豆はあんまり糞便の肥料はよくなくて、緑肥のほうがいいかも。来年からはそうしてください。あ、レンゲ草つくる? 種保管してるから……それとも、山のほうでつくって、それを平地のひとが買うのでもいいと思うよ」
守山は森山とも書き、北東部に行くにつれて森林資源の多くなる台地だが、南部のほうは水資源が豊富である。
「稲作はどうでしょうか」
「今年はもう遅いから無理だけど、ボクが別のところでやってる、苗床からあったかくして育てるのなら、たいていの冷害は乗り切れると思う」
「ははあ。なるほど」
「うちはタカキビなんですが――」
「我が領内はヒエで――」
「ちょ、ちょっと待って。ほかの村の畑を見て、そこの作物のお話をしよっ!?」
守山南部の稲作の状況を見回っているのは秀孝主従だけではない。織田秀俊一行と、信長から派遣された普請奉行(工兵隊長)の河野藤三氏吉率いる普請方もぞろぞろついて来ている。
かれら一人、一人が領主格のため、秀孝の農政指導に興味があるのだ。
「種がある、とおっしゃられますが、お寺の管理しているものとなにか違いが?」
と、河野氏吉。信長の奉行衆としてそれなりに名前の残る偉人である。月代の秀でた額と抜け目のないまなざしが特徴的な漢であった。
守山城は前線のため、秀孝は足軽衆を引き連れて出仕していた。近隣の惣村の空き地を借り、陣屋を建てることは容易に想定されるため、あらかじめ、信長が気を利かせて河野隊を貸し与えたのだ。
で、現場についてすぐ、城主の織田秀俊が南部の稲作の状況の良否を知りたがったため、そんならわしらも見たい、と河野隊の面々もちょっとだけ見学に来ていたのだ。
「種は篠木三郷のほうのです。違いは……どの作物もそうなんですけど、元気のいい品種を選り分けて、それを毎年、相手の台所事情に合わせて貸したり、売るようにしています」
「なるほど。お寺さんに任せないで、武家のほうですると。待てよ? それだとかえって武家がめんどくさがって、品質が悪くなりそうなもんですが――」
「あっ、そこは平気です。お百姓さんのなかで詳しいひとを雇ってますから! お金さえ出せば、みんなやる気になってくれます」
「ははあ。なるほど――まあ、うちでやるとなると、金銭の工面が立つまで、おいおいですかねえ。いや、勉強になりました」
「お疲れでしょうか、喜六殿?」
訊いたのは、織田秀俊である。顔立ちが凛々しいのは織田家のならいとしても、表情が動かない。むっつりして初見の印象は悪かったが、話してみると意外と慈君である。
「いいえ。だいじょうぶですよっ!」
「さようですか。では普請方のみなさまもよろしいでしょうか?」
「あ~、次の村に回るんですな。ごもっとも! こっちもお役目に取り掛かりましょう……おおい、おまえら、仕事だ、仕事ォッ!」
へい、と普請方の面々はきびきびと動いた。坂を上って行く。秀孝勢の陣屋をおくのは守山城の北の辺りと決められているからだ。
「さても聴きしに勝る博学ぶり。この安房守秀俊、喜六殿のご指導には感服つかまつりました」
と、秀俊が辞と腰を低くして、秀孝の農政知識を褒めた。
秀孝は戸惑う。面食らっていた。
「博学って……初めて言われた」
秀俊がたまらず笑い声を上げる。さほど表情の変わらない漢でも、秀孝の言いようはなごみを湧かせたのだ。
「孫平次、やはり喜六殿をお招きしてよかったな」
「まことに――」
秀俊が可愛がっている小姓の坂井孫平次に同意を求め、孫平次は素直に頷いた。主従そろって口数は少ないようだが、信頼関係のようなものは見える。
「……ところで、守山の方々はこれで全員なのでしょうか?」
秀孝の側近の藤浪忠左衛門秀鑑が問うた。
秀俊が言いにくそうに述べた。
「おおむね――」
「……おおむね、と申されますと?」
「ああ、実は――」
坂道を歩きながら、秀俊が説明した。
「守山より東の国衆の動きが怪しく、家老の一人は出払っております」
「……どなたでしょうか?」
「角田新五と申す漢で、先任(信光)以来の家老です」
「ひょっとして、仲悪いの、安房守殿と?」
秀孝が突然言った。
秀俊が戸惑い、次いで、苦笑して頷いた。坂道を上がるたびに声が上下している。
「実は、そうなのです。聴けぬ小言が、多いのです」
「聴けない小言って?」
「孫平次を可愛がるのは無用だとか、大殿(信長)に進言して、鳴海に居座ったままの今川方を討つべきだとか。威勢がよいのは、分かるのですが――」
実行不可能なことばかり言う、そんな感じの愚痴を、秀俊は言った。次いで、後悔したように口をつぐむ。
秀孝が足早に歩き、秀俊の横顔をうかがうと、秀俊はこう言った。
「悪口になってしまいました」
別の惣村にたどり着く。村人たちが一行を視認し、秀俊の顔を見るや相好を崩して頭を下げてきた。
秀俊が振り返り、秀孝に問うた。
「さあ喜六殿。この村の状況をご確認ください。できうれば、また、よき農政をご教示願えますように――」
このひとは人気者なんだな、と秀孝は思った。嬉しくなる。
秀孝はやる気を出して、言った。
「じゃあ、あそこのタカキビのようすから!」
今日は惣村回りで日が傾いた。
陣屋はまだ簡易なものなので、今日ばかりは、足軽衆は近隣の農家に分散して泊まる予定だ。すでに守山の人々の案内を受けて、家々へ散っている。
さすがに、秀孝ら立場のあるひとは守山城で接待を受けた。
「角田新五が帰宅以来、屋敷に引きこもって出仕せぬだと?」
宴会の席で、秀俊がそう言った。
報告を取り次いできた坂井孫平次が狼狽している。青い顔で言うのだ。
「角田殿は私が奸臣だと言い募り、私の罷免がなされなければ出仕しない、村々の立て直しの話もなしだと――」
「なんという――」
秀俊が呻き、場がざわめいた。
上座の秀俊に並び、秀孝が座っている。さすがに、食膳に手を出せる雰囲気ではないし、気持ちでもなかった。
秀孝が『え、なに。どうしたらいい?』と戸惑いの視線を藤浪秀鑑に向け、政争のにおいを感じ取った秀鑑は席から一歩、前へ出て、上座に向かって質問した。
「……我らは守山の事情にうとく、よろしければご説明あれば、我が殿のお心も晴れますかと――」
秀俊が我に返って、何度か頷き、言った。
「殊勝である。喜六殿はよい家臣をお持ちだ――さりながら、分からぬ、というのが正直なところだ」
「……分からぬ、とはいかなる?」
「まず、坂井孫平次は奸臣ではない。心根のよく、気配りのできる若者です。良臣の素養があると言われればもっともですが、上に媚びへつらうところはなく、権力を妄信するでもない。奸臣でなければ権臣でもない、というのが私の見立てです。これは、みなも同意してくれると思います」
場の守山衆から同意の呻きがもれた。が、誰かが言った。
「しかし家老の一人であられる角田殿の合意なくば話がまとまらぬのも事実。ここは要求に従い、坂井孫平次の罷免でもって和を求めては?」
「なにを申すか。悪くもないものを罰しては、神仏のお咎めが恐い。そんなものは善政ではない!」
「しかし!」
と、喧々諤々の議論が沸き起こった。
秀俊が額を抑え、一喝する。
「どうか鎮まりたまえ!」
そこで、興奮した誰かが言い募った。
「殿。これは謀反では!?」
「おおっ、角田新五め、さては今川方と通謀しておるに相違ない!」
と、別の誰かも息巻いた。
「謀反して、なぜ引きこもるのだ? 角田新五は私に要求を示しておるのだぞ?」
と、織田秀俊ほか数人は角田新五の良心を信じた。
(……話にならぬ)
と、みなが大同小異のことを思った時だ。
場を見極めていた河野氏吉が手を上げ、言った。
「このままじゃ話がまとまりませんなぁ。こういう時は議論しててもしょうがありません。偉い方を使者に立て、相手の意向を詰問されてはどうです?」
と、硬軟織り交ぜた対応を提示した。
「あ、じゃあボクが――」
と、秀孝がホイホイ名乗りを上げたが、それは秀俊が許可しない。
「守山のことですから、喜六殿が行かれてもまとまらぬかと。ここは――」
と、秀俊がなにかに気づいた顔をし、その場で立った。
「私が行くのが手っ取り早い――」
「お待ちあれ!」
「話を聴くに、角田新五は狂しておりまする!」
「さよう。みなの申す通り、殿が行かれては危のうござる!」
守山の面々が慌て、秀俊を引き留めた。
が、かえって秀俊は乗り気になったようだ。あまのじゃく、というと、そうではない。頼りにされているのが嬉しいのだ。
「みなの気持ちはありがたい。が、この場でいちばんの上位者はこの私だ。なに、角田新五も守山衆の一人。なにか行き違いがあって、このような要求をしたのだろう」
「さりながら――」
別の家老が口よどみ、せめて、という調子で引き下がった。
「ならばお供の数を厳重にし、夜明けを待って、角田殿のお屋敷に行く、ということでいかがでありましょうや?」
秀俊はため息をついた。それしかない、という態度である。
「ならば、今宵は呑もう。あまり深酒はできぬが、一日、歩き通しの方も多い。喜六殿の歓迎会なのだから――」
そこで、秀孝のお腹がきゅうと鳴った。赤面して固まる秀孝に、秀俊が愉快そうな笑い声を上げた。
「そういうことだ。今日は呑もう!」
その場は軽めの宴会となった。予定では深夜までだったが、角田新五のこともあり、食事が終わった段階でお開きになった。
翌日、秀孝は秀俊から、坂井孫平次をお供につけられた。
「昨晩の通り、私は今日、角田新五の屋敷に向かいます。孫平次が悪くないのは知っていますが、私のそばに孫平次がいると角田新五も落ち着かないでしょう。私はほかの家老たちと連れ立って向かうので、村の案内は孫平次にお頼りください」
「よろしくお願いいたします――」
坂井孫平次が悄然と頭を下げ、秀孝は微苦笑した。なかなか気のやさしい主従だったし、なにより、元気のないひとは励ましてあげたかった。
「だいじょうぶ。村を回って、ボクが適した作物を考えますから!」
秀孝が言うと、秀俊が微笑み、軽く頭を下げて、言った。
「頼みます」




