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荒井鈿女③

 鈿女が学校に着くと校内は今朝のニュースの話で持ち切りだった。

 廊下や教室のいたる所で生徒達が話している姿が目についた。

 教室に入ると友達数人が鈿女に駆け寄った。


「鈿女、ニュース見た?」


「うん、まあ」


「尾花さんが言ってた事、本当になったけど。これって尾花さんが…」


 鈿女は友達が言わんとする事を理解していた。


「安部さんがそんな事をする訳ないし、きっと尾花さんが嘘をついて捕まっちゃったんじゃ」


「環妃さんの言ってた事は本当になったけど、嘘をついてまで犯罪者にするかな」


「あの、安部さんが犯罪なんてあり得ないよ」


 鈿女は釈然としない。安部という男を知らない事もあり、彼を擁護する友達の言葉が引っかかってしまっていた。

 それに羽鳥の時もそうであったが、環妃はその相手にそれ相応の理由があるような言い方をしていた。今回の安部も捕まるべきして捕まったような気がしていた。

 友達とそんな会話をしていると朝礼を告げるベルが鳴った。鈿女は環妃の席を見るが環妃は登校していなかった。


「智兄はどうやって環妃さんと会うつもりなんだろう…」


 数分して担任教師が教室に入って来た。朝礼前の出席確認が始まり、それぞれに生徒達は名前を呼ばれると「はい」と返事をする。最初の2人が呼ばれ、次は環妃の順番だったが教師は環妃自体の名前は呼ばず次の生徒の名前を呼んだ。

 鈿女は環妃に関しては学校側が状況を把握しているのだと悟った。


 1時限後の休み時間もやはり教室は環妃の話で騒ついていた。

 鈿女はそんな会話を横目に教室を出ると職員室に向かった。

 職員室に入ろうとすると、中から教師たちの会話が漏れ聞こえた。


「いや、あの尾花というのには困りましたな。このままでは当校の品位が疑われるのではないかと」


「しかし彼女は今回は被害者ですし…」


「でも大学生と付き合っていたというか、そういった事をしていたのはどうかと」


「彼女の警察での聴取が終わったら、本人から話を聞き、処分等についてはそれから考えましょう」


 それを聞いた鈿女は智紀の行き先が警察だと読んで、保健室に駆け込んだ。

 保険医に体調不良を訴え、早退届けを書かせた。それは半ば脅迫にも似た雰囲気であった。

 鈿女は、早退届けを教室に持って行くと早々に学校を後にし、警察署へ向かった。


 智紀は鈿女に、学校へ行き環妃の様子を観察し、もし何時もと様子が違えば連絡をして欲しいとも言っていた。

 智紀は色々準備をしてから動くから、それまでは無理をせずに行動しろと言われた。


「智兄の嘘つきーーーーーっ!」


 鈿女は大声で叫んでいた。鈿女は自分が騙された事が許せなかった。智紀が鈿女を巻き込まないようにする為とは、この後に目にする物を見るまでは思えなかった。


 警察署に着いた鈿女は、報道陣の多さに驚きつつ署内に入った。署内は普段の警察よりは忙しいのであろうと警察署に縁のない鈿女でも思えた。


 鈿女は智紀の姿を探したが見当たらない。まだこちらに来ていないのかもしれない。鈿女は近くにいた警察官に声を掛けた。


「あの、こちらに尾花環妃さんが来ていませんか?」


 声を掛けられた警察官は、鈿女の姿を見て、


「あの子の同級生かい?彼女なら事情聴取が終わって親戚の方と帰られたよ」


 鈿女はよくよく考えると環妃の家庭環境などを聞いた事も無く、まったく分からなかった。

 智紀がこっちへ来てるという憶測だったのかと肩を落とした。

 聞いても無駄かも知れないと思いつつも警察官に行き先を聞いてみた。


「どこへ行ったかは分からないけれど、来られた親族の方は宮司らしいから、一旦はその人の家に行かれてるかもしれないね」


「本当ですか!ありがとうございます」


 鈿女は元気よく挨拶をすると警察署を出て、自転車に跨がると行き先を自宅の神社へ向けた。

 智紀がどれくらい前に環妃に会い、神社へ向かったのかまでは分からないが、朝の電話から直ぐに警察に向かったとして、1時間前後ぐらいのはずであった。


 環妃に関する真実を智紀だけに解決されるのは、何処か癪に障る部分があり、自分も彼女の真意、本当の姿を知りたいと鈿女は思っていた。

 気が付くと自転車を漕ぐスピードが早くなっていた。



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