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九尾②

 瑞獣。

 中国に古くから伝わる、吉兆をもたらすと言われる霊獣である。鳳凰や麒麟が有名であるが、九尾もまた瑞獣として伝えられていた。

 しかし、九尾は物の怪として人に憑き凶兆を呼ぶと言われている事が、広く伝承されてしまっていた。


「そうね、鈿女さんの心が色々な事を見せてくれたわ。私の存在が吉兆か凶兆かを決めるのは貴方達人間。私はいつも私の許せない物に憑いたりしてるだけよ」


「じゃあ、環妃さんは私達の為に…」


「鈿女さん達の為と思うかは貴方達が決めれば良いわ。私はあの学校の生徒達の苦しみが許せなかっただけ、情けない男達が嫌いなだけよ」


「環妃さん…」


 鈿女は言葉を失っていた。上級生にせよ、同級生にせよ、悩み苦しんでいる生徒がいたという事がショックだった。


「これで少しはあの学校は平和になるわ。教師が生徒とあるまじき関係にあった事、近隣の大学生が生徒と交際していた事実が表面化した事で学校側も危機感を抱いたと思うわ」


「あの学校の為だけに本当に来たというのか」


 智紀はどこか釈然としなかった。

 日本のそれもひとつの学校の事だけで九尾が姿を現すとは思えなかった。


「確かに私にしては、小さな世界に現れたと思うわ。けれど、鈿女さんの力はそれだけの事をさせたくなる何かを持っているのよ」


「鈿女がねえ」


 清音は鈿女の顔を見ながら感心していた。


「まあ、鳳凰やら麒麟やらは大事じゃなきゃ動きはしないし、私も最近は暇をしていたからね」


 そういうと環妃は笑った。


「鈿女さん、私はこれで元の世界に帰るわ。貴女はここにいる2人のように強い力を持てるわ。この世界には色々な物の怪が存在する。良くも悪くもね。この2人の力になれるように色々な事に励みなさいよ」


「環妃さんの元の世界って…」


「名前の由来だけじゃなくて、色々な事を学びなさい」


 環妃はそう言うと本殿の外へ歩き出した。


「今回は貴方達の代わりに人の皮を被った情けない物の怪は私が退治したのだから、次からは頼むわよ」


「本当に帰るのか?」


 智紀は問いかける。


「ええ、久々に人間の姿で居るのも疲れたしね。そろそろ帰るわよ。じゃあね鈿女さん」


 本殿を出ると、環妃の後ろ姿には大きな九つの尻尾が見えたかと思うと、その姿は消えた。


「あれが環妃さんの本当の姿なの?」


「そうよ鈿女、彼女は九尾という物の怪であり瑞獣という存在よ」


「智兄やおばあちゃんは、何時もあんな人たちと戦ってるの?」


「何時もじゃないわよ。時々、人に憑いて悪い事をする物の怪がいるの。そういった物の怪を退治をするけれど今回の九尾は私達では手に負えなかったかもしれないわ」


「九尾ってそんなに凄いの…環妃さんて…」


「鈿女、彼女が言っていたでしょう。自分で色々勉強してみなさい。彼女がどんな存在か分かるわよ」


 清音は鈿女を諭すように話した。

 鈿女は自分が初めて目にした物の怪に動揺していたし、どこか興奮していた。


「うん、分かった。自分で色々調べてみるよ」


「学校の勉強は疎かにするなよ」


 智紀は興奮して目を輝かす姪っ子が、勉学そっちのけでのめり込みそうな気がしたので、釘を刺した。


「じゃあ、今日私に嘘をついた罰として智兄に教わりに行くからね」


「そうね、それがいいかも知れないわね」


 鈿女の返しに清音が笑いながら智紀を困らせようと同調した。


「いや、それは…」


 智紀は清音に同調され、返す言葉を失くして困惑した。


「あら、何やら楽しそうですね」


 本殿の入り口に都が立っていた。

 都は3人に声を掛ける。


「夕飯の支度が出来てますよ。智紀さんも今日は食べていかれるわよね」


 清音と鈿女が智紀を見る。


「はい…」


 智紀はバツが悪そうに答える。

 鈿女は笑顔になった。


「やったー、智兄とご飯なんて何年振りだろー」


 鈿女は智紀の手を引くように本殿を出た。




「あれ?私ってやっぱりブラコンなのかな?」

ここまでお付き合い頂き有り難うございました。

今回は九尾を題材にしました。

妖艶章と名付けたのに、あんまり色気の無い話になってしまいました。

また、拙い文章にお付き合いいただき本当にありがとうございました。

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