e.01 HORの世界
はい、HOR始動です。
「ちなみに、リリ以外は普通のプレイヤーだから、プレイヤーはみんな敵だよ」
「なっ…ランナー私だけ!?」
「そうだよ」
つまり私は、およそ300万を誇るプレイヤーと敵対しなければならないというのだ、この姉は。
…無理難題を押し付けないでほしい。
「大丈夫よ。そのための特典も用意してあるから」
PCを操作してそこに出てきたのは、なんかよくわからないものだ。
…瓶?水のような液体が入っている。
「これは、エンプレスの涙っていうアイテムよ。制限を解放するアイテムね」
「制限って何の?」
「色々よ。レベル上限、ステータス上限、所持重量上限、スキル上限とかね。飲むと選択肢が出て、その中から一つ制限を解放することができるの」
「チートか…それともただのレアアイテムなの?」
「これは精霊の女帝、エンプレスしかドロップしないのよ。しかも、そのエンプレスは一度討伐される毎に強くなる。AIも他よりかなり高性能だから、倒すのは至難の業ね」
「チートだ…」
そんなアイテムを私に送るというのか…まあいきなり放りだされても困るから、手助けしてくれるアイテムは嬉しい。
「あと、これね」
そして、次に出てきたのは…樹の棒のようなものと腕輪か指輪だ。
腕輪と指輪はおそらくアクセサリーだろう。ステータスに補正がかかったりしそうだ。
しかし、樹の棒は…?
「これは世界樹の枝って言って、この状態から武器に変えられるの。貴方が好きな武器にしていいわ。腕輪と指輪は、それぞれスキルとステータスの補正が入るわ」
「何そのチート…」
しかも作れる武器はかなりの性能らしい。しかも耐久無限。何その(以下略)。
さて、そして一通り済んだところで、いよいよその世界へと入るらしい(私が)。
置くの部屋に、姉貴の寝室であり私の実験室がある。
既に機材は用意されている。私は、ヘッドギアを装着して椅子に座る。
「それじゃ、行ってらっしゃーい」
姉貴の声を最後に、私の意識は沈んでいく。
【HORの世界へようこそ】
『データの読み込みが完了しました』
普通ならここで、キャラクリエイトの時間があるのだけど、私にはそれが無い。
元々あるデータを使って、天使としてRPしなければならないわけで。
…忘れてたんだけど、私ってどこでスポーンするのかな?さすがにいきなり敵地に放りだされたら死ぬよ?
徐々に感覚が戻っていく。
何故か、凄い身体が重い…しかも節々が痛いです。
「うう…」
「お目覚めになられたぞ!」
「よかった!これで私たちは救われます!」
目を開くと、知らない場所…これは当たり前だろう。
具体的には、何故か青空の下だ。私は気絶でもしていたということか…?
「熾天使様、具合は如何ですか?」
「……」
情報が流れてくる。現在座標と地名、そして周囲にいる天使たちのこと。
この状況について、そして基本的な操作方法についても。操作方法は、現世と変わらない。脳からの信号をヘッドギアが感知してこちらに反映するのが基本だ。
「私は大丈夫です。皆さんは無事ですか?」
声までやっぱり変わるな…でも身体は変わらないみたいだ。
「はい。しかし、カリスとフェノが負傷しております」
「そうですか…ひとまず、追手を撒きましょう」
今現在、どうやら既にプレイヤーの人達に追われているという状況だ。
どうやら、私は千年ほど封印されていて、私を狙いに来たプレイヤーを迎撃しているらしい。
しかし今、私は封印から解き放たれた。であれば、ここは無理に戦わずに敵から逃げるべきだろう。まだこちらの世界の身体にも慣れていない。
「カリスとフェノをお願いします。少しでも、追手の脚を緩めますよ」
「はっ!」
隊長だと思われるシャル(情報より)が、他の天使たちに指示を出す。
私も、少し試してみよう。せっかく天使になったんだし、やれることはやっておかないとね。
情報によると、天使は様々なタイプがあるらしい。
まずポーン。こちらは普通の天使だね。あまり強くはないけれど、コストパフォーマンスに優れる。
で、ルーク。ポーンの上位で、コストパフォーマンスが低下したものの全体的な性能は向上。
次にナイト。戦闘を主とし、速い機動力を持っている。天使の中での近接格闘要員だね。
対となるビショップ。守護を主な仕事として、魔法と治療を得意とする。ヒーラー兼マジシャン。
そしてクイーン。ビショップの上位だと思えばいいかな。コスパが良くてしかも効果が高い。
最後にエンプレス。知能に優れた戦略家にして最高位の存在。戦術も戦略もなんでもござれな凄い人。
うん。完全にチェスだね。エンプレスはキングのことだろう。
「私はクイーンか…なら、魔法による攻撃がメインだね」
色々なVRMMOをやってきたけれど、一体どうすればいいのだろうか?
まあ、考えられる方法を試してみればいいか。
「まずは魔力の性質から調べないとね」
魔力に形があるのか、種類があるのか、どれだけの量があるのか…そして何処に存在するのかも調べておこう。これは重要いなりそうだから。
こちらの情報に寄って謎は解けました。不定形で種類は一つであらゆる物質に先天的に備わっている。種類については使う人が自由に変えられるらしい。
「魔力を使って武器を作成することもできそうだね…一度作ったらその状態をキープできて、魔力として自分の力に戻すこともできる。損傷しても魔力で修理ができる、と。便利そうだね」
魔法職で近接するならこっちの方がいいんだろうなぁ。でも作成と修復へ面倒だろう。
やはり基本の攻撃魔法から覚えていくべきか…今はとにかく、追手を撒くだけでいい。
「ファイア!」
最も初級の攻撃魔法、火属性のファイアを使ってみる。
結果、追手が全員が吹き飛びました。うん、これはチートだ。
私たちが来たのは、とある大陸…しかも浮いてる。まあファンタジーだし、何の違和感もないけどさ。
ここは天使たちの本拠点で、他の種族は許可がないと入ることができない場所だ。悪魔や精霊にも、同じような場所があるらしい。
そして私は、どうやら思ってた以上に重要な立場だったらしい。まあ、熾天使って最初に言われてたからね…九個の階級で一番上だから。
「熾天使様がお目覚めになられた!」
「私たちは救われるのですね」
「済まないが、熾天使様はお疲れだ。話は後日とさせていただく」
リーダーのシャルの言葉で、取り敢えずその場は治めた。これからこんな日々が続くのかな…。
とはいえ、休ませてもらえるのはありがたい。お言葉に甘えて、少し休むとしようか。
そして案内されたのは、大きめのお屋敷みたいな建物。目測では400km四方か…でかくね?こんな面積あって全部使ってるのかなぁ…。
あれだな、天使っていうより吸血鬼の夜城みたいな感じだな…ちなみに四階建てだ。
ついていくと、その最上階である四階の少し奥まった場所の部屋についた。
「こちらが熾天使様のお部屋です。用があれば何なりと」
「有難うございます。貴方もお休みください」
「ありがたきお言葉です」
さて、中に入れるのは私だけらしい。部屋に入った瞬間、『オンリーサンクチュアリ』と表示された。しかも、オンリーだって。効果は私と認めた人だけしか入ることができず、外部からの攻撃を全て遮断する。
これもチートだ…しかも、なんとこの中ではMPとEPが凄い速度で回復する。そして耐久度もない!
ついでに、いい機会だからステータスについても紹介しておこう。
主要なステータスは、MPとEP、そしてLPか。MPは魔法を使うのに必要なマナポイント。魔法を使うと減少していく。EPは戦技を使うのに必要なエナジーポイント。一部の魔法やスキルで減少する。LPはつまりHPのことでライフポイント。攻撃が被弾したりすれば減少し、0となると撃破され所持品や装備耐久度や所持金が減少して復活ポイントまで飛ばされる。ちなみに撃破後から復活までは、ゲーム内時間の8時間、現実の10分ほど必要となる。
次にATK、DEF、MAG、RES。ATKは物理攻撃のアタック。一部の魔法にも影響する。DEFは物理防御のディフェンス。スタンなど一部の状態異常にも有効。MAGは魔法攻撃のマジック。魔法の威力に影響し、また魔法の付加効果にも影響。RESは魔法防御のレジスト。魔法ダメージの軽減と付加効果の発生率減少。
取り敢えずこれが重要なステータスだね。他には運を表すラック、身体速度のスピード、知覚と感覚のセンセーション、装備に関わるウェイトもある。
ちなみにここには書かれていないステータスで、MP/EP/LPを時間経過で回復する量を表したMPリヴァイブ、EPリヴァイブ、LPリヴァイブもある。こちらは普通確認できないけど、ゲーム時間の1時間あたりの自動回復量で調べられる。そんなことしてる余裕はないと思うけどね。
「さて…まずは私が出来ることを調べるか」
このオンリーサンクチュアリの中でなら、いくら魔法を使っても問題ない。設定も変えられるみたいだし、音が外に出ないようにする。
「ファイアは普通あんな威力が出るものなのかな?少なくとも、よくあるファイアボール?みたいなのは序盤で使えることで威力が低いはずなんだけど」
と、そこでプレイヤーだけが見ることのできる掲示板のことを思い出す。私が出てもいいか分からないけど、見るだけなら問題ないだろう。
まずは魔法職についての場所からだ。
レベル1でこの強さ…さすがにチートにしすぎたかな?
ファイア自体は簡単な原理で、酸素を着火するだけの物です。威力は魔力を込めれば込めるほど高くなりますが、代わりに色んな意味で危険です。主にFFで。