Hunter of Runner
HORはHOROとも呼ばれます。Onlineが最後にあるかないかの違いです。
「失礼します」
県内某所。私は、とある用事でここに訪れた。
ここに来るのは久しぶりだ。そもそも関係者以外立ち入り禁止のため、入れることはまずないから。
「いらっしゃい、リリちゃん」
「私ももう中学生ですよ。子供扱いしないでください」
「それは悪かったね。はっはっは」
気前のよさそうなおじいさんが、私を出迎えてくれた。
この人は、私の事をいつも子供扱いする。私だって、家事は全部できるし、子供じゃないんだけど。
今に始まったことではないけど。この人には子供のころからお世話になっているし。
「ナナ、君の呼んだお客様が来たよ」
「はーい」
真っ白な廊下、左右にある扉も真っ白。
そしてその廊下にある一室の前で、私の会いに来た人を呼んでくれる。
「いらっしゃい。入っていいわよ」
「姉貴、最近ご飯ちゃんと食べてる?ちょっとやつれてる気がするんだけど」
この人は、私の姉のナナ。私をここに呼んだ人。
高校二年生なんだけど、既に大学レベルまで言ったというある意味では自慢の姉。
ただ、一つの事に夢中になりすぎて周りが見えなくなったり、寝るのも食べるのも放棄で熱中するという研究家タイプの人だ。いつも心配ばかりかけてくれる。
「大丈夫よ。ちゃんと毎日食べてるから」
「心配かけないでよ。私にはいいけど、せめて両親には連絡入れてよね」
「ごめんごめん。後で電話しておくよ」
先述のとおり、この姉は研究家タイプだ。そのため、この施設の職員として正式に雇われている。
高校については、既に全てクリアしているため出席しなくていい。一年の二カ月目でね。
私としてはコンプレックスでもある。曰く私は姉の劣化版である。
昔はそれに悩んでいたこともあったな…冷たくしちゃって、距離を置いたこともあった。
でも仲違いしても、彼女は私を嫌いにならなかった。私も救われたよ。
…って、脱線してたね。
この施設は、VR、つまり仮想空間を使って脳への影響を調べている。
被験者も、特に危険ではないから、むしろ楽しいからと進んで協力してくれている。私も何度か参加しているから気持ちは分かる。
おそらく今回も、私への依頼はそういうタイプだろう。被験者の年代は、できるだけ幅広いほうがいい。そしてわたしはまだ中学生だから、何かと都合がいいらしい。
こっちも給料はもらえるし、殆どゲームみたいなものだから苦にはならない。あと正当な理由で学校をサボれるからね。それほどまでにこの施設は影響力が大きいらしい。
「今回はね、このゲームで実験をお願いしたいの」
そう言って姉貴が取り出したのは、今日が発売日のVRMMO…どこにコネを持っているんだか、この施設の人達は。
「HORじゃないの」
「そう。このHORを、貴方にはやってほしいの。特典付きでね」
Hunter of Runner。通称HORというオンライゲームだ。
その名の通りに、ランナーを狩るゲームだね。ここでいうランナーってのは、天使とか悪魔とか精霊とか色々いる。中には鬼とか竜もいるとか。
「やる分にはいいんだけど…特典ってなに?」
「ふっふっふ、それは…」
「それは?」
「貴方には、天使をやってもらいます!」
…はい?
リリとナナ、お互い仲が良くて何よりですね、うんうん。