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「あそこが階段、だな」
先を見てギルバートが言った。
ここは四階。前回までの探検で隅々まで調べ尽くし、後は五階へと続く階段を上るのみになっているそこ。皆の顔に未知なる場へと向かう緊張が満ちる。
「アレース、出番だ」
ゲルハルトが、階段の下でたたずむアレースに声をかけた。視線を上げればまっすぐ上に進む階段を登り切ったそこに、扉が一枚見える。
「まかしとけって」
アレースは一足飛びに階段を駆け上がり、扉の前にたどり着いた。そして懐から道具を取り出して、いじり始める。
「そう言えば・・・いつだったっけネ。アレースが罠を解除しそこねて、ギルバートが引っかかったのは。あれはとっても見事だったワヨネ?」
いたずらっぽい口調で、アケミが言った。
「そうですか?
あのときはいきなり天井からトリモチが降ってきて・・・。
見事にギルバートさんに当たりましたよね」
話を振られ、リーヴは素直に答えた。その声に、アレースの肩がピクリと大きく震える。
「そうそう、あのあとのアレース。とってもカワいかったノヨ。平謝りに謝る姿なんか、とくにネ」
静かに、は、している。アレースに声が届くかどうかの距離。普通の雑談なら気にも留めないのだろうが。
「はあ・・・そうなんですか?」
微妙に話のかみ合わないリーヴの受け答えも、アケミを助長させているようで。
「そうネ。ほんの駆け出しの頃の話ですモノ。
もうそんなマチガイ、する訳がないわヨネ」
艶然とした微笑を浮かべるアケミ。その言葉にアレースが切れる。
「あの・・・なあ!
後ろでゴチャゴチャ話してんじゃねーよ!
オレだって・・・オレだってなぁーー」
怒りで言葉がうまく出てこない。そんなアレースを、ゲルハルトは軽く一瞥し。
「アケミ。あまりアレースで遊ぶな。
遊びすぎると摩耗が激しいぞ」
ボソリと、言い放つ。
『摩耗が激しい』とはなんのことやら。ともかくアケミは口をつぐみ。アレースは少し釈然としない様子で、また眼前の鍵へと向かう。
しばしの時が流れ――
アレースは顔を上げた。
「鍵は開けた。罠もないと思う」
アレースは少し緊張した面持ちで言った。
「開けるぞ」
ギルバートは言い、横手から握りを回し剣で突くように扉を押し開ける。
ググッ
押し開けた扉は妙に重く。
ドサッ
何かが倒れた音に、ギルバートはごくりと息を飲んだ。




