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朝。
町は乳白色の朝もやに包まれ、すべてが幻影のように揺らいでいた。
「皆、集まったな。今日、これから塔に向うわけだが――。
いつもの通り、言っておく。
仲間を裏切るな。裏切ったヤツは死をもって償ってもらう。
もちろん、情報を売ろうなど、思ってもいないだろうがな」
ゲルハルトの眼は、仲間を見渡し、ほんの一瞬だけ、アレースの上に長くとどまる。
「そんな方、いるはずがありませんわ。
皆さん、仲間ですもの」
ふわっと微笑み、リーヴが言う。
「そう、だな。
な、アレース」
一つ一つ、言葉を句切るようにギルバートは言った。
「俺がそんなことするわけ、ねーだろ。
な、リーヴ」
軽く、アレースが言葉を返す。だが少々乾いた声であったことに、リーヴ以外のものは気づいていた。
「さて、行くか」
声に笑いをにじませながら、ギルバートは皆を促した。
「そうだな」
寡黙なゲルハルトもあとに続く。
「ハイハイ」
アケミはすっと髪を掻き上げた。いつもながら、なかなか婀娜っぽい仕草。
「それでは」
リーヴラシェンが立ち上がるのをまって、彼らはその宿を後にした。
『塔』―――それは、あまり大きくない町の中心にある。
塔の外に魔物が出たという話は一度も聞いたことがない。そのせいか、塔の中に魔物が出現するからといって、特に周りに壁を巡らせているわけではない。それでも隣接する建物などはなく、どれも塔とは一定の距離を開けて建っているため、自然と塔の周囲には空白地帯が広がっている。そして塔の中への唯一の出入り口である扉を、警備の者が二人、常時護っていた。
一行が塔に近付くと、
「待て」
と声がかかる。
兵士はざっと彼らの装備に目を走らせ、
「FRD登録済みの方ですね、どうぞ」
各人が思い思いの装備をする中、全員の左腕上腕部にそろいの腕輪があるのを一人づつ確認し、兵士は言った。
塔の周りのいくばくかの非干渉空間。そこをいつものように歩いて先へと進み、塔の正面、大扉の前に五人は立った。
ギルバートがいつものように一歩先に進み、扉に手をかける。
ギギギギギィィィィー
毎日のように、何度となく人が出入りしているというのに、一向に人に慣れようとしない扉が、抗議の声を上げながら小さな隙間を開けた。
その中に、吸い込まれるように五人は姿を消し――
ギ、ィ、バタンッ
すべてを遮断するかのように、扉はその顎を閉ざした。




