表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/12

8



「気休め、でしょうけどネ」

 アケミは薄く笑い、遺骸を清めた。そして邪魔にならないように、と端に寄せる。

「情報料だ――」

 ゲルハルトは金貨を一枚取り出し、男の脇に放る。

 キィンッ

 金貨は下に落ち、悲しい音を立てた。

「行く――か」

 ゲルハルトは独白し、前へと進む。ギルバート以下四人もそれに続き・・・


 そこには、物言わぬ男の躯だけが残った。



「どうする? このまま先に進むのか」

 ギルバートは言った。

 ここは五階。階段を上りきったところからつづく回廊を過ぎ、その奥にあった正方形の小部屋。その中に五人はいた。

「この血のあとは、間違いなくあの男を殺した化け物への最短距離だ。そして――六階への階段にも、近いはず」

 ゲルハルトは床に点々と続く血のあとを見ながら言った。その血のりは、開け放たれた扉を過ぎ、奥へと続いている。

「だが、血の臭いに引かれ、ほかの化け物も襲ってくるぞ」

 ギルバートは部屋を見回し、言った。この部屋には四方に扉があり、二つ――五人が入ってきた扉と血が点々と続くもう一方とが開いている。

「違うところを通らねえか。せっかく五階まで来たんだ。もっと慎重にやったって」

 アレースが独り言のように呟く。

 そこにいくばくか、沈黙の時が流れ――

「このまま・・・血のあとをたどっていきたい。私はそう思います。あの方の残した、唯一のものですし。

 名も知らない人、ですよね。――だけど・・・」

 薄く漂う血の臭いの中、静かなリーグラシェンの声が流れた。彼女は一度言葉を切り、視線を赤黒く固まりつつある血の上へと、さまよわせる。

「あの人の生きていた証――それを踏みにじりたくない。行きずりの人ですけど、末期の水を取った一人として。

 気休めとか、偽善とか。・・・そういうんでしょうけど」

 リーヴは悲しげに微笑んだ。

「まったく。お人好しにもほどがあるぜ。

 だが、お嬢にここまで言われちゃあ、行かないってわけにはね」

 ゲルハルトが微苦笑する。

「目は離せねぇし、手はかかるし。危険だってわかってるのに進むんだよな、この嬢ちゃんは。

 危なっかしいったらありゃしねえ」

 ギルバートの目が和む。

「ホントに、ネェ。

 目を離した隙に、なんてコトがあったら、目も当てられないじゃないノ。

 心配するのもバカらしいから、ついていってあげるワヨ」

 アケミも、いつもの笑みを浮かべていった。その眼の奥には、相手を心配している色が垣間見える。

「アレース、お前は?」

 一人沈黙を守っていた軽戦士に、ゲルハルトは声をかけた。

「一人突っ張るわけにもいかねえだろ。

 それに、俺がいなきゃあ、困るんじゃねえの?」

 まったく・・・と舌打ちしそうな様子で答える。その応えは、リーヴの笑みを引き出し。

「いくか」

 ギルバートの声に、先導するアレースが走る。

 つづくギルバート、中ほどリーヴとアケミ。殿はゲルハルト。

 いつものように、彼らは先へと進んでいった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ