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連投
和人が向かったのは、静岡県内にある病院――分隊長であった女性の収容してある病院である。
見慣れない光景が和人を襲った。
「何だ…ここ……」
確かに病院に行きなれているわけではない。数回隊員のお見舞いに来たぐらいだ。だが、その時来たときとは病院の形が大きく変わっていた。
「改築工事したのか……?」
そんな余裕があるのだろうかと疑問に思いながらも、病室を探した。
病室の番号は事前に聞かされていたのでそこまで見つけるのに苦労はしなかったが、何とも変わった。とにかく変わった。見たことない物があちらこちらにある。
「改築しすぎだろこれ……」
と、言いつつも病室を発見した。ノックして、中に入る。
そこには質素な服を着た美少女がいた。病院の服は質素だ。だが、それを打ち消す程の美少女がそこにいた。
(戦闘中だったから顔までは見てなかったが意外と……)
そんな思考が生まれながらも首を横に振り打ち消す。
「あなたが助けてくれたの?」
引き締まった声で少女はそう言った。
「あぁ」
「お礼を言うわ。ありがとう」
「お前の名前は?」
和人はそう問うた。
「私? 私は敷島楓華。《楚》の分隊長をやってるの」
「そうか。ところで楓華。率直に言うが、あの場を守っていたということは楚に捨てられたんだな?」
ちょっといきなりすぎたかと思ったが、話は止めない。今日来たのは「獅子風神」の仲間にならないかという勧誘のためだ。楚から切り離されていることを自覚させなければ勧誘は成功に至らない。
「知ってるわよ……。ろくな戦功立てなくてそれで……」
勧誘側としては中々良い感じになってきたと思う。
「もう楚には戻れないだろうな」
和人は淡々と言い放つ。楓華はそれに「そうね……」と悔しそうに言う。ここらで、勧誘してみることにした。
「いきなりなんだが、静岡に来ないか?」
楓華は動揺した表情で「は、はい!?」と叫ぶ。こらこら、ここは病院だぞ、いくら個室だからって叫んでいいわけじゃないぞ。
「だから、うちの軍隊に来ないかと言っているんだ」
「え!? は!?」
困惑しているようだ。それも無理はない。いきなり病室に来て、うちの軍来ない? と一部ナンパかかった感じで言われては困惑するのも無理はない。
「…………考えとくわ……」
「そうか。じゃぁまた来る」
俺はそう言い残し病室を後にした。
時間を潰すにちょうどいい場所、それは銃の練習も兼ねて出来る訓練場だ。
幾つかの的がありそれを射落とす訓練や、動く人型の的を撃つ訓練など様々な物がある。だが、和人が気に入っている訓練はただ1つだ。それは、動くラジコンヘリを射落とす物だ。
「和人君、いつものやっていくかい?」
訓練場のおじさんが喜作言う。
「あぁ、いつものを頼む」
訓練場の外に出た和人は、2丁のベレッタを手に持ち構えた。
『準備はいいな?』
和人は頷き、飛んでくるヘリに備える。
(最初は3機)
向こうの方から3機のラジコンヘリが空中を浮遊しているのが見える。
「ッ!」
2丁のベレッタから放たれた3発の銃弾はその照準を変えることなくヘリに着弾。3機のヘリは方向感覚を失いぐるぐると回転し地面に機体をぶつけた。
さらに飛んでくるヘリを的確に射抜き、気づけば地面には壊れたヘリの残骸がかなりの数落ちていた。
「終わるよ」
そう呟きホルスターに銃を入れる。
『もう終わるのかい?』
「用事があってな」
『そうかい。残念だね』
和人は無言で訓練場を去った。
そして、向かうのは病院だ。既に2時間程経っているからもう区切りはついただろう。そう思い、病室に入った。
「答えを聞きに来た」
「ハヒッ!?」
ノックもせず入るなり言ったからかなり驚いているご様子。ついでに持ってきた彼女の愛銃「XM8」を机に丁寧に置く。
「またこの銃で戦わないか?」
「私は楚に戻っても、もういらない子として扱われるわ。この銃と一緒に戦うことはできない。私は戦いたい……。この日本を変えて、そして夢を……。」
「答えはOKってことでいいんだな?」
楓華は此方を向き笑顔で言った。
「もちろんよ!」