彼方の言の葉
ある夜の日、くたびれたスーツの中年の男が歩いていた。
20年前、学生だった頃は賑わっていた商店街も今ではすっかり寂れている。
行きつけのラーメン屋も少し前に閉まってしまった。
街灯の淡い光が一つの風変わりなポストを照らし出している。
「なんだこれ」
「お悩み相談所?」
どこか気になって近づいてみると、そこには『お悩み相談所』と書いた一つの小さなポストのようなものがあった。
入れ口は二つあり、一つには『お悩み投函』、もう一つには『お返事投函』と書いてある。
そのすぐ隣には、いくつかの便箋と封筒が置かれた小さな机もある。
「なんだろう、これ」
「なんかのイベントか、、、?」
「でも、どこか懐かしい感じがするな」
以前見たことがあるのかも覚えていない。
昨日まではそこになかった。
でも、何故か無性に『懐かしい』と感じてしまう。
「俺の悩みも、解決してくれたりしてな、、、」
今時こんなことに興味を持って返事を書いてくれる奴なんているようには思えない。
でも、今日だけは、なんとなく試してみたいような感覚に襲われる。
「ま、書くだけなら無料だしな、、、」
男はそう小さく苦笑すると、机から便箋を取ると、そこに何かをしたためていく。
しばらくして一通り書き終えると、便箋を折りたたんで封筒に入れ、ポストへと投函した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ある日の夜、一人の男子大学生が歩いていた。
昼は賑わう商店街も、この時間は人通りも少ない。
行きつけのラーメン店を過ぎると、街灯の淡い光が、一つの風変わりなポストを照らし出していた。
「うん?なんだこれ」
よく見てみると、そのポストには『お悩み相談所』と書かれていた。
「新しくできたのかな?」
試しに『お悩み投函』の投函口の蓋を開けて中を覗いてみる。
中には、一通の手紙が入っていた。
「あ、入ってる」
「こういうのやる人って案外いるんだな、、、」
彼は、何かを迷うようにしばらくその一通の手紙を見つめていた。
「、、、お返事、書いてみようかな」
「せっかく、見つけたんだしね、、、」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彼は家に帰ると、早速持ち帰った手紙を読んでみた。
【最近、何かに挑戦することが怖くなってしまいました。
失敗したらどうしようとか、上手くいかなかったら恥ずかしいとか、そんなことばかり考えてしまいます。
それに正直に言うと、今働いている会社もなんとなく入っただけで、特にやりがいも目標もなく働いていて。
このままで良いのかって、どうしても考えてしまいます。
昔は、もっと楽しんで生きていた気がするのに、、、】
手紙の最後には、『K.M』のイニシャルが書かれていた。
「あ、この人のイニシャル、俺と同じだ」
「これも運命ってやつかな?」
彼は、そう言うとどこか楽し気に微笑む。
「でももしかして、俺も大人になったらこんな風に悩んだりするのかな、、、」
ふとそんな考えが頭をよぎる。
「大人、、、か」
「まだ、あんまり想像もつかないや」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それからしばらく、彼は頭を抱えて返事を考えている。
「よし!思いついたぞ」
彼はそう呟くと、机から一枚の便箋を取り出し、返信を書き始める。
【挑戦することが怖いと言うのは、私も同じです。
仕事の事は、まだ私は子供なのであんまり分かりませんが。
でも、今の自分や、昔の選択を疑いたくなる気持ちも少し分かる気がします。
でも、そんな昔の選択も、後悔する必要はないと思います。
どんな選択であっても、昔の選択があったから今の自分があるんだと、私は思います。
今あなたが悩んでいるのも、今のあなただからこそじゃないでしょうか。
それは、決して悪いことではないはずです。
だから、何か新しい選択をしたり、挑戦をしたりすることを怖がらなくても良いんじゃないでしょうか。
もしちょっとくらい失敗しても、未来の自分も一生懸命悩んで、次の道を探してくれるはずだと、私はそう思いながら生きています。
こんな話が役に立つかは分かりませんが、元気を出して頑張ってください!】
書き終えると、最後に自分のイニシャルを綴る。
『K,M』と、、、。
「この手紙、どんな人に届くんだろうな、、、」
彼は、そんなことを考えつつ、商店街のポストの所まで戻る。
返事の便箋をお悩み相談の手紙と一緒に封筒に入れなおすと、『お返事投函』の投函口に入れる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ある夜、くたびれたスーツを着た一人の男が寂れた商店街を歩いていた。
街灯の淡い光が、一つのポストを照らし出している。
「そいえば、この間出した手紙、どうなったかな?」
わざわざ返事を書いてくれる人などいないだろうと、期待はあまりしていなかったが、どうしても気になり確かめてみることにした。
だが、その結果は予想外のものだった。
ポストの蓋を開けると、そこには確かに自分宛の返信が入っている。
「返信を書いてくれるような人って、本当にいるんだ、、、」
少し驚きながら、彼はその場で封筒を開けると、返信を読み始めた。
しばらくして、彼は何かを考えるように目を細めた。
「この手紙、、、、」
違和感と、既視感。
「いや、そうだ。この手紙、、、」
「俺は、知っている」
なぜ、忘れていたのだろうか。
今になってやっと思い出した。
自分は、20年前にも一度、このポストに出会ったことがある。
そしてその時、ポストに投函されていた一通の手紙。
そして、自分はその手紙に、返信を書いた。
「まさか、、、」
「こんな不思議なことが、、、」
男は、便箋を握りしめて夜空を見上げた。
「あの頃の自分は、こんな事考えてたんだっけな」
「今の俺よりずっとしっかりしてる、、、」
男は、どこか自分に呆れたように苦笑した。
「もう少し、今からでもまた、頑張ってみようかな」
男は、前を向くと静かに歩き出す。
街灯の淡い光が、彼の背中を見送った。
そして、その背中の後ろ、『お悩み相談所』はすでに姿を消していた。
さて、今回の物語はいかがだったでしょうか?
実は、筆者の私もまだ大学生。
大人になったら、主人公のように色々と悩むことになるんでしょうか、、、(._.)
とは言え、その時は未来の自分が頑張ってくれると信じて、今を楽しむのが一番ですね!
もし少しでも面白いと感じてくださった方は、評価や感想を是非お願いします(/・ω・)/
画面の向こうの筆者が跳んで喜んでいるのを想像して、是非!!




