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紅の闇祓  作者: 青空ボーロ
第一章
3/10

第3話 「死ねない理由」

無力に天井を見つめる氷室慧。


横では蒼馬が死へ向かっている。


——それを止める力が、今の慧にはなかった。


「もう終わりか…」


そんな言葉が慧の頭をよぎる。


そして慧は走馬灯のように自らの過去を思い出す。


慧は蒼馬と同じく一般家庭に生まれ、ごく普通の暮らしをしていた。


だがある日、突然慧たちの日常を禍霊が壊した。


「なんだお前…!」


「キャーッ!」


深夜2時、父の怒鳴り声と母の悲鳴で慧は目を覚ます。


「どうしたの…?パパ…ママ…?」


目をこすりながら、幼い少年がリビングで見たのは禍霊に命を奪われた父と母の姿だった。


「えっ、パパ…ママ…?」


慧は膝をつき、立ち上がれなかった。


殺されると思った…その時、その禍霊を鈍い音をたて、何かが破壊した。


そこにいたのは大きなハンマーを持った大男。年は70代に見えるが、全く衰えを感じない動きだった。


「大丈夫か…と言いたいところではあるが。どこからどう見ても大丈夫ではなさそうじゃのう。」


老人は申し訳なさそうな顔をし、言った。


「ワシがもっと早くついていれば…すまない…」


そういうと老人は慧の父親と母親を速やかに救急搬送し、慧を禍断隊の施設へと保護した。


「あの…お父さんとお母さんは…」


「今、手術中じゃ。」


慧たちの目の前で光っていた「手術中」のランプが消える。


「パパ!ママ!」


慧は我を忘れ、手術室の前へ駆け寄った。


だがそこにいたのは暗い表情を浮かべる医者の姿があった。


「すみません…」


それだけで幼いながらも慧は全てを察した。


「あっ、えっ、そんな…」


そして手術室の奥にいたのはかつては父と母だったものだった。


「うわぁー!パパァ〜!ママァ〜!」


「うぅ…!」


老人はその拳を握りしめた。その拳が赤く染まるほどに。


不思議と慧の両親の亡骸は軽かった。


慧は「きっと沢山血を流したんだ。可哀想に。」と解釈した。


そして全てを終えた後、施設で老人と慧は話していた。


「…これいるか?」


老人はゆっくりとお菓子と折り紙で作られた手裏剣を慧に渡した。


「手裏剣…!かっこいい!」


慧は喜んだ。親が死んでから笑顔を見せなかったが、やっと笑ってくれた。老人はとても喜んだ。


「おじいちゃん…やさしいね。」


「子供に優しくできんかったらただの老害じゃ。まあクソガキは別じゃがのう!」


そういいながら老人は「ホッホッホッ!」と豪快に笑った。


「あの…おじいちゃん…名前は?」


「ワシの名前は黒瀬太三くろせたぞうじゃ。」


「僕の名前は氷室慧ひむろけい。」


「よろしくじゃ!」


そういって黒瀬は拳を突き出す。


「えっ、なにこれ?じゃんけんでもするの?」


黒瀬はまた豪快に笑いながら説明した。


「これはグータッチというやつじゃ!教えてやるからやってみるんじゃ!」


そして2人はグータッチをした。この時、初めて慧はグータッチと黒瀬の優しさを学んだ。


…だが親を失ったという悲しみは簡単には癒えない。


「うぅ…パパ…ママ…」


夜になると慧は亡き両親を思い出し、泣き始めることがあった。


「慧…。」


黒瀬はその様子をとても心配していた。


だがその時、一人の少女が慧に声をかける。


「どうして泣いてるの?」


その少女は花のように美しかった。慧は照れながらも答えた。


「僕…実は…。」


亡き両親のことを思い出して泣いてしまう。それを慧が伝えると少女は語り始めた。


「あのね。私も親が禍霊に殺されてるの。だから一緒だね。」


そういって笑顔で慧の手を掴んだ。


あまりにも美しい少女に手を掴まれた慧は頬を赤らめた。


そして慧の手の中には三つ葉のクローバーが入っていた。


「これ。三つ葉のクローバー。持ってると幸運になれるんだよ。」


「ありがとう…。」


「私、百花ももか。貴方は?」


「僕、氷室慧…よろしく。」


「慧君。お互い親がいないからこれからは私たちがそれを補いあおう。私たちは家族だよ。」


百花がそういうと慧は照れながら頷いた。


そして慧は誓ったんだ。この子だけは守ると。


そして慧は禍断隊に入って修行をしていた。


周りは天才だらけである。慧は中々成果を上げられなかった。


「よう頑張ってるのは認めるけど。お前はほんまにセンスがないなぁ。向いてないで、禍断隊。」


上官からこのような言葉を何度も言われた。


そのたび、慧は悔しかった。


慧は何度も任務で死にかけた。

そのたび、周りの天才と比べ、落ち込んだ。それでも諦められなかった。"家族の仇を必ずとるため"。


だが…ある日…慧に悲劇が起きる。


「えっ、そんな…百花ももか…。」


任務から帰ってくると百花が瀕死になっていた。


「すみません…処置は施しましたが…もう助かりません…。話せる最期のチャンスです。氷室さん…どうか話してやってください。」


慧は涙をこぼしながら百花に語りかけた。


「百花…!助かる方法はないのか…!?」


「もう…無理…ごめんね…。」


「誰にやられんたんだ…!こんなこと…!絶対そいつをぶっ殺してやる!」


百花は今にも消えそうな力で慧の頬を触った。


「慧…前から思ってたけど…。慧はとても頑張ってるけど…もう禍断隊はやめて普通の男の子の幸せをつかんでほしい…。」


「なんでだ…!こんなことされてなんでやめれるんだよ!」


「だって…慧は優しくて…真面目でかっこいいから…。前々からわかってたけど…禍断隊はきっと頭のネジが外れてないとできない仕事なの…。だから…慧はやめて…。」


だが慧は諦められなかった。


「言え…!どんな禍霊にやられた…!」


百花は絞り出すかのような声で語り始めた。


「紫色の…鎧を纏った…サソリのような剣士…毒を使ってて…性別は女性…身長は多分…慧と同じくらい…。」


「わかった…絶対仇はとる…!」


慧のその言葉を最後に百花の息は止まった。


それから慧はずっと禍霊を狩り続けた。


恋人と家族の仇をとるまで終われない。


これが慧の信念であり、大義だった。


だが…すぐそこに禍霊が迫り、自分も死にかけだ。


(クソ…俺は百花の仇もとれずにこんなところで…!)


その時、窓が割れ、男女2人組が乱入する。


「おっしゃ!いくでぇ!」


「遅れて参上だぁ〜ぜぇ〜!」


刀を持った女と筋肉質な金属バッドを持った男が乱入したのだ。


「あれは…!」


「禍断隊の増援か…!」


そして2人の登場により、一筋の光が戦場に刺した。

毎週土曜日20時更新です。

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