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紅の闇祓  作者: 青空ボーロ
第一章
17/17

第17話「魂を喰らう怪物」

ある夜、黒い影が動いていた。


魂を操る女の禍霊・魂縛こんばくと謎の眼鏡の男。


魂縛たちが向かっていたのは大分。


大分行きの特急列車で乗客全員が魂縛に殺された。


そして魂縛たちは蒼馬たちを探す旅へと出たのだ。


数日後――深夜。蒼馬は眠りについていた。


だが夢で祖父に蒼馬は警告を受ける。


「蒼馬。起きて、一階に行け。今すぐだ。大変なことになるぞ。じゃあな。」


そう言われた蒼馬は目を覚まし、一階へ向かう。


謎の咀嚼音の元をたどり、体育館の扉を開ける蒼馬。


鼻に伝わる、血の匂い。空気を震わすオーラ。


蒼馬は震え、冷や汗をかいた。


そこにいたのは人を喰らう魂縛の姿だった。


「お前…何者だ…?」


「あらあら声が震えてるわよ。わかる。貴方は怖がっているのよ。」


蒼馬は槍のB級業具・未穿みせんを抜き、立ち向かう。


「かかってこい…!」


「あらあらやるのかしら?天城蒼馬だったかしら業臨を2連続で出した天才。お手並み拝見といきましょうか。」


――その時、立ち向かう蒼馬を影から見るものがいた。


「天城蒼馬…。彼にはあまり興味がないんだが、まあ私はゆっくりと見させてもらおうか。」


アジトで魂縛と話していた――謎の眼鏡の男。


そしてやつらが蒼馬たちの日常を赤く染めていく…。


蒼馬は魂縛を見つめていた。


(俺とやつとの実力差は明確だ…。むやみやたらに動けば…一瞬で殺される…!正面からじゃだめだ…!考えろ…!攻略しろ…!動け…!)


それを魂縛は察していた。


「あらあら突っ込んでこないのかしら。思いのほか賢いのね。どうせ戦っても一瞬だし、そうね。少しお話しましょうか。」


「…話だと?」


蒼馬は考える。


(慧さんたちはまだ気がついてない。なら多少なりとも時間は稼いだほうがいい。)


「…いいだろう。で、何の話だ?」


「フフ…。」


それを眼鏡の男は見ていた。


「なるほど…。恐らく氷室慧たちが来るための時間稼ぎといったところか。真正面から突っ込まないあたり、意外にも賢いね。

――ほんの少し興味が湧いてきたかもしれないな。」


魂縛は話し始めた。


「貴方。この一般人が何者かわかるかしら?」


「一般人…?」


「よーく見てみなさい。」


魂縛は床に転がる“それ”を指さした。


「あっ!?」


蒼馬は思い出す。


あの子は慧を怒らせたウルトラマンが好きな男の子だ。


「あの男の人木刀振り回しててかっけー!ウルトラマンべリアムみたい!」


鍛錬する慧に彼がそういうとそれを聞いた慧は「ウルトラマンのような幼稚な話ではない。」と怒っていた。


「この子がいきなり下に降りてきたのよ。貴方はなぜだと思う?」


蒼馬は察した。


恐らく、男の子は好奇心から下に行ってしまったんだ。


「この子は最期、なんて言ってたと思う?」


「もう…いい…。」


蒼馬が小さくつぶやくが魂縛は無視して続ける。


「男の子はね!

『ヤダーッ!ママーッ!ウルトラマン助けて!』だって!

フフフ…!思い出しただけで面白い…!最高の傑作よ…!」


蒼馬は未穿を強く握りしめた。


血管が張り裂けんほどに隆起し、目は血走っていた。


「もういい…お前は…もう黙れ…」


「ん?なんか言ったかしら?」


蒼馬の目の光が消えた。


「お前は…もうその人たちのことをしゃべるな…。お前は…存在してはならない生き物だ…。」


魂縛はそれを見ても尚、笑う。


「あらあら!怒らせちゃったかしら!ごめんなさいね。……嘘よ。最高に楽しいわ。」


蒼馬は地面を踏み込み、飛び出していた。


魂縛は悪魔の笑みを浮かべる。


(何の策もない特攻…!やはり激情型…!いける…!一撃で勝てる…!)


だがその時、蒼馬が制服の上着を投げる。


その黒い布は魂縛の視界を完璧に塞ぐ。


(ここで搦手…!面白いわ…!)


「魂改…!」


魂縛は自らの体に魂改を施す。


すると魂縛の魂が変形し、腕が刃になる。


その刃が制服を切り裂く。


「まっ、こんな搦手切り裂けば…。」


魂縛がそういいかけるも制服の先には蒼馬はいなかった。


(いない…!どこだ…!?)


その時、魂縛は第六感から振り返る。


(ここか…!?)


だがそれは間に合わない!


激しい突きが魂縛の首に向かう。


だが魂縛の首は固く、蒼馬の槍は通らない。


「首を鍛える。基本中の基本よね!さあ終わりよ!」


そういって魂縛は刃を蒼馬の体に向ける。


その時、蒼馬の足が跳ね上がる。


「うおー!」


蒼馬の蹴りが魂縛の腹を貫く。


「業臨…!」


赤い花火が散り、魂縛は吹き飛んだ。


「いい攻撃ね。でもこの程度じゃ。私は…。」


だがその時、魂縛は血を吐く。


「ゴフッ…!あれぇ…?おかしいわね…?なんで魂に響いてるのかしら…?」


その言葉を聞いた蒼馬は分析する。


("魂に響く"…。そういえば黒瀬さんが腕を破壊しても、一瞬で再生したと言っていた…。

俺の業臨だけ、さっきより“効いてる”。

――肉じゃない、もっと奥だ。)


その時、蒼馬は大きな声で言った。


「魂への攻撃以外は無効…!? 肉体は全部、再生するのか!?」


それを聞いた魂縛は口をハンカチで拭きながら言う。


「よくわかったわね。賢い男子は大好き。」


それを見た眼鏡の男は蒼馬に目を奪われていた。


「ほう…多彩な搦手であの魂縛にダメージを与え、そしてこの短時間で攻略法を理解した。加えて、恐らく魂を無意識に知覚している。天城蒼馬…思いのほか、面白いじゃないか。」


「まっ、それがわかったところであなたにはどうしようもない。もう搦手は全部出したでしょう?私の勝ちよ。」


事実、蒼馬は搦手を全て使い切っていた。蒼馬は必死に次の一手を考える。


(クソ…!考えろ考えろ…!!)


その時、魂縛は口から何かを吐く。


「オエッ…!」


漆黒をまとった宝石が、何十個も吐き出された。光を吸うように、黒い。


(宝石…!?何かまずい…!?)


「さてといってらっしゃい。お人形さんたち。」


魂縛がそういうと宝石は禍々しい化け物の姿へと変化した。


蒼馬に化け物たちが突っ込んでいく。


(大丈夫だ…!恐らくこいつらは量産型の雑兵ぞうひょう…!業臨と未穿のコンボで倒せる…!)


蒼馬の拳が化け物のうちの一人を殴る。


「業臨…!」


紅い花火が散り、化け物のうちの1人を破壊した。


「よし…!次…!」


その時、化け物が喋った。


「ママ…アソボ…」


「えっ、」


蒼馬の手が止まる。その隙に魂縛は後ろに回っていた。


「それ私が特急列車で殺した子供よ!怖がってて面白かったわ!」


蒼馬は振り返る。


(まずい…!やられる…!)


(今なら出せる…!)


そう心の中で叫ぶと魂縛は拳を握りしめる。


「いける…!業臨…!」


魂縛が業臨を放つと黄色い花火が散り、蒼馬は吹き飛んだ。


「ゴフッ…!」


蒼馬は壁に突き刺さり、血を吐いた。


肋骨が折れる鈍い音が体内に響き渡る。


既に折れていた肋が、衝撃で内側を抉った。息ができない。


魂縛はゆっくりと歩み寄る。


「あれね。私の術式で魂を改造した改造人間よ。元々は人間だけど、私の魂改で禍霊みたいな“形”に変えられるの。

――貴方は優しいから人は殺せない。やはり私の予想通りだったわ。」


眼鏡の男はそれを名残惜しそうに見ていた。


「天城蒼馬。逸材だと思ったが、こんなに早く負けるとは、少し残念だね。まあいいか。」


「さあおしまい。」


そういって魂縛は蒼馬に触れようとした。


その時、扉が激しい音を立て、暴風と共に切り裂かれる。


魂縛は振り返る。


「あらお客さんかしら?」


その男は魂縛へ向かい3本の苦無を投げた。


そのうちの2つが魂縛に突き刺さる。


(早い…!一呼吸で3つ…!でも魂には響いてない…!いける…!)


「天城蒼馬ぁ!トドメだぁ!」


強引にトドメを刺そうとする魂縛の声が体育館に響いた。


だが後ろから魂縛を刀が貫く!


「刀…!?何者…!?」


「おらぁ!」


そして魂縛は凄まじい衝撃とともに雷を纏った打撃で吹き飛んだ!


魂縛の頭から血が出る。


「へぇ…。さらなるチャレンジャーと言ったところかしら?」


そこに現れたのは神代刀花、問馬鹿之助。


――そして氷室慧だった。


「蒼馬。すまん遅れた。」


「まだ終わってへん。自分の力が必要や。立てるか?蒼馬。」


「蒼馬!まだいけるよな!?全員でボコそうぜぇ!」


それを見た蒼馬は安心した表情を浮かべ、3人の手を借りて立ち上がる。


「ありがとう…みんな…!」


「4対1…!面白い展開になってきたわ…!」


ついに仲間全員が揃った。


――だが眼鏡の男は不気味に笑っていた。


「来たか。氷室慧、神代刀花、問馬鹿之助。だが4人集まったところで私たちには敵わないだろうね。

――さあ実験を始めようか。」


この夜、蒼馬たちの運命は大きく別れた。

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