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紅の闇祓  作者: 青空ボーロ
第一章
16/17

第16話「魂改(こんかい)」

黒瀬は謎のS級禍霊、魂縛こんばくという女と交戦。


戦いは互角。だが魂縛は逃げた。


黒瀬は魂縛を取り逃がしたことを慧たちに伝えた。


それを共有された蒼馬たちは嫌な予感に鳥肌がたった。


ある夜、蒼馬は寝る準備をしていた。


洗面所で歯を磨く、蒼馬。


その隣ではただをこねる鹿之介がいた。


「歯磨きしたくねぇ〜ぜぇ〜!」


「あかん!せんと虫歯なるで!」


「うぅ…するぜぇ…。」


歯を磨きながら蒼馬は考えていた。


(…やっぱり何故だがわからないけど嫌な予感がする。なんだろう。)


だがそんなことを言っても何も起きない。蒼馬は気にしないようにしていた。


――その時、大分行きの特急列車が発車していた。


「大分行き。ただいま発車します。」


その特急列車では騒いでいる男たちがいた。いわゆる世間ではDQNどきゅんと呼ばれる連中だ。


「おいおっさん!優先席譲れや!」


「大人なのに恥ずかしくないんすか?」


彼らは笑いながら挑発するが、ペースメーカーの男は答える。


「い、いや…俺は心臓にペースメーカーが…。」


「知るかそんなん!おらぁ!」


そういってペースメーカーの男の足を蹴った。


ペースメーカーの男は心臓が弱い。故に喧嘩では勝てない。


「うっ…!」


男は苦しみ始めた。


「ハハッ!なんだこいつ!」


「おもしれー!」


その時、DQNたちの後ろから大きな影が現れる。


「貴方たち…。」


それはDQNたちの肩に手を触れる魂縛だ。


「あぁん!?なんだテメェ!?」


「女か!?夜の相手でもしてくれんのかよ!?」


だが魂縛はその言葉を無視し、悪魔のような笑みを浮かべる。


「弱いものいじめはよくないわよ。

――魂改こんかい。」


魂縛がそういうとDQNたちの体が消えた。


「えっ、」


ペースメーカーの男の表情が歪んだ。


何が起きたかわからなかった。


目の前で人、2人がいきなり死んだからだ。


「だ、誰か…!?」


ペースメーカーの男がそういうと他の客も騒ぎ出す。


「シーッ…。」


魂縛は男の口を抑える。


「あなた、聞いてたわよ。心臓にペースメーカーあるんだって?私の能力ならその心臓、完璧に治してあげるけどどうする?」


そういって魂縛は男の口から手を離す。


「な、治す…。どうやって…?」


「私の術式よ。魂改って言ってね。魂の形を変えられるわ。さっきそれであの男たちを殺したの。どう?治したくない?」


こんなにうまい話はない。男はそれに乗った。


「わかった!治してくれ!頼む!」


「ならここにいる乗客全員殺しなさい。そしたら治してあげるわ。

――これは誓約せいやくよ。」


魂縛の言葉に男は困惑する。


「えっ、それって人殺し…。」


「じゃあそのまま心臓悪いまま生き続けるの?」


その言葉を聞いた男は決断した。


「…わかった。殺す。先に心臓を治して、武器をくれ。そしたら殺せる。」


「ええ。いいわよ。」


そのやりとりを聞いていた周りの乗客が騒ぎ出す。


「次の駅ついちゃったら逃げられちゃうからちゃちゃっとやっちゃおうか。じゃ、少し触るね。」


そういって魂縛は男の胸に触れる。


魂改こんかい…。」


すると不思議な力で男の心臓は治った。


「さっ、ちゃんと殺して。」


そういって魂縛は彼に銃を渡す。


「わ、わかった…!お前ら動くんじゃねぇぞ!」


「キャーッ!」


魂縛は一瞬、静かにその光景を見渡した。


そして、堪えきれないように笑った。


「フフフ!なんて面白い光景!これが私の望んだ光景よ!」


だが銃を持つ男の手が震える。


「クソ…やっぱ俺に…人は…。」


禍断隊でも禍霊でもない一般人に人殺しは無理だった。


「あ〜あ。約束破っちゃうの?壊れちゃうね。」


「えっ、」


その時、男の体が突然、バラバラに崩れ落ちた。


「フフフ…!面白いわ!…誓約はね、破った瞬間に“魂の形”が保てなくなるの。


まあでも当然の結末よね。

――約束を守れない人間に、治る資格はないもの。」


すると特急列車のアナウンスが鳴る。


「まもなく大分。」


「あっ、あんま時間ないわね。それじゃあ早めに皆殺しといきましょうか。」


「イヤーッ!」


「助けて!」


子どもを抱き寄せる者、扉にすがる者、震えて祈る者――


だが、その声は次々と途切れていった。


それを笑いながら見る眼鏡の男がいた。


「一瞬にしてペースメーカーが必要なほどの心臓を完治させ、乗客全員も殺す。

やはり魂縛の能力…興味深いものがあるね。」


そして特急列車が大分へつく。


「大分。大分。」


アナウンスが鳴ると扉が開く。


返り血を浴びた魂縛を見た瞬間、ホームが静まり返った


この後、彼らも赤に染まった。


「さてと魂縛。向かうよ。天城蒼馬たちの元へ。」


「ええ。いきましょう。」


彼らは蒼馬たちを探す旅へとでた。


――その数日後、蒼馬は寝ていた。


蒼馬は夢をみる。


そこは電車だった。


「よぉ。蒼馬。」


そこにいたのは亡くなった蒼馬の祖父だった。


「お、おじいちゃん…!?どうしてここに…?」


「蒼馬。起きて、一階に行け。今すぐだ。

――大変なことになるぞ。じゃあな。」


祖父の言葉を最後に蒼馬は目覚めた。


「…ただの夢かもしれないけど放っておけないな。」


そういって蒼馬は一階へ降りた。


廊下の暗さ、以前見えた赤い空、嫌な予感、そして祖父の言葉。蒼馬は冷や汗をかきながら下に降りる。


蒼馬が階段を降りると体育館から何かの気配を感じた。


そこでは何かの咀嚼音のような音がした。


「……誰かいるのか?」


蒼馬は問いかけるが、返事はない。


恐る恐る扉を開ける。


開けた瞬間、血の匂いが鼻をついた。


そこにいたのは人を喰らう魂縛の姿だった。


「あれぇ?静かに入ってきたのになんで気がついたのかしら?勘がいい子なのね。でも同時に運が悪い子でもあるわ。」


魂縛をみた瞬間、蒼馬は震えあがり、全身に鳥肌がたった。


(こいつ…なんて圧…間違いなく今までのやつらとは別格…!)


そして蒼馬はやつの顔をみる。


紫色の長髪、身長170cm台、女の禍霊。


(特徴が一致する…!黒瀬さんが言ってた…あの禍霊…!)


蒼馬は震える声でいう。


「お前…何者だ…?」


「あらあら声が震えてるわよ。わかる。貴方は怖がっているのよ。」


「…え?」


「私にはお見通し。怖がってる人からは怖がっている空気がするの。そうね。今のあなたをみる限り私に怒ってもいるわ。」


飄々とする魂縛だが蒼馬はB級業具・未穿みせんを抜く。


蒼馬の息が荒れる。心臓はより早く鼓動を鳴らし、足は震えた。


「かかってこい…!」


「あらあらやるのかしら?天城蒼馬だったかしら業臨を2連続で出した天才。お手並み拝見といきましょうか。」


(こいつ…俺の名前を…!?)


その時、立ち向かう蒼馬を影から見るものがいた。


「天城蒼馬…。彼にはあまり興味がないんだが、まあ私はゆっくりと見させてもらおうか。」


アジトで魂縛と話していた。魂縛とともに行動する謎の眼鏡の男。


そしてやつらが蒼馬たちの日常を赤く染める。

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