第12話「紅の花火」
蒼馬、慧、刀花、鹿之介はドラゴンの禍霊と戦っていた。
その禍霊は強かった。4人は苦戦を強いられる。
だが4人の協力により、なんとか禍霊を祓うことに成功した。
蒼馬は力尽き、眠りに落ちた。
慧、刀花、鹿之介の3人は肩を組んで勝利を喜んだ。
「うっ…ここは…。」
蒼馬が目を覚ますと目の前にはオレンジ色の炎があった。
次に目に入ったのは裸で傷を焼く、慧と鹿之介の姿だ。
「おっ!蒼馬起きたかぁー!」
最初に蒼馬が聞いたのは鹿之介の言葉だった。
「お、おはようございます。あれ…確か俺は…ま、禍霊!倒せてましたか!?」
「ああ。倒せていたぞ。」
「…よかった。」
すると刀花は大興奮しながら蒼馬に言った。
「蒼馬!お前すごいで!業臨を2回連続なんて初めてみたわ!」
「そんなにすごいんですか?」
「すごいで。以前言ったやろ。業臨は連続発動はほぼ不可能や。やが2回連続で出したのはすごいことだ。」
鹿之介と慧もそれを褒める。
「すげぇ〜ぜぇ〜!蒼馬ぁ〜!」
「蒼馬。業臨を出してから空気が変わっている。確実に成長しているぞ。」
「…ありがとうございます!」
しかし慧は真面目だった。
「だがここで調子に乗ってはならないぞ。蒼馬。」
蒼馬に厳しい言葉をかける。
だが蒼馬はわかっていた。その慧の言葉は「まだまだ蒼馬は伸びる」と慧が思ってくれている証拠である。
「…はい!」
これからも必ず成長し続ける。
蒼馬はそう誓った。
慧の真剣な眼差しを焚き火の炎が照らす。
「蒼馬。業臨の連続記録で最高記録を出した人間を俺は知っている。」
「…誰ですか?」
「彼は俺の師匠『黒瀬太三』だ。これを見ろ。」
すると慧は新聞を蒼馬に見せた。
黒瀬は業臨の最高記録を叩き出した時にインタビューを受けていた。
これはその時の様子を特集した新聞である。
黒瀬太三は40年前、彼が48歳だった時にその記録を叩き出した。
ある任務で黒瀬は大量のA級禍霊と複数のS級禍霊に囲まれた。
「全く…骨が折れる相手じゃ…。お主ら。下がっておれ。」
そういいながら黒瀬は大きなハンマーを振りかざす。
「業臨!」
目撃者によれば黒瀬のハンマーからは白い花火が5回連続ででていたと。
空気は震え、業が溢れ出ていた。
そして黒瀬は術式を使わず、その禍霊たちを完璧に祓った。その場にいたものには傷一つすら負わせなかった。まさに「伝説の漢」と呼ばれている。
その時、蒼馬は慧に聞いた。
「白い花火…?でも俺の拳からでたのは紅い花火でしたよ?」
「まだそれを知らないのか。それはまずい。今教えてやる。」
そういうと慧は説明しだした。
「蒼馬。炎色反応って知ってるか?」
「はい。科学でやりました。」
「業臨の色とその強さはその炎色反応と同じ仕組みだ。
序列としては赤、橙、黄、白、青白、青となる。
赤(暗赤)は500〜800℃
初心者が出す業臨。業臨の原点だ。
ここを通らなければ青にいきつくのは不可能だ。
まあ稀にここをスキップして黄や白からスタートする天才もいるがな。
特性は感情先行で不安定だ。恐怖・怒り・焦りが混ざっている。
今の蒼馬はこの状態だ。」
「えっ、じゃあ一番下じゃないですか!?」
「残念ながらそうなる。」
蒼馬は心のなかで「ちょっとショックだなぁ…」とつぶやく。
「橙は1000℃前後。
業を“使っている”段階だ。意志はあるが揺らぎがある。多くの一般禍断隊員の上限はここだ。
黄は1200℃前後。
高出力の業臨。覚悟と集中が噛み合っている状態だ。ここまでくればエリート級、A級禍霊と互角だ。もう一人前と判断していいだろう。
白〜青白は1300〜1600℃。
業と精神が高度に同調している。ここが常人の限界ラインで「才能がある」と言われる域
だ。ちなみに黒瀬さんは50代でこの域に達していた。
青は1600℃以上。『完全燃焼』または『完全業臨』と呼ばれる。
感情を制御し、業を理解している。
天才でもここが限界値だ。黒瀬さんも50代後半で青白に到達し、60代で“青”に至った。
……だが、それ以上はあの人ですら難しいだろう。」
「これより上…あるんですか…?」
「ある。それは紫だ。まさに規格外だがな。
観測例はほぼない。
業そのものを“超えている”存在といえる。
未来視・世界認識・法則干渉の領域またはそれに匹敵する。
まさに 最終盤/伝説/異端専用だ。」
蒼馬は恐る恐る聞く。その存在に恐ろしさに想像するだけで汗がにじみでた。
「その…紫を扱う人間は…現代にも存在するんですか…?」
「ああ。いる。現代最強の男…。まさに規格外…。その名は…。」
慧がそういいかけると焚き火の炎はさらに燃え上がり、蒼馬たちは息を飲んだ。
――「…『一条凌駕』という男だ。」
「一条…凌駕…」
蒼馬はゆっくりとその名前を復唱した。
「30年以上、禍断隊で最強とされている男。過去の人物を除けば、いまだにあの男を超える存在は現れていない。
紫の業臨を出したのはあの人で486年ぶりだ。
しかも業臨は打撃ではないと出しにくい。斬撃や刺突ではほぼでない。蒼馬も槍ではなく拳で業臨を発動したはずだ。」
「確かに…業臨を出す瞬間。『あっ、でるな。』ってわかるんです。
でも槍でたたかってるとき、その感覚は全く感じませんでした。」
「黒瀬さんですら巨大なハンマーという獲物で業臨を出していた。
だがこの一条凌駕という男の獲物はトライデント…。刺突や斬撃で紫の業臨を出した。」
だが鹿之介は笑いながら言う。
「でもよ!その凌駕ってやつは禍霊じゃなくて禍断隊なんだろ!?だったら仲間じゃねぇか!敵じゃなくてよかったぜぇ〜!」
――だが慧の表情が曇る。
「鹿之介…そんな単純な話ではない。」
「ん?どういうことだぁ〜ぜぇ〜!?」
「今、禍断隊は2つに分かれている。凌駕さんは…俺たちの仲間じゃない。」
蒼馬たちは全てを察した。察しが悪い鹿之介でもわかった。
「そうですか…。その凌駕って人がいつ俺たちを襲ってくるかはわかりません。でも…。」
そういって蒼馬は拳を握りしめる。
「もしその上層部が罪なき人を苦しめているなら…俺は…必ずその上層部を潰します…!業術は、業を背負わない人間を守るためにある。俺は業を力として悪用する奴を、絶対に許さない…!」
それを見た刀花と問馬は微笑んだ。
「蒼馬。ええ覚悟や。ワイもあの上層部にムカついてたとこや。一緒に業術界に革命起こすで。」
「おもしれぇ〜!俺もお供させてもらうぜぇ〜!」
慧の表情は真剣だった。じっくりと蒼馬の目を見つめる。
「蒼馬。いい覚悟だ。俺もその意見に賛成する。
――だがやつらはお前が思ってる何十倍…いや何千倍も強い。
かなり厳しいことを言うが、まずはもう少し強くなってから言うことだな。」
厳しい現実だ。だが蒼馬はそれを理解した。
「…はい。必ず強くなりますから。」
それを見た慧の表情が緩む。
「いい覚悟だ。嫌いじゃない。」
焚き火の炎が静かに揺れていた。
それはまだ小さいが、確かに燃え続けている。
慧はその焚き火の炎を消した。
「おっしゃあ!またゲームするぜぇ!」
そういいながら鹿之介は背中をボリボリとかく。
「ん?鹿之介ボリボリかきすぎじゃね?」
「なんか全身かゆいぜぇ〜!」
「あっ、そうや。そういえばワイら風呂入っとらんがな!」
「えぇ〜!?やばいぜぇ〜!風呂入らないと垢舐め小僧がでてくるってお母さんが言ってたぜぇ〜!」
「あかん!3人とも早く風呂入るで!」
そういって刀花と鹿之介は蒼馬と慧を引っ張る。
「おいここどこだ。」
「ここはな。この学校にある風呂や。大分県の温泉がタンクにたまっとってはいることができる!さあ入るで!」
そして半ば強引に蒼馬と慧は風呂に入れられる。
心と身体を休める一時が蒼馬たちを癒していく。




