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紅の闇祓  作者: 青空ボーロ
第一章
10/10

第10話「静寂の宝物」

蒼馬と慧。


真面目な少年と冷たい男の対話が始まった。


これまでの慧の行動を振り返り、「貴方は優しい」と主張する蒼馬。


蒼馬は慧を決して見捨てなかった。


その姿がかつての恩師、黒瀬太三と重なった慧は涙をこぼし、蒼馬に感謝した。


「これからは仲間だ…!」


そういう慧に蒼馬は「これから"も"ですよ。」と優しく微笑んだ。


そのあと蒼馬が向かった先は刀花と鹿之介の元だった。


そこには楽しそうにゲームをする2人の姿があった。


「アホー!相手隙だらけなんやから通常攻撃じゃなくて横スマ打てやぁ!」


「横スマ?なんだそれ?」


その時、蒼馬が部屋に入る。


「あの…!」


刀花と鹿之介は振り返る。


「おぉ!蒼馬やっときたか!ちょうど鹿之介が横スマわかっとらんから教えてやってや!」


「蒼馬!横スマってなんだぁ〜!?」


「…ごめんなさい。ゲームは後です。」


「ん?なんでや?スマブラの気分ちゃうかったか?フォトナに変えるか?」


「いやそういうわけではなく…。先程のことなんですが――」


すると蒼馬は慧との対話の内容を伝えた。


「あいつ…嫌なやつやと思ってたけどそんなことあったんか…。可哀想なやつやな…。」


「なんかよくわからねぇけど…可哀想なやつだぜ…。それだけはわかったぜ…。」


2人は慧に同情した。


「慧さんはとても反省していました。もう大丈夫だと思います。拘束を解いてあげませんか…?」


蒼馬の提案に2人は賛成した。


「せやな。蒼馬が言うんやから間違いないやろ。ええよ。拘束とくで。」


「応!ロープほどいてやるぜぇ〜!」


そして3人は慧の元へと向かった。


「慧さん。」


「蒼馬!」


「連れてきました。刀花さんと鹿之介さんです。2人から許可を得たので拘束を解きます。」


そういって、蒼馬は拘束を解いた。


「蒼馬…本当にありがとう。」


刀花は慧の変化に驚く。


(コイツ…さっき暴れてた時とは空気が明らかにちゃう。

コイツの口から「ありがとう」やと…?ほんまに変わったんやな…。

――蒼馬。この男を変えるなんてやるやんけ。)


鹿之介は手を慧の肩においた。


「慧!お前雰囲気変わってるぜぇ〜!

なんかこう!あれだよ!あれ!『ドカーッ!』って感じでよ!」


「ど、どういう意味だ?」


「すまんな慧。コイツアホすぎて説明下手くそやねん。」


「だぁ〜ぜぇ〜!」


「あとこれ大事なんやろ。返すわ。」


刀花は慧に刀を返した。


「ありがとう。刀花。」


「ええんやで。」


慧の目が震え、唇を噛み締める。


重々しく、ゆっくりと慧の口が開く。


「あの……3人とも……!」


慧は膝をつき、深く頭を下げた。


「あんな態度をとって、本当にすまない……。


蒼馬のおかげで、俺は大切なものを思い出せた。


——仲間として、受け入れてくれないか」


刀花は息を吐き、肩をすくめた。


「しゃあないな。完全に許すのはもうちょい先や。

でも——今は一歩でええ。」


鹿之介は笑う。


「ん?俺は最初から仲間として受け入れてたぜぇ!これからもよろしくだぁ〜ぜぇ〜!」


すると慧は頭を上げた。


「本当に…ありがとう…。」


その時、学校に誰かが来る。


「お届けもので〜す!」


それは禍断隊の連絡員だった。


「お届け先は氷室慧さんですね。黒瀬太三さんから届いています。」


「黒瀬さんから…?」


「では私はこれで。」


そういうと連絡員は過ぎ去って行った。


「あの人…外は禍霊だらけなのに大丈夫なんですか…?」


「ああ。彼も禍断隊の関係者だ。

その辺りは覚悟しているだろう。

それにあれが連絡員の任務だからな。

それより…黒瀬さんだと…?何が届いた…?」


慧がゆっくりと箱を開けた。そして中には手紙と新品の光り輝く槍と刀があった。


「これは…!?」


鹿之介が騒ぐ。


「おぉ〜!かっけー!これなんだ!?」


慧は説明する。


「これは『業具ごうぐ』と呼ばれる武器だ。」


「『業具ごうぐ』?」


「業具とは、業を宿すことで禍霊に干渉できる武器だ。業を扱えない者でも、最低限のダメージは通る。」


中にあった手紙を慧は手に取る。


「黒瀬さんからの手紙…。」


蒼馬もそれを見る。


黒瀬太三くろせたぞう…。慧さんの師匠だ。)


黒瀬からの手紙にはこうかかれていた。


「慧。久しぶりじゃのう。元気か?

ワシもそっちにいこうかと思っとるんじゃが、上層部に止められていけんくてのう。

でもワシは慧のことを信じている。

そして必ず慧には死んでほしくない。

じゃから戦利品を送ったぞい。

ワシの部屋の倉庫にある業具を選んで送っておいた。上手く扱うんじゃ。幸運を祈るぞい。」


そして手紙の裏には詳しく、送られてきた2つの業具について説明が書かれていた。


「黒瀬さん…。こんなに丁寧に…。」


慧はそういうと業具の説明を読んだ。


「以下、贈った業具の説明をざっくり書いておくぞい。


まず刀の方から、これは『静断せいだん』というA級業具じゃ。


効果は業のブレを抑え、感情が荒れるほど切れ味が落ちるぞい。


ヒントは『怒りでは斬れない』じゃ。


以下に感情を沈め、落ち着いて切るか。これが鍵になるぞい。」


「次は槍の方。


これは『未穿みせん』というB級業具じゃ。


意味は『まだ穿たれていない』という意味じゃ。


効果としては特殊能力は特にないんじゃが、

業臨を起こした瞬間だけ“異常に貫通力が増す”ぞい。


ヒントは『まだ届かない。でも、いつか必ず届く』じゃ。」


「あと慧。たまには手紙を送ってくれてもいいんじゃぞ。

何かあったらすぐ頼りなさい。

――ワシはお主のお父さんじゃ。」


そして手紙の文末には黒瀬の現在の住所がかかれていた。


慧は「たまには…黒瀬さんに手紙送ってやらないとな。」と小さく呟いた。


その時、蒼馬はこの未穿みせんという業具に目を奪われていた。


触れた瞬間だけ業がスッと整う。


更に蒼馬は槍の“まだ届かない”が蒼馬の生き方そのものだと感じた。


「…なんだろう。よくわからないけど。

この未穿という…槍の業具にとても引き寄せられるような…。そんな力を感じます。

…これ俺が使ってもいいですか?」


3人は頷いた。


「いいだろう。俺は刀が折れていて、新しい刀が必要だ。この静断せいだんとやらをもらうぞ。」


そして全員がやっとそれぞれの武器を手に入れた。


禍霊が侵入してこない静かな時間。


蒼馬たちにとってはこれがとても大切な時間だった。


禍霊がいない世界なら、静けさは当たり前なんだろう。

でも禍霊に"当たり前"を奪われた蒼馬たちには、これが宝物だった。


――だからこそこの"静寂"が心にしみるのだ。


「慧さん。今度、黒瀬さんの話。もう少し聞いてみてもいいですか?」


「ああ。いいぞ。とても優しい人だ。蒼馬にも会ってほしい。」


「なあその黒瀬ってやつ俺にお菓子くれるのか!?」


鹿之介の無邪気な言葉に慧は笑った。


「あの人はお前みたいなタイプ好きそうだしな。くれるかもな。」


「まじか!?お菓子ほしいぜぇ!」


束の間の平和、だがそれは突然の災害によって絶たれる。


体育館の外から一際、異様な爆音がした。


「グオーッ!」


その鳴き声は凄まじい威圧だった。全員が震え上がる。空気そのものが悲鳴を上げていた。


「外を確認するぞ!」


「いくで!」


「応!蒼馬も来い!」


禍断隊として戦ってきた3人はある程度、威圧に耐性がある。


だが蒼馬は違う。少し前まで一般人だったからだ。


(クソ…なんて威圧だ…。足が動かない…!でも…!戦うと決めたなら…!)


なんと蒼馬は震えを止めてみせた。


――「はい!いきましょう!」


そして未穿を持って、走った。


「貴様…何者だ…!」


慧が刀に手をかけ、禍霊に声をかける。


――そこにいたのは山のように大きな大きな禍霊だった。


「なんやこれ…デカすぎやろ。」


「デケー!かっけーなぁ!」


「いや鹿之介…関心してる場合ちゃう…。これかなり"本物"やで。」


その禍霊はドラゴンの禍霊。

体育館より大きく、天井に背が擦る。

皮膚は鎧のように重厚で、A級とは比べものにならないほどの業の密度。

蒼馬は近づくだけで息ができない。


(クソ…なんて威圧だ…!近くで見るとなるとその威圧は咆哮の何倍にもなる…!でも…!)


蒼馬は今までの戦いを思い出す。


あの夜、蒼馬は何もできなかった。


「なんだお前!」


「キャーッ!」


両親も右目も奪われる。それでも見ることしかできなかった。


A級禍霊と戦おうとしたら、トラウマで胃の中身が逆流し、慧の足を引っ張った。


教室にカマキリの禍霊が入ってきた時も戦えなかった。


――でも今は違う。蒼馬はこの期間で確実に成長した。


(守るんだ。それだけでいい…!)


刀花は心配し、いいかける。


「蒼馬…お前吐く前に早く――」


しかし蒼馬は叫び、槍を抜く。


「……まだ届かない。

でも——今度こそ届かせる!」


それを見た刀花の口角が上がる。


「成長したやんけ…。ワイらも負けてられんな!」


続くように鹿之介と慧も獲物を抜く。


「蒼馬かっけー!俺もかっこつけさせてもらうぜぇ〜!」


「ここにいるものには手を出させない。さあどこからでもかかってこい。」


そしてここから脅威の禍霊との死闘が始まる。

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