家出
マリア、十六歳。本日、家出を決行しました。
家出といっても、あそこは本当の家ではなかったらしいけど。
外は凍えそうなほど寒い。深夜ともなると一段と気温下がり、手足が悴む。持っている中で一番暖かい服を着ているけど、この寒さにはさすがに厳しい。
こっそり城を抜け出した後、特に行く先を決めていなかったことに気づいた。あの時はショックで出ていくことしか考えられなかったのだ。
持ち物は袋一つ分の金貨だけ。街に出ても自由に使えるわけじゃない。それに、こんな格好でも一応は貴族なので、目立たないようコソコソと行動しなくてはならない。
こんな真夜中だと何処に行っても誰もいない。今のうちに遠くへ移動してしまおうと、街の外れにあるあの森を目指して歩き出した。
森は遠くから見ていたよりもずっと暗くて大きかった。月明かりを頼りに木々の間を歩いていく。
ここら一帯は動物も虫も何もいない。静かでよりいっそう寂しい。音のない静寂が、寂しさをいっそう際立たせていた。
この森を抜けた先に何があるのかはわからない。もしかしたら、抜けられないかもしれない。そんな不安を胸に抱えながら、ゴールの見えない道を進む。
変わり映えのしない景色に飽き飽きしつつも歩き続けているけど、どうやら足はもう限界らしい。その場に、力なく座り込んでしまった。
なんとなく見上げた空には、いつの間にか月が消えていた。
上げた空には、いつの間にか月がいなくなっていた。
「あ゛ー、疲れたぁ」
もうここで死んでしまっても構わない。マリンの言葉を聞いたあの瞬間、マリア・アランの存在は虚構になった。
生きるのすら諦めたい。自分でここまで来たけど、正直しんどい。
別に私がいなくなったところで、本当の家族も居ないんだから、存在が無かったことになるだけだ。
本当の家族ってなんだろう。マリンは妹としてって言ってたけど、よくわからない。よくわからないことを考えると眠くなる。
まあ、いいや。明日起きれなかったらそれまでってことで、
「おやすみ。マリア」




