表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辞訣  作者: 白空


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/12

第6話.不愛

 二人を一緒に外に出して、次の部屋に入る。


 先ほどと同じ、何の変哲もない部屋。

 日常があふれている部屋。ごく普通の部屋。


 今まで道理の順番で回ってゆく。

 まずは主寝室。


 入口からではコンセントが見つからない。どうやら前にサイドテーブルを設置しているようだ。


 間を覗くとコンセントが見える。サイドテーブルを横に退かす。

 足元に紙?サイドテーブル上にあったものではないだろう。


「『第一回更生社会参画支援拒否受理証明』?あぁ、あれか。」


 ──この施設、特にこの棟で生まれた子供に基本的に自由はない。

 大人にも自由はないのだが、単独で生活しているかしていないかで大きく扱いが変わる。


 外出も保護者を通して申請しなければならなかったりと大変だ。

 自分で責任をとれないからと申請も受理されづらい。



 殺人を犯した人から生まれたからって、これは酷だと思う。



 そんななかでほとんど無条件で外出できる()()の選択肢。それの拒否を行っている。

 ──どうやらここも普通の家庭ではないらしい。


 紙をテーブル上に置いて、コンセントに爆弾を刺す。


 リビングにも設置し、ドアの前に移動する。

 先ほどまでのパターンでいえば、この部屋の中に子供がいる。


 ドアを押す──……開かない。この感じは……おそらく前に人がいるだけだ。


「出ておいで~?悪い人じゃないよ~?」

「いやだ。ここから出て行きたくない」


 あれを拒否するくらいなのだ。一回で「はい行きます」とは言わないと分かっている。


「ここ、危険だよ?」

「私、知ってる。外の世界の方が危険なんだって。」


 これはなかなか過激な思考を持っている。


「ほら、でも犯罪だって──」

「犯罪率が低い?なんだそれ。──同調圧力で形作られた治安が安全?あほらしい!薄氷の上に私を投げ出そうとして、なにがしたい!」


 ──彼女だってこちらに害を加えようとしているわけではない。ここで諦めて、巻き込むわけにはいかない。


「少なくともここにいれば確実に死ぬ。」

「死んだほうがましだ。───ねぇ、殺してくれない?」


 別に快楽殺人犯ではないのだ。頼まれても無駄に殺しはしない。


「いやだ。」

「自分だけ頼みごとをして、相手に頼まれても何もしない?自己中心的だね。」


 確かに、自分の中の正しさを人に押し付けている。自己中心的であることは認めるしかない。


「犯罪者軽視で、人権無視が常套化してる。プロパガンダのために犯罪者と、その家族までに利用されている。こんなところに縛り付けられて、一生を終えるだなんていやだ。国のために消費されてる────」

「──ねぇ、それってあなたの持論?」


 彼女の意見には芯を感じない。正しさはある。だが、ほとんど個人を感じない。

 そして唯一個を感じた「縛り付けられて」という一言。……先ほどの紙と合わせると、保護者が一方的にに外に出る機会を奪っているのだろう。そして反社会的な思想を植え付けたのだろう。


「──あれだけ啖呵切って、失敗しました、ハイ終わりって虫が良すぎるんじゃないの?」


 ──へぇ?あの時の事、知ってるんだ。

 うん。でも今は関係ない。


 じゃあ、幻想を見せてまでこの子をこの世界に縛り付けるべきか?

 本当に、それが正しいのか?また、後悔することにならないか?


「………………」

「………………」


 ──やめよう。


「うん、わかった。」


 ────無闇に、希望を与えるのはやめよう。


「世界を、変えてあげる。まだ負けていないってことを証明してあげる。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ