第24話.Re:前知
──たかが一介の中学生の泳力の程度など知れている。潜り始めた地点とほとんど変わらない場所から顔を出す。
こんなこと前から知っていた。警察の本気の前では絶対逃げ切ることはできない。
橋の上からの通告を無視して下流のほうへ進む。この際どちらに逃げるかなんて関係ない。もう捕まったも同然だ。
逃げ続けることに意味がある。他のみんなだって身を挺して警察が来ないように妨害したはずだ。そうでもなければここまで逃げ切ることなどできなかったはずだ。
下流へとどんどん歩みを進める。
警察官は陸を歩いて付いてくる。決して暖かいとは言い難い時期。いや、最悪の場合凍死しかねない気温かもしれない。
すぐさまにでも突入するのは面倒とでも考えているのだろう。
周りの風景が田んぼだけだったところから、そこそこの高さのビルがある場所まで進んできた。
ようやく、と言ったところか。普通に歩いていた警察官が入水した。ずいぶんと焦っている様子だ。……このまま住宅街のほうに行くと世間体的によくないといったところか。想定外の出来事だ。
……どうせなら、体力の限界まで逃げ切って、ぶっ倒れてから捕まりたかった。まだ全力を出せた気がしない。
なにか警察官から声を掛けられているような感じがするが、気にしない、というかもうすでに思考が回っていない。……体温が下がりすぎたかな。
少しだけ歩みを進めるペースを落とす。警察官は反比例するように速度を増す。
──逃避行もここで終わりかな──
なんだかんだ言って楽しかった。
みんなで平和を作って、その平和が乱されて。
頑張って計画立てて。絶対に成功しやしない作戦立てて。
成功しないって分かってても、それでも馬鹿みたいに抵抗して。
大人に統制された自由が嫌いだって理由でここまで大事をしでかした。なんだか誇りに思えてくる。
──いま、捕まったらそんな見てくれの自由すらなくなるのか。
やっぱ無理だ、おとなしく捕まることなんてできない。
──もっと大暴れしてやる。
反転して裏拳を警察官の顔に叩き込む。すかさず二撃目を腹に叩き込む。
ダウンして川に倒れこんだようだが気にしない。周りにまだお仲間がいるんだからそう安々と溺死するはずがない。
手薄になった側の陸地に上がる。衣服が濡れて重いが脱ごうとしている間につかまりそうなので仕方なくそのまま走る。
手足の感覚なんてとっくのとうになくなっている。川に入り続けたからか、走り続けたからかなのかは分からない。
走りながら考えていたことがある。
今回のこの騒動の原因は誰かって。
どんな道筋を立てて考えても最終的には自分が原因となる。
たとえこれが自己満足の全であったとしても関係ない。自分自身のためにしたことがみんなのためになっただけだ。
陸に上がってから捕まるまでは意外と早かった。
川沿いを走り続けても埒が明かないと判断して川沿いの階段をを駆け上ったのが間違いだったのかもしれない。
端的に言えば足が攣った。
階段から飛び出そうとした最後の一蹴りで攣った。
あがいて、踏ん張って、逃げようとする。
その抵抗もむなしく、もうすぐそばまで警察官は来ている。
振り返って臨戦態勢をとる。
すると警察官は腰に手を当てて──銃を取り出した。
……一介の中学生ごときにどれだけ本気になっているのだろうか。




