第21話.Re:費消
担任の葬式に参列する。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。司会の──」
式は厳かに、慎ましく進行していた。このまま最後までそうやって進む、そう思っていた。
「ご遺族様の都合が悪く、参列が別日となりましたのでこの度の代表の挨拶につきましては代理の方にお越しいただきました。」
そう言い切ると、ドアが開かれ、外から入って来たのは──うちの、親だ。
なぜ?どうして?
「本日は、お集まりいただきありがとうございます。」
意味が分からない。今回の葬式がクラスを持っていた担任である、という点を加味しても理解できない。一切の関係性がないというわけではない。担任と、その一児童の親。
ただ、それだけの関係性のはずである。代表の挨拶の代理?
わざわざ代わりに挨拶をしなければならない?欠席でと説明して、友人とでも紹介すればよかったのではないか?
かなり、警戒してしまう。場違いかもしれない、過剰かもしれない。でも、少しだけ不穏な雰囲気を感じる。
こっちに来い、と目配せしてくる。嫌な予感しかしない。恩は感じていないにしても、一応葬式は葬式なんだ。平穏に終わりたい。
仕方がないので応じることにする。できるだけ音をたてないように、近づく。
「──今回の、死が、私たちの子供の手によって引き起こされたことを謝罪いたします。」
首根っこを引っ張られて、中央あたりに引っ張られて行く。
──本来あるはずの遺体もない。
あぁ、そういうことだったのか、元から葬式なんてしていない。
無理やり頭を下げさせられる。
「「大変、申し訳ございませんでした。」」
本当に捜査してこの結果が出たとは思えない。でっち上げて、信頼を瓦解させようとでもしているのだろうか。
……あぁ、効果は顕著だろう。殺人を犯した、それだけで、その事実だけで怖いという事は容易に想像できる。
どこまで執着しているのだろうか?たった一つの、ちっぽけで、吹けば飛ぶような存在の始末に。
どれだけの時間と労力を消費してでも消すという意思が伝わってくる。
そのあとのことなんてほとんど覚えていない。わけもわからないまま式が進んで、いつの間にか帰されて。ずっとあたまのなかがぐるぐるしている。
親に連れられ、家に帰り、何も考えられずにただ本能的に家の中をうろちょろする。
電気を消し、布団の中に潜り込む。周りの情報が一気に減り、不安感だけが残る。
どんどん不安だけが増幅して行く。
もしも、明日学校に行ってみんなから拒絶されたら?……いや、学校に行けば、受け入れられないことは目に見えている、か。殺人犯に恐怖を抱かない人などいないだろう。
拒絶されたとして、これからクラスがバラバラになるまでの数日間、耐えられるか?
学校に行かない……?……意外といい案かもしれない。最適解は逃げることかもしれない。
だって自分は悪くない。どうして、気に病む必要があるのだろうか?
でも、あの温かい空間を手放す覚悟もできない。
八方塞がりだ。
頭の中がぐるぐるして、考え続けて。いつの間にか眠っていて。
結局、次の日の朝、クラスのドアの前で立ち尽くしていた。
「そんなところに突っ立ってたら邪魔だよ?」
親友が後ろから、無理やり押し込んでくる。まだ、心の準備は出来ていないというのに。
とっさにみんなから目を逸らすために踵を返そうとする、がいつの間にかドアが閉められている。
あのバカなら手前側だけを持っただけで完全に閉じ込めたとでも勘違いしているだろう。
どんな心情であそこに立っていたかも理解せずに無理やり押し込みやがって。ちょっとくらい手が挟まれて痛い目を見てもしかたがないだろう。
右を向いたそこには幼馴染がいた。
「えぇ、ねぇ、たったそれだけのことで信頼を失うとでも思った?」
「それだけって、どれだけの事なのかわかってるの!?」
「……珍しく、動揺してるね。初めて見たよ、そんな姿。でもね、信用してないんだよ。」
ほら、やっぱり。そうだよ、だって殺人犯だよ?
「殺人を犯しただなんて考えられない。このクラスを作るため、何でもしてるように見えたけど、何でもしてるわけじゃなかった。」
周りを見渡す。意外にも、誰も気にせず日常を暮らしている。
心配するでもなく、いつも通りの生活。でも、これがこのクラスなんだ。やっぱり、
「絶対に殺人なんて犯さない。それくらい、分かってるよ?」




