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辞訣  作者: 白空


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20/21

第20話.Re:一髪

「作戦を開始する。」


 作戦、と言えども、確実性のある作戦など用意できているはずがない。事前に用意した気休めのシナリオ。役立たずのハリボテだなんてみんな分かっている。分かったうえでこんな無茶をしている。


 事前に開けておいたフェンスの穴をくぐって学校の敷地に侵入する。一般生徒を巻き込まないために、早朝……ほとんど深夜の時間帯に作戦を実行する。


 事前に開けておいた窓から侵入する。学校を閉める前に気づかれたとしても問題はない。叩き割って入ればいい話なのだ。


 そして自分たちのクラスへ進む。事前に計画しておいた通りにバリケードを組む。

 他クラスの机も、中身を全部ひっくり返して使う。置き勉禁止なので中にある方が悪い。不法侵入のほうがもっと悪いが。


 みんなが準備をしている間に、屋上の途中の踊り場から身を乗り出してスピーカーの線を切る。事前に作成しておいた機器を取り付けて、元に戻す。これで無線で大音量の拡声装置を手に入れられた。



 生徒が登校可能になる時間の3時間前に、すべての準備を終える。


 警察に学校内に不審者がいる、という旨を報告する。それと同時に新聞、テレビ局各社にも通報する。

 別に信用はしていないが利用しない訳ではない。


 そしてライブ配信を始める。……一応、アカウントを盗難した設定の下こうやって配信を行っているので、機材は自前のものとなる。高くはついた、が後悔はしていない。


「配信、繋がってる?」


 カメラを地面に向けて黒い画面だけを配信する。音声から、繋がっていることを確認する。

 配信用機材として買ったノートパソコンをクラスメイトに渡す。


 ……配信の存在は知っていた。しかしながらテレビで知っただけの付け焼刃の知識であった。

 その際に関連する法も紹介されていた。日本政府が申請を受理しなければ配信をするためのアカウントを取得できない等、その時は「面倒だなぁ」程度に考えていた。

 ここまでの面倒を強いられるとは思ってもみなかったが。


 それでも、インターネットに精通していなくても、革新的だと思うほどにこのシステムはよくできていたのだ。


 彼──自称インターネットの恋人──は迷いなくマウスを動かしてゆく。

 彼によると盛大なサムネ詐欺……というものを行うらしい。サムネ情報は配信中は更新されないというバグ的な仕様を利用しているらしい。それで、URLのジャンプ先がバグったという言い訳でどうにかするらしい。アカウントBANを回避するにはこれ以外の方法はない、と若干興奮した様子で早口で語っていた。何を言っているかはよくわからなかった。


 まぁ、ちゃんと配信出来ていれば問題はない。

 全ての準備が整ったという合図を受け取る。唯一彼から頼まれたこと。


 ────全員の心を惹く言葉を端的に発しろ、と。


「さぁ、革命戦争を。今、始めようじゃないか。」


 それに続けて、スピーカーを付ける。校庭には警察車両が数台ある──数台しかない。いたずら通報だとでも思っているのだろうか。


「要求を述べる。クラスの解散を停止しろ。」


 これは、今回主張するたった一つの要求だ。

 次は世論を取り込むための演説をする。


「今の社会は間違っている。全員、自由という言葉を知らないのでは?と思う。」


 最初は煽る。煽って、感情を単純な方向へ誘導する。


「本当の自由を見せてあげる。」


 これは、虚言かもしれない。


「まず、一つ目の自由。警察、ひいては日本政府はこの配信を止められない。……これって何だと思う?」


 そう言いながら花火玉を取り出す。


「そう、これは花火。でも、少し改造したの。……これをここから校庭に投げれば死傷者がでる。」


 これは警察や政府に対する脅しだ。


「ほら、これで言論の自由だ。誰にもこの主張は止められない。でも、本来ならばこんなことをしなくてもいいはずなんだよ。」


 ここからは、理想論になる。


「誰でも主張できる社会。そういう自由を創る。……これは目標。絶対に達成してやる。」













 結果は、惨敗だった。そりゃあそうだ。警察に対して数時間校舎内に立てこもれただけでも十分なのだ。まさか機動隊が投入されるとは思わなかったが。


 子供のおふざけごときに本気を出しすぎでは、と苦言を呈したい。


 とりあえずは家に帰された。謹慎だけで終わればよいのだが、最悪実刑を受ける可能性もある、か。



 意外にも、その次の日は普通に登校させられた。

 H(ホーム)R(ルーム)の時間にでも小言……いや、お叱りでも受けるのではないのだろうか。と、そう思っていた。


 いくら待っても担任は来なかった。

 待ち続けてようやく入ってきたのは校長だった。


「──えー、あなた方の担任の殺害が確認された。明日、行われる葬式に参列すること。」

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