第18話.Re:美言
慕え、と言われても、普通に考えれば普段の行動を見て決めることだ。
さすがに、それを言った本人に言い返そうとは思わない。少しは反省しているのだ。
絶対に面倒事だ。確実に面倒事だ。考えなくても勘で大体わかる。
紹介だけして教室から出ていく教師。それに一切困惑していない転校生……あ、いろいろ考えすぎて、名前聞き逃した……。兎も角、普通の学校じゃああり得ない。そもそも真の転校生ならば全校集会で紹介されて然るべきだ。
「やぁみんな。その腐った根性を矯正しに来た。」
……転校生よ。そんなキャラでいいのか?
そしてその口ぶりだと、自分から自分が回し者であると公表しているようなものだ。
「ねぇ、どうする?」
「どうする、って言われても……どうも動きようがないね……」
あまりにも痛い性格ではあるが、今のうちはスルーしておいてやろう。
「おいそこ!うるさいぞ!いま話しているところだと分からんのか!」
急に大きな声を出して注意をするな、と言いたい。気が弱い子だっているんだから。
「うるさいね。首、締めたほうがいいかな?」
「……そうだね。」
ちょっと、血の気が多い気がする。否定はしないが。
埒が明かないことを察して、さっさと自習を始める。
「おいそこ!話してる途中だぞ!何をしている!」
「うっわ。めんどいね。」
……はぁ……。
転校生君はどうにかして統制を取ろうとし続けた。最初の方は声を張り上げて。その次は、黒板に書いて。しかしながら、誰の心にも響かなかった。
転校生は、全員を一気に説得するのを諦めた。その代わりに、個人一人一人に話しかけていった。かろうじて無視はされていなかったが、ほとんど相手にされていなかった。
放課後には、ただ窓際で黄昏ている現実に疲れた少年となっていた。
そして次の日から来なくなった。あんなことを豪語するならせめて卒業までいてほしかった。
例えずっといたとして、どれだけ説得を頑張ったとしても変わることはなかっただろうが。
転校生がいない日々はとても平和だった。
「ねぇ、面子しない?」
「また不思議なものを持ってきたねぇ。」
面子なんて空想上のものだと思っていた。どちらにせよやらないが。
「さすがに打ち付けた時の音が大きすぎるんじゃない?」
「えぇ~そう?そうかぁ。仕方ないなぁ。」
そう言って彼女は机の中に面子をしまい込む。
……誰も転校生についての話題をあげない。……当然か……。
転校生が入ってきてから一か月、また同じように教師が転校生を連れて入ってきた。
「……教師の間でいじめが起きたことが確認できた。もうじき──2週間後にはこのクラスは解体され、各生徒は地方に飛ばされることになった。覚悟しておくように。」
「ちょっと待ってくださ──」
「黙れ!決まったことに口を出すな!」
……いや、そもそも教師が授業に来ていないのに、どうして断定した?
なぜ予告なしにそこまでの強硬手段に出た?言いたいことは山々だ。
「入試は地方の適当なところをそれぞれ受けてもらう。異議を唱えても無駄であるという事を、覚えておくように。」




