第16話.Re:潰走
──あぁ、もう終わったんだ。なんだか、数週間かけた作戦も、こうも一瞬で終わられると後味が悪い。
警察車両は意外にもスムーズに進む。先ほどまでとは異様なほどに対照的だ。あれほどまでに威圧的だった回転灯は、ただの飾りとなった。
今、回転灯は、ただの飾りである。
本来なら緊急走行の時の目印となるべき回転灯が、光るだけのものとなっているのだ。
周りには、野次馬どころか、この事件を知らない一般人すらいない、ということだ。
記者も、一般人も、野次馬も。全てがいない東京を、日本の一大都市をパトカーが一台だけ走っている。
たまたま、スクランブル交差点を通りかかる。
そこにある大型ビジョンにはニュースが流れていた。
『──ただいま 海外勢力によるテロ行為の 情報が入りましたため 臨時ニュースへ──』
どうやら、政府は隠し通すのではなく、事実を捻じ曲げ、誤認させることによってこの場を乗り切ろうとしたらしい。
馬鹿らしい。臨時ニュースだってのに字幕がついている。なぜここまで国民は盲目なのだろうか?国営メディアならなんでも信じられるとでも言うのだろうか?
『──子供を利用した 手段を問わない侵略行為──』
『──政府は 各国との連携を強化し 当該国家に対し強硬な姿勢で──』
……なんともアホらしい茶番だ。
車内に目線を移す。
運転席と後部座席の間は格子で隔たれている。
でも、声が通らないわけじゃない。
「あんな報道をして、民意はあなた方に付くと思っているんですか?」
運転席にいる警官も、助手席の警官も意に留めていないように見える。……痺れを切らして、もう一度口を開こうとする。すると、助手席側の警官が答える。
「君たちが思っているよりも人間は感情で動いていない。」
まるで感情的で何も考えずに動いた馬鹿を、宥めようとしている風にしか思えない口ぶりだ。そこまで感情的だけに身を任せて動いたつもりはない。
「今やほとんどの大企業が国営化された現代で、感情論なんて通用しない。感情で人を動かしたら社会の崩壊に繋がる。だから政府は国民に絶対的な幻想の悪を作り──」
これ以上話を聞いていても無駄だ。頭がおかしくなりそうだ。
やっぱり、この世界は間違っている。
でも、分かってるんだ。もう遅いんだって、もう無理なんだって。
夢見た世界は広かった。でも現実は残酷だね。
広くなりすぎた理想は、嘘によって簡単に霧散してしてしまう──いや、もうしてしまったか。
自由を求めたら、制限しか残らなかった。なんとも馬鹿らしいことだ。
あぁ、もうこんな世界からは消え去ってしまいたい。ひどく歪んで矯正された世界なんて見ていられない。あぁ、あの頃の、もっと楽しかった頃を────




