第14話.感傷
部屋を出て、一息つく。
もらった銃を仕舞い、次の部屋へと進む。
ドアを開けると比較的綺麗な状態のリビングがあった。
戦った形跡もなく、この階では一番平和なのではないだろうか。
ただ、最初の部屋とまではいわないが、生活感は薄い。物が少ないからだろうか。
他の部屋よりも楽に爆弾の設置ができる。退けなければならない物がないと、時間がかからなくて済む。
寝室のドアを開けると、そこは極彩色に彩られていた。
いつももこの位置の部屋は寝室に使われていたから、てっきり寝室であると考えていた。
どうやらここの住人は趣味部屋として利用していたようだ。
そこら中に貼られたたくさんの絵から、大量の「好き」を感じる。
オリジナルキャラから、国民的アニメのキャラ、電子の歌姫、ご当地キャラまで様々な絵がある。そのすべてが、丁寧に書き込まれている。
緻密で、綺麗で、繊細な色使い。天性の才能があるとしか思えない。
──本当に、吹き飛ばすのがもったいないや。
一つ一つ集めて、風化するまで見て、それからようやく手放したいくらいだ。
……そんなことを言ってもどうしようもない。しかも、自分が決めたことなのだから、受け入れるしかない、か。
仕方なく、作業机の下に潜り込んで、コンセントを探す。
……どうやら、コンセントは一枚の大きな画用紙によって隠されていたようだ。……コンセントが紙で隠されている……デジャヴを感じる。
紙を取り出したところ、ただ単にコンセントを隠すためだけの紙ではない、ということがわかった。サイズはおそらくA1だ。
中央には数十人の少年少女の姿、まわりには数人ずつまとめて個別での絵がある。
三角定規を持って子供のように走る姿、学校用の机の裏に隠れて後ろを伺う姿、チョークを投げる姿。どの絵にも一つは学校関係の絵がある。そして少し物騒だ、
これらの光景には見覚えがある。
なぜならば、この中の「学校の屋上からメガホンで下の人に呼び掛ける絵」のモデルが自分である確証がある。……想像よりもたくさん、ここの住人はこの出来事について知っているらしい。
ただ、この絵はおそらく未完成なのだろう。
色も塗られておらず、線も一か所に何本も引かれているような状態だ。
……この絵の完成を見たかった、そういう気持ちもある。この絵が完成しなかった理由がただ単にここに来た時期が悪かった。それならいいのだが、もしも「中途半端に期待させてしまったから放棄した」、だったら耐えられなくなる。
再三にはなるが、期待しないでほしい。今回は一人なのだから。
──でも、今回は……いや、今回も希望を持ってほしい。
絶対に成功させる。この覚悟は今でも変わらないから。




