第1話.蜂起
裏話(?)はTwitter(現X)にて「@shirazora_work」で!
『政府直営「改心・更生プログラム」用施設』、俗称『犯罪者収容施設』でのお話。
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テレビに映し出された光景を見ながらため息をつく。映し出されているのは今まさに自分が住んでいる団地を上空から映した映像。しかしながら、その様子はいつもとは全く異なる。
──別に上空からこの建物を見たことはないのだが、少なくとも現代日本で見ていい光景ではない。
重火器を持った暴徒による建物の占拠。
大きな爆発音とともにテレビが暗転する。どれだけチャンネルを変えども「受信できません。アンテナの設定や接続をご確認ください。」と映るのみである。……どうやらパラボラアンテナが爆破されたらしい。
使い物にならなくなったテレビの電源を切り、窓の外に離れゆくヘリを見つめる。
屋上に銃口──それも長物のごついやつ──と人影を見つける。目の前にある転落防止用と銘打った柵がこちらを隠せているとは思えないし、ましてや銃弾を防げるかどうかなんて考えないほうが良い。無駄に強度だけがあってスカスカすぎる。窓際の電球の取り換えの際にはお世話になったが。
外からの視覚に身を隠しつつ、今後の動きを考える。何も考えずに動けば、殺される。ここで向こうからのアプローチを待っていたとしても、暴徒の手中に落ちて破壊活動に勤しむことになるだろう。
外に逃れようにも暴徒として国家権力にまた殺されるだろう。
「暴徒と見分けがつかかった」「危険が外部に及ぶ可能性があった」とか言って。
……やはり、保護されるのは癪だ。
単騎での制圧は不可能だろう。この狂った作戦────命を賭けた作戦に付き合う奴はいないだろう。誰かがやりたいと言えども許しはしないが。この片道切符は誰にも渡さない。
……相手は武装をしている。考えるよりも先に武器を持つべきだ。もう犯罪には手を染めないだなんて言ってられない。
通常の、正規のルートで手に入れられるのは包丁が限界だ。当然だが包丁程度で太刀打ちできる人数ではないだろう。一対一であるならば勝機はあるかもしれないが、複数人に乱射されてしまえばいずれ確実に詰みが来る。
……はぁ。遂にこの時が来た、といえばよいのか。やっと、この時が来た、と喜べばよいのだろうか。




