不死身の女
なろう系です
私はもう死なない。
それに気がついたのはかなり前だ。
気がついたらとても高いところにいて、そのまま頭から落っこちた。
ぎゅっとつぶった目からは涙が止まらなかった。
着地する前にショックで気絶して、目が覚めたら地面に転がってた。死んでいなかったのだ。
考えるに、私は「もといた世界に酷似した異世界」に飛ばされたのだろう。
そうとしか思えなかった。
なろう系の世界線で「不死身の能力」を入手したとしか思えないような強靭な肉体だ。
当たりの能力を授かった。つまり無双状態。しかしそれは一般論だ。私にとってその能力はただの足枷だった。
私はもう死にたいのだ。
転移前、私は自殺未遂をした。すぐに目の前が真っ白になって、気づいたら今の世界にいた次第だ。正直それ以外の記憶はあまりない。
「死にたい」と思う気持ちは大切にしたい。今も転生前も変わらない唯一のものだから。
そう思って今日まで色々試してみた。
火だるまになってみたり、呼吸もせず何時間も水に沈んでみたり。活火山の頂点からマグマにダイブしてみたり、吹雪のなか雪に潜ってみたり。
しかしどれも結果は惨敗。
虚しかった。
今日は初心に帰ろうと思う。つまり首吊りだ。
なんとなく見慣れたアパートの角部屋に入ってみる。ここが空き部屋であることは知っている。
リビングには垂れ下がる紐があった。
近くに転がってた椅子を立ててそこによじ登り輪っかに首を通そうとした。
その時だった。
ガチャンと鍵を開ける大きな音がした。
ギョッとして振り返るとスーツ姿の男が部屋に入ってきた。
その男と目が合ったが彼は何も言わなかった。
その後ろから和服姿の男が入ってきた。
私は驚きでクラクラした。同時に自分の死期らしいものを感じた。それに気づいた私は高揚した。
和服男と目が合った。彼は「地縛霊か」と苦しそうに笑って、念仏を唱え始めた。
私はがっかりした。おまじないなんかじゃ私は死なない。
もういいや。この男たちは無視しよう。私はまた縄と向き合った。
縄をつかんだ。首元に引き寄せる。
――引き寄せただけなのに
薄れゆく意識の中で私は思った。
「あれ、私って、」
――目の前が真っ白になった。
「生きてたんだっけ....?」
なろう系(?)です
霊は死んだ場所に戻ってくるものなんですかね