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9悪 泣く子も黙る悪の種

「お前達、俺にそんなこと言ったところで意味は無い。本当に素晴らしいと思っているなら、他の者たちに言ってこい。ノルマは最低3人だ。勿論、それ以上に俺の素晴らしさを伝えてもいい。……さぁ。行け。俺に素晴らしいと伝える時間があるなら、1人でも多く他の者に俺の素晴らしさを伝えるのだ!!」


「え?あ、あの?」

「アーク様?」


俺の言葉に困惑する子息達。物わかりの悪いガキ共だな。

だが、俺は寛大だ。もう1度言ってやろう。


「他の者に俺の素晴らしさを伝えてこい。さっさと行け」


「は、はい!」

「わ、分かりましたぁ!」


やっと理解しだした者が動き出した。その後を追って、他の者も動き始める。数秒もせずに俺の周りからは取り巻きが消えたな。

……これはこれで寂しい気がする。

が、まあ良いだろう。折角時間ができたんだ、少し皇帝の城というのを拝んでやるとしよう。将来悪である俺の城を建てることがあるかもしれないからな。その時の参考にさせてもらおうではないか。


「……え?」

「……今のって、どこかの貴族の子息様だよね?」

「なんでこんなところに」


会場を出て散策していると、すれ違う使用人達が目を丸くしていた。が知ったことではない。

俺は堂々と歩き、進んでいく。少しもこそっと抜け出してきましたみたいな雰囲気を出してはならない。そんなことを感じ取られたら、確実に連れ戻されるからな。俺はこの城を観察したいのだ。

なんて思いながら探索していると、少し声が聞こえてくる。


「……ぁ。ひぐっ!」


すすり泣くような声だな。少し気になるぞ。

俺は声の聞こえた方向に移動していく。そして見えてくるのは、沢山の植物。おそらく庭園なのだろうと思われる場所に出た。綺麗な植物がいくつもあるぞ。

だからこそ、


「泣くな。こんな綺麗な場所に、涙はふさわしくない」


「ひぐっ!ぁぅ…………ほぇ?」


俺はすすり泣く1人の幼女に話しかける。庭園の端の方に座り込んでいた幼女は顔を上げ、俺を見て目を丸くする。俺に話しかけられることは予想外だったというのが分かる表情だったな。

この場所に来る人間が少ないのか、それともこの幼女へ話しかける者が少ないのか。どちらかは分からないが、


「泣き止め。折角綺麗な場所を見つけたというのに、それでは俺が楽しめないではないか」


「あ、あぅ。ご、ごめんなさい?」


首をかしげながら謝る幼女。少し俺より身長が高いので、4歳くらいではないかと思われるな。そんな幼女は俺を見て涙が収まってきたようなので、ハンカチで目元を拭いてやる。

するとその幼女の顔が分かるようになってくるが、


「ふむ。悪くない顔立ちをしているな」


「え?あ、あの。ええと……」


俺の言葉に、幼女は困惑している。先程の俺の言葉とは違って、今度は褒められたのは分かったのだろう。だからこそ、俺がどうしたいのか測りかねているんだろうな。


「とりあえず泣き止んだな。……で?お前、どうしてこんなところで泣いていた?」


俺は幼女の気持ちなどお構いなく、早速事情を尋ねる。俺の圧でもう逆らうことは難しいのか、幼女は少し怯えた様子を見せながらも、


「私、殴られたの。あと、私なんていらないって言われて、ジュースをかけられて……」


事情を説明していく。

どうやら、この幼女は誰かにいじめられていたようだな。随分と愚かなことをする者もいたものだ。そんなことをしたところで、敵を増やすだけだろうに。悪には必要の無い存在だな。


「そうか。で、それをやってきたのは?」


将来俺が悪として活動するとき、必要の無い存在だからな。名前は知っておいた方が良いだろう。きっと名前も知らない小者だろうし、ここで聞いておかないと分からないはずだ。と、思ったのだが、


「エレクスって言ってた」


「……やつか」


俺はそれだけ言って、頭を抑える。できるだけ、やれやれといった雰囲気を出すようにしてな。

だが、そんな俺の心の中は荒ぶっていた。聞き覚えがあるのだ。と言うか、十中八九俺が知っている存在なのだ。その、エレクスとか言うヤツ。

なんとエレクス君。女性主人公でゲームを行なう場合の攻略対象の1人だ。ゲームの中では国のことを第1に考えて、他人を攻撃するなどということに意味は無いといった雰囲気だったんだが。ゲームの中では、な。

確かエレクスは。


「宰相の息子、だったか」


「っ!そ、そんなことも、言ってた、気がする」


言葉を途切れさせながらも、幼女は俺の言葉に頷く。それなら俺の知ってる攻略対象で確定だろうな。あいつは何をやっているんだか。

あまりにも魅力的な人間からかけ離れたことしてるぞ。過去に何かあるキャラにするにしても、攻略対象としてさすがにそれはどうなんだ?

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