8悪 パーティーって魔窟
今日と明日は2話投稿予定です(予定は未定)
「え?ご飯ですか?……どうぞ」
なんて言って俺に差し出され、俺も空腹を満たそうとしたのだが、
「んっ///あっ//」
残念ながらこのメイド、母乳は出なかった。だから一通りやって交代させてやることに。その後は普通に普段からご飯を提供してくれている者が出てきたからそれで解決。
ふぅ~。お腹いっぱいになったら眠くなってきたぜぇ~……おやすみ~。
「……ぁぅ~」
なんていう。自由奔放な幼少期。いや、乳児期か?とりあえずそんな感じの期間を過ごした。その後は普通に立って歩くこともできるようになり、簡単な会話ならできるように。
「おはよう諸君!」
「「「「おはようございます。アーク様」」」」
そして現在3歳。俺は偉そうに胸を張りながら、使用人達が頭を下げる中を歩いて行く。そして、
「おはよう。アーク」
「アークちゃん。おはよぉ~」
移動した先には、クララとスネールが。いつもなら俺が起きた頃にはスネールは仕事に行っているのだが、今日は違う。
「うむ。おはよう」
俺は偉そうに挨拶をして席に着く。
悪だし、これくらい偉そうでも良いだろう?最初の頃は2人とも俺のしゃべり方に首をかしげていたが、最近は慣れてきたのか全く気にした様子はない。
「今日の予定は覚えてるか?」
「ああ。覚えているぞ?パーティーだろう?」
「そうよぉ~。よく覚えてるわねぇ。アークちゃん偉いわぁ」
今日はパーティーだ。パーティーと言えば、貴族達が笑顔で噛みつき合い、利益をむさぼるところ!俺たち貴族にとって非常に大事なところだ。悪である俺としても、ここは非常に大事な場面。
なんと言ったって、取り巻きや婚約者も作るところなのだからな。悪には取り巻きも、可愛い婚約者も必要だ。勿論ハーレムを作る予定ではあるが、全員愛していくつもりだ。最初の婚約者選びから、真剣にやらなければ。
と、意気込みながら朝食を取り、馬車に乗せられる。パーティーと言えば夜のイメージだが、今日は俺のような子供も多く参加するので昼かららしい。
「まずは、ワール公爵家の派閥の貴族達が挨拶するから、それを1人1人聞いていくんだよ」
「分かった」
スネールの言葉に俺は頷く。上の立場の者に自分から頭を下げに行く。当然のことではあるよな。だが、この者達は非常に大切にしなければならないと言うことも俺は知っている。
現在、俺のいるワール家の派閥は、かなり出遅れている。
何に出遅れているのかと言えば、王位継承戦だ。ゲームでも大事な要素だったのだが、俺にも王位継承戦というものは大きく関わってくる。
王位継承戦と言うからには次の王の話なのだが、現在の有力な候補は3人。第1皇子と第2皇子、そして第5皇女だ。そして、それぞれバックには大きな力を持った貴族達がいる。俺たちの派閥も誰かを支持できれば良かったのだが、全員先にとられてしまったのだそうだ。
「派閥の者たちがいるから、誰かに頭を下げて支持に回らせてもらうこともできないし。……難しい状況だ」
よくこう言って、スネールは悩んでいる。派閥の長って大変だよな。気持ちは分かるぞ。俺も悪として、部下を沢山持つ予定だからな。今からその手腕を学ばせてもらうとしよう。
そうして俺とスネールが考えていると、馬車は会場に到着。俺たちは降りて、本番へ挑むことになる。
会場になっているのは城、それもこの国の皇帝が済む城だ。会場へ入ると早速始まるのは、
「おぉ!こちらがアーク様ですか!初めましてアーク様。私は子爵のタイゲール・ラントススと申します。そしてこちらが、息子のハイリです」
「初めましてアーク様。私はハイリ・ラントススと申します。以後お見知りおきを」
「アーク様!初めまして!私は……」
「アーク様!……」
挨拶地獄だ。こうして激しい熱量で挨拶してくる貴族やその子息達に、
「うむ。俺はアーク・ワールだ。よろしく頼む」
と、挨拶していくのだ。3歳児がこんな挨拶をしても威厳は感じないと思うのだが。
「おぉ!なんとシッカリしたお姿!」
「ワール家は安泰ですな!」
「アーク様の将来が楽しみですな。ワハハハッ!」
全員頑張っておべっかを使ってくる。流石に上司の息子を鼻で笑ったりできないよな。こいつらには俺に困らされる部下として今後とも頑張って欲しい。
挨拶はそのあと1時間ほど続いた。落ち目な派閥の割には数が多いな。これがもし大きな派閥だったら、どれだけ挨拶は長くなっていたことなのやら。他に集まっている者たちを見る限り、2時間くらい余裕でいきそうな列になってるところもあるな。
だが、1時間経てば俺たちの所は終わり、俺の周りには、
「アーク様!立派なお姿です!」
「アーク様!素晴らしいです!さすがは次期公爵!」
「次期公爵にふさわしいお方ですね!」
「さすがは……」
ひたすらよいしょされていた。俺としてはつまらなくてやめて欲しいのだが、助けを求めようにもスネールも同じように囲まれている。俺を囲んでいるのは、スネールを囲んでいる貴族達の子息だな。流石に俺を囲む現役の貴族はいない。
……ふむ。だが、これなら、俺が言うことにこいつらは従うかもしれないな。大人がいない中で1番偉いのは俺だし。
「お前達、俺にそんなこと言ったところで意味は無い。本当に素晴らしいと思っているなら、他の者たちに言ってこい。ノルマは最低3人だ。勿論、それ以上に俺の素晴らしさを伝えてもいい。……さぁ。行け。俺に素晴らしいと伝える時間があるなら、1人でも多く他の者に俺の素晴らしさを伝えるのだ!!」