41悪 この度は不肖の息子が
「いやぁ。最近よく来る手紙に筆跡が似ていてな。もしかしたらと思ったんだが……まあ、そんなことは無いよな」
「あ、ああああああ、辺り前だろ!俺が馬鹿にするような手紙を書くわけないだろ!!」
「「「「…………」」」」
アーツイの言葉で、周りの貴族たちが絶句する。アーツイがそんな手紙を書いていたというのが知られてしまったのだ。
だが、まだだ。本人は気付いていないようだし、まだそれを伝えるときではない。
「だよな。友達もそんなことはやってないよな?」
「な、なななな、何言ってるんだ!エレクスに頼まれて皆で書いてるわけないだろ!」
ほぉ~。事の発端はエレクスだったか。まさかあいつがそんな浅い考えで行動を起こすとは。
……いや、あいつ自身はボロを出さないから、そこまで浅い考えでもないんだがな。普通は筆跡とかでバレるとは考えないし。
「へぇ~。エレクスと仲が良いのか。他には誰と仲が良いんだ?」
「ん?他には……」
友人の名前がぽろぽろと出てくる。因みに、全員女主人公の攻略対象だった。お前らもうこの時点で知り合いなのかよ。
……というか、その中には一応敵対派閥の者も含まれてるんだけどな。ガッツ公爵家の派閥の数名は頭を抱えてるぞ。
「どれくらいの頻度で会うんだ?」
「そりゃあ毎日ではないけど、よく会うぞ!……って!これ秘密にしとかなきゃいけないんだった!!」
今気付いた、みたいに慌てるアーツイ。向こうで様子を見ていたガッツ公爵は頭を抑えてるな。そろそろ公爵の手下が止めに入ってきそうだし、フィニッシュに行くとするか。
「……で?俺は一言も迷惑な手紙が送られてきているとは言ってないんだが、アーツイ殿はなぜそれを知っている?」
「……へ?」
俺の言葉に、アーツイの表情が固まる。それからだんだんと顔は青くなっていき、
「だ、だましたな!俺たちがあの手紙を書いてるって知ってたんだろ!」
「はははっ。さっき言ってたお友達と一緒に書いてることを、か?」
「そうだよ!皆で集まって手紙書いてるの知ってたんだろ!」
「ん~。どうだろうな?」
俺は適当にはぐらかし、笑う。
こいつ勝手に墓穴を掘っていくな。流石は幼児な上に将来は脳筋となる存在。隠し事はできないじゃないか。
「だが、やったのはそれだけじゃないんだろう?」
「っ!?そ、それしかやってねぇよ!エレクスは暗殺者送るって言ってたけど、俺は何もやってない!!俺はちゃんと止めた!!」
勝手に友人の罪を暴露しやがったぞ、こいつ。エレクスを含め、ここに居ない攻略対象達の首も絞まっていってるな。場合によってはどこかの派閥が潰れるかもしれないぞ。
「暗殺を止めたのはアーツイ殿だけなのか?」
「い、いや、俺だけじゃなくて……」
それから更に追求していく。結局友人達の内情を大量に漏らしてしまい、使用人に回収されるまでその暴露は続いた。
……いやぁ~。実に素晴らしい成果が得られたな。ここに居る多くの貴族がその話を聞いたし、公爵や宰相も言い逃れはできないだろう。
「ア、アーク。ひどいことされてたの!?大丈夫だった!?」
アーツイが回収された後、よく分かっていなかったイヤミーがそんなことを尋ねてくる。特に俺は傷ついていないんだがな。
とはいえ、ここで素直にそういうのも面白くない。ここは更にあいつらを追い詰めるため、
「特に命に別状はないぞ。ただ、脅迫文が送られてきたりもしたな」
「っ!大変だったねぇ!!」
イヤミーは俺が傷ついていると思ったらしく、抱きついて頭を撫でてくる。その様子を見てシンユーは少し呆れたような顔をしていたが、すぐにらやましそうな顔になって俺に近づき、頭を撫でてきた。
幼女2人に撫でられる俺。折角上手くあいつを陥れたのに、全くかっこよくないな。実にしまらない。
「……まあ、結果は変わらないか」
例え俺が格好良くなくても、貴族たちの動きは変わらない。すぐに俺へ手紙を送っていたとされる子供がいる派閥の数は減り、そこから俺たちの派閥へ移る者が続出した。
さらに後日、
「「「「大変申し訳なかった」」」」
宰相や数名の公爵が俺へ頭を下げるという珍事も発生。これによって更にその派閥の影響力は低下したな。因みに俺へ直接的に迷惑を掛けた子供達は、
「ふぬぬぬっ!」
「おのれぇぇぇ!!!!」
「俺は悪くないぃぃぃ!!!!」
かなり騒いでいて、反抗的だった。
だが、それを公爵や宰相が掴んで無理矢理頭を下げさせている。実に屈辱だろう。公爵としてもこの反抗的な態度で更に頭が痛くなっているはずだ。
だからこそ俺は、更に頭を痛めさせてやる。
「いえいえ。公爵方や宰相に頭を下げて頂けるならこちらとしても問題はありませんよ。各家がこの事案を引き起こした方々をどのように更生させるのか、楽しみにしておきますね。……なにせ、次期公爵の方々が多いんですから」
「昨日のことは昨日のこと。今日の俺には関係ねぇ」
次回最終回
「エレクス、〇す」
デュ〇ルスタンバイ!(大嘘)




