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40悪 敵地偵察?

「そろそろこの迷惑な手紙を送ってくるやつを特定して処分したいところではあるな」


書類仕事をしながら、俺は呟く。


「おぉ~。ついに動くのニャ?」


「犯人の目星は付いているのですか?」


俺の呟きを聞いたネトが目を輝かせ、部下が質問をしてくる。部下の質問はともかくとして、なぜネトは目を輝かせているのだろうか。


「敵の拠点を制圧して、ボーナスをもらうのニャ!きっと手紙に高い紙を使えるくらいだから、沢山の財宝があるはずなのニャ!!」


「……現金なやつだな」


ボーナスが目当てらしい。こいつはぶれないな。決してそれは悪いことではないが。

ただ、ネト達には悪いが言ってしまうと、


「おそらく今回は敵のアジトに突撃なんてしないと思うぞ」


「ニャ!?じゃ、じゃあ」


「ああ。ボーナスもおそらく出ない」


「そ、そんニャアアァァァァァァァ!!!!!!!!」


叫ぶネト。そんなにボーナスが欲しいのだろうか?一応これでもかなりの額を給料として与えてやってるのだが。ただ、ボーナスが欲しいというのであればまた盗賊の拠点にでも攻め入るとしよう。

俺がそう考えている間、部下は項垂れるネトを見ながら、


「そうおっしゃるというとは、すでに犯人の特定は済んでるんですか?」


「特定、というわけではないが、予想は付く」


俺はそう言って、2つの手紙を出す。それを部下に手渡した。

1つは迷惑な手紙。小学生レベルの悪口が書かれている。そしてもう1つは、パーティーの招待状。他の公爵家からの招待だ。

その2つの手紙は、


「……ん?筆跡が似てる?」


「似ていると言うより同一の者が書いたと考えて良いだろう」


書いた人物が同じなのだ。つまり、犯人の特定ができると言うことである。

ただ、大事なのはどうやってそれを証明するか。筆跡が同じなんて言ったところで、俺の言葉では信用されない。

であるならば、


「俺はこのパーティーに行ってみようと思っている」


「ほう?正面から戦いに行くんですか?」


「戦うつもりは今のところない。ただの敵地視察だ。敵の情報を知っておくことは大切だからな」


敵の実力と自分の実力を正しく評価できるようになっておくことが大切だ。勿論それ以外にも戦いにおいて必要なものは有るがな。だが、今回にしてはそれでも十分なものだろう。


「敵の顔を拝みに行くとしよう」


「やっぱり敵地へ行くのニャ!乗り込むのニャ!!」


ボーナスだ!と喜ぶネト。俺はそれに冷たい視線を向けつつ、


「ネト。お前達は連れて行かないからな」


「ニャ、ニャんでニャ!?」


「お前をパーティーに連れて行けるわけがないだろう。もっと礼儀をわきまえて出直してこい」


「そ、そんニャ~~」


なんて会話をして数日後。

そのパーティーに俺は出席していたい。因みに婚約者連れである。2人とも興味はあまりないようだが、シンユーの方は頑張ってそれを隠してるな。さすがは天才。あくびをしてるイヤミーとは違うぜ。

3人で色々な貴族に挨拶されていたりする中、


「……よく来た、じゃくて、ようこそいらっしゃいました。イヤミー様。それに、アークとシンユー様も。俺はアーツイ・ガッツです。どうぞよろしく」


1人。少し他の貴族達とは違う振る舞いの少年が。


「招待ありがとう。楽しませてもらってるよ」


「それは良かった。イヤミー様に気に入って頂けたのであれば、このパーティーは大成功だな、じゃなくて、ですね」


このアーツイ・ガッツ。今回のパーティーの主催者であるガッツ公爵家の長男である。俺より年齢は1つ上で、次期公爵候補だな。

因みに言ってしまうと女主人公の攻略対象であったりもする。性格は名前から分かるとおり暑苦しいタイプだ。今はイヤミーの前ということもあって頑張って抑えているようだがな。


そして、そんな俺たちの話す様子を貴族達はじっと見守っている。このガッツ公爵家は、実はイヤミーではない他の候補を王位継承戦で支援しているのだ。派閥の重要人物同士の話ということもあって注目されているのである。

だからこそ俺は、


「アーツイ殿。俺への招待状は誰が書いたんだ?」


聞きたかったことを率直に聞く。普通のやつなら何か裏があるのではないかと疑うところだが、こいつはそんなことを一切考えない。


「へ?招待状?……あ、ああ。アレは俺が書いたぞ!」


「そうなのか」


手紙はアーツイが書いたらしい。因みに口ではアーツイのことを殿付けで呼んでいるが、これは一応対等な立場だからだな。ある程度の礼儀はあると他の貴族へ示すのも目的の1つだ。


「手紙がどうかしたのか?」


俺がなぜ手紙のことなど尋ねたのか分からないようで、アーツイが理由を聞いてくる。それに俺は屈託のないように見える笑みを浮かべて(そんな笑みを普段は浮かべないため、後にこの微笑みを婚約者達は悪魔の微笑みと呼ぶ)、


「いやぁ。最近よく来る手紙に筆跡が似ていてな。もしかしたらと思ったんだが……まあ、そんなことは無いよな」


「あ、ああああああ、当たり前だろ!俺がお前を馬鹿にするような手紙なんて書くわけないだろ!!」


「「「「…………」」」」

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