4悪 今更デメリットなど
「クララ。……良くなってくれ」
「大丈夫よ。最近ちょっとずつ良くなってきてるの。もう少し頑張れば治るはずよ」
メリットとデメリットがある中、俺はどうするのか考える。だが、ほとんど俺の心は決まっていた。
俺はクララを救う。悪は、むやみに自分の周りを不幸にすることなんてしないだろう。俺は悪役ではなく、真の悪になると決めたんだ。俺が不幸をばらまくのは、俺に利益があるときだけで良い。
勿論救うことのデメリットはある。だが、よくよく考えてみれば、大したデメリットではない。原作のシナリオなんて、所詮は1つの未来でしかないのだ。俺は悪として原作とは違う動きをする。だから、今からシナリオを変えても大きな影響にはならないだろう。
俺はクララを救い、家庭環境を保つんだ!
「ばぅ!!」
「おっ。良かったな。クララ。アークも応援してくれているぞ」
「そうね。ありがとう2人とも。私頑張るわ」
俺も頑張るとしよう。
ということで、数日後。
「あぅ~。どうされましたアーク様。またお腹が空いたんですか?……ん?違いそうですね」
抱き寄せられたが、俺はお腹空いたアピールはしない。そうではなく、頭の方に手を伸ばす。不思議そうにしながらも、メイドは少し俺を高い位置に持ってきた。……ここなら、いける!
「ん?何ですかアーク様。私の髪が気になるのですか?」
違う。が、そう勘違いしてくれても問題はないぞ。
俺は現在、メイドの頭を撫でている。勿論意味があっての行動だ。こうすることで俺は、
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・50人の頭を撫でる
報酬:スキル『天使の愛撫1』
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このミッションを達成できるのだ。このミッションの報酬である天使の愛撫というスキルなのだが、非常に優秀なスキルである。ゲームではヒロインの1人が持っており、これを使うだけで1人のHPを全回復させるという効果があったのだ。しかも、状態異常なども全て回復させることができる。
こんなもの凄いスキルだが、それにしては条件が緩いように感じないか?50人の頭を撫でるなんて、俺以外にもできる気がするだろう?
まあ、この通常ミッションが他の者に使えないのであれば俺の条件が緩いだけかもしれない。だがそれ以前に、これは少々特殊なミッションで、
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年齢制限ミッション
・レベルを50以上にする
報酬:称号『神の化身』
・全属性の魔法を発動する
報酬:称号『魔法の申し子』
・魔法を3つ…………etc.
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こういった年齢に制限があるミッションの1つなのだ。いつまでという細かい条件は書かれていないが、あまり時間を使いすぎるとミッションがなくなる可能性もある。そういう理由もあって、頭を撫でるミッションは手早く終わらせたい。
因みに言っておくと、
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・100人以上を○○させる
報酬:スキル『性神の加護3』
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これも実は年齢制限ミッションだ。一定年齢を過ぎたらかなりこういうのを達成しやすいだろうからな。きっとそういう欲求が高まってくる前の13歳くらいまでとか制限があるんだろう。
こちらの100人のミッションは時間をかけてやるとして、問題は頭を撫でる方だ。こちらはクララの薬草がなくなる具体的な日付などは分からないから、できるだけ早く獲得したい。
「あっ。私の髪ですか?どうぞぉ~」
「今度は髪が気になるお年頃なんですねぇ」
暫くするとメイド達も慣れてきて俺に進んで髪を振れさせるようになった。女性の髪は大切だから、引っ張ったりせずに優しく触らないと。
……メイドだけでもそこそこの数はいるんだが、50人いるかどうかは不明だな。それに、50人全員が俺に構ってくれるとも限らない。ここはメイドだけじゃなくて、
「あぅぅ~」
「アーク様?そちらには……あっ。騎士さんの髪も気になるんですか?」
俺が興味を持っているように手を伸ばすのは、鎧を着た護衛達。全員頭を撫でさせてもらう。このペースなら50人もすぐにいきそうだな。
なんて思っているとメイドが騎士に、
「騎士さんの髪、綺麗ですねぇ」
「そうですか?私は、あなたの方が綺麗に見えますが」
「まあ!嬉しいです!」
……チッ!良い雰囲気になりやがって。ムカつく!
「あっ!アーク様!騎士様の髪を三つ編みにしてはいけません!」
「えっ⁉私の髪三つ編みにされてるんですか⁉」
腹いせに俺は騎士の髪を三つ編みにしてやった。短かったから少ししかできなかったが、それでも十分な腹いせになった。




