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38悪 暗殺者が来るって?

「ドーエムとてワール家の一員。充分ワール家へ利益を上げ、他家と婚約を結ぶ以上の利益を出さなければ自由にはさせられない」


「えぇ~。婚約させてあげなよぉ」

「そうです!こんな可愛い子を放っておくなんて!」


俺の説明に2人は批判を。

イヤミーは分かるから許すぞ。まだそう言うことは分からない年齢だからな。が、シンユーは別だ。こいつの年齢だけを見れば仕方が無いが、天才と言われてきた存在なんだぞ。これくらい納得して欲しいんだが。

そう考えつつ俺がどう説得したものかと悩んでいると、


「良いんです。イヤミーお姉様、シンユーお姉様。私は、私の手でお兄様との婚約をつかみ取ってみせるんです!!」


「うぅ~。ドーエムちゃん。健気だね」


「私たちも応援しますからね」


ハッキリと宣言するドーエムに、婚約者2人は頷いている。というか、いつの間にか2人のことをドーエムがお姉様呼びしているな。随分と距離が縮まったようだ。


「アーク!ドーエムちゃんのこと、幸せにしてあげるんだよ!」

「泣かせたら許しませんからね!」


「お、おう」


俺は婚約者の圧に負け、頷く。婚約するかどうかは俺も強い心を持って耐えれたが、こういうちょっと曖昧な言葉で言われると拒否もしにくい。

……まあとりあえず色々あったが、婚約者達とドーエムの初顔合わせは終わった。3人は仲良くなったし、良い結果だと考えていいのだろう。ただ、そう考えるにしては俺の心がかなり疲れたがな。

勿論婚約者達にドーエムとの婚約を迫られたこともあるし、


「お前、こういう教育内容は話さないようにと伝えただろう!」


パシィンッ!

「あひんっ!?申し訳ごじゃいましぇぇぇん!!」


こいつ、何度か俺に叩かれていることをこぼしそうになった。そのたびにバレないかと焦りながらフォローを入れる俺の気持ちにもなってほしいものだな。


その後、理解させるようにしっかりと時間を使って教育するのだった。


パシイイィィィンッ!!

「あひゃあああぁぁぁぁぁ!!???」




※※※




「どうだった?」


「全然ダメだ。アーク・ワールの所にもワール家にも手紙を大量に送ったが、大した影響は出ていない。相変わらず栄えているようだ」


「ちっ。アークのやつ、運良く良い婚約者と出会えたってだけで良い気になりやがって!」


「一応本人も魔力はあるようでしたが、どうせ何か不正でもしたのでしょう。汚い人間ですから」


「不正?許せないな!必ず悪であるやつの首を取らなければ!!」




※※※




「…………」


「ん?アーク様?どうかされました?」


無言で手紙を眺める俺。その様子を不審に思ったのであろう部下が事情を尋ねてくる。そんな部下に俺は見ていた手紙を渡してやる。


「え?何ですか?これを読めば良いんですか?……今夜お前の命を頂く、ですか?随分と簡潔な文章ですね」


手紙にはたった一文、今夜お前の命を頂く、とだけ書かれていた。


「ああ。簡潔だよな。……というか、今夜っていつだって言う話だ。馬車で送られてくるし俺がいつ読むのかも分からんし、今夜というのが手紙の送り主はいつを想定してるのか理解できん」


「あぁ~。そうですねぇ。手紙を出した日の夜とかな訳もないですけど、確かにアーク様がいつ読むのかも分かりませんよね」


十中八九ただの脅しだろう。

だが、もし本当に今夜襲われたときは問題だ。俺がいつ手紙を読んだのか分かるということになる。つまりそれは、裏切り者がここに居る可能性があるということ。


「確かめねばな」


「何をニャ?」


「ん。気にするな。手紙のことだ」


「ふぅ~ん。……アーク様がそう言うなら気にしないニャ」


ネトに尋ねられたが適当に誤魔化しておく。ここで裏切り者がいるかもしれないから確かめるとか言うわけにもいかないしな。

そして夜。


「………………」


………………。


「………………」





………………。





「…………誰も来ないな」


待っているのだが、一向に暗殺者はやってこない。


「見たかったんだがな。暗殺者」


見たかった。そして、倒して自分の下につけたかった。そう思うからこそ、暗殺者が来ないのは非常に残念。

暗殺者になら年上の美少女がいるかと期待してたんだけどな。俺はまだ年上の美女や美少女の婚約者をつくれていないんだから、ここでチャンスが欲しかった。

だが、この様子だと今日は来そうにない。とりあえず強は諦めて、俺は静かに目を閉じた。


「………………」


………………。


「…………そろそろ来ないだろうか」



次の日の夜、同じように暗殺者を待っていた。来るなら速く来てほしい。子供の体で夜更かしをするのは辛いのだ。眠いぞ。

……などと、思ったが、結局その日も暗殺者は来ない。


「……アーク様。眠そうなのニャ」


さらに次の日。ネトにそんな指摘をされてしまった。


「そんなことはな……ふぁ~~」


否定したかったが、俺の口からはあくびが出る。この2日間、夜に暗殺者を待ってるからな。睡眠時間がいつもより短い。


「あくびしてるじゃないですか。……眠れないんですか?」


「眠れないわけじゃないぞ。……ただ、暗殺者が来ないかとちょっとワクワクしてるだけだ」


「そんなことでワクワクしないでほしいのニャ」

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