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35悪 もうすぐというより明日

「アーク様、敵を作り過ぎちゃったんじゃないですか?」


部下が困った様な顔をしてそう言ってくる。まるで俺が悪いとでもいいたいような顔だな。


「こいつらが勝手に敵対しているだけだ。俺が進んで敵対しようと思ったわけじゃない」


「それはそうでしょうけど、もうちょっと行動に気をつけるとかしないんですか?」


「しないな」


俺は即答した。部下は苦笑いしている。そして俺の隣で、


「ニャハハッ。アーク様が自重とかあり得ないのニャ。自由じゃないアーク様はアーク様じゃ無いと思うニャよ」


ネトが笑った。それを聞いた部下が、「そうかもしれませんけど……」と言って頭を抱えているな。

……自由じゃない俺は俺ではない、か。


「ふむ。珍しく良いことをいうな。ネト」


「ニャ!?何ですかニャ!?まるで私が普段はいいことを言わないみたいに!」


俺の言葉で驚愕し、不満げな態度を見せるネト。だが、俺は前言撤回をするつもりはない。逆に,俺の方が不満だという態度を取って。


「みたい、ではない。実際に普段は余計なことばかり言っているだろう。だからお前達を他の貴族がいるところに連れて行けないんだが?」


「ニャ!そ、それを言われると……」


ネトは痛いところを突かれたという風な顔をして、言葉を尻すぼみさせていく。実際にこいつは普段から不敬なことばかり言っているからな。他の貴族だけでなく、スネールやクララの前に出すことさえはばかられる。

そういうことを俺が言ってネトを黙らせ、なんだか勝ったような気がしていた。が、ここで逆転の波が。


「それだけ不敬なネトさん達を護衛として雇い続けているアーク様は、相当ニャンダフルのことを気に入っているんですね」


「むっ」


部下にそう言われ、俺は顔をしかめる。だが、咄嗟の反論の言葉が出てこない。俺自身、実際に気に入っていないわけではないからな。

そんな様子を見たネトがまた調子に乗って、


「ニャハハ~。アーク様に好かれちゃって困るニャ~。私はもう結婚しちゃってるニャ~」


「そんなことは知っている。俺だって婚約者がいるんだからバカなことを言うな。……お前達を好いていると言うより、俺はただお前達の力を評価しているだけだ。我が家の騎士団よりも、攻撃に関しては秀でているからな」


「ニャハ~。褒められちゃったのニャ~」


俺の否定も気にとめた様子はなく、ネトは機嫌が良さそうな顔を。

言っていなかったが、こいつは既婚者である。しかもすでに子供がいるのだそうだ。相手は人間で、生まれた子供は俺がイメージするような獣人らしい。つまり、人間の体に猫耳や尻尾が生えているやつだな。

将来は俺に嫁がせて玉の輿を狙っているとネトは言っていた。そこは本人次第だと思うんだが。


「実力ですか。確かに大事ですよねぇ。領主になったときには強い私兵のような戦力も必要になりますし……あっ。戦力と言えば、アーク様の魔力鑑定の日はそろそろですよね?」


部下が思い出したように言う。

そう。実はかなり近いのだ。俺ももうすぐ5歳になるからな。シンユーのことがあって色々間にあったが、俺だって魔力鑑定がやってくる。

しかも、もうすぐなんて言ったが、


「明日だな。明日の結果次第で俺の未来が決まるわけだ」


もうすぐなんて言葉では収まりきらないくらい近いぞ。


「え?明日でしたっけ?……って、そういえば明日はアーク様が休暇を取られることになっていましたね。アレは魔力鑑定があるからなんですか」


「その通りだ」


俺は頷く。なんで俺が明日休むのか部下は分かっていなかったらしい。俺と話をしている部下以外の部下も一瞬驚いたような顔をしていた。誰も俺の予定を把握していなかったんだな。

そう思ってジト目を部下達に向けていると、


「あっ。もしかして、結果次第でアーク様が公爵になれないこともあるのニャ?」


ネトが質問をしてきた。俺がそちらに意識を向けることでジト目が消え、部下達はほっとしたような表情を浮かべる。


「ああ。あるぞ。可能性は低いがな」


ネトの問いに俺は頷く。ただ、おそらく大丈夫だ。俺も赤子の時にすでに『天使の愛撫』の効果を発揮させられていたからな。流石に使いこなせるほどの魔力は無かったが、効果を出せるだけでも充分魔力はあると判断できる。

勿論ゲームのアークも魔力は多い方だったし、危ないことは無い。


「えっ!?その場合は、婚約も解消なのニャ!?あんなに仲が良さそうなのに」


そこか。自分の雇い主の地位がどうなるかは大事ではないんだな。権力をあまり気にしないネト達らしいと言えばらしいが。


「それは流石にない。俺が公爵になれなくても、イヤミーが皇帝になれば問題ないからな。俺は公爵家出身の皇帝の婿となるだけだ」


「ほぉ~。それは良かったニャ!ラブラブな婚約者が別れるなんて寂しいからニャ」


嬉しそうにするネト。どうせだし、貴族の婚約に関することをもう少し教えてやろう。


「だが、俺たちは違っても、普通に魔力鑑定の結果が理由で婚約解消される事例はあるぞ。昔10人以上婚約者がいたのに魔力が低くて全員との婚約が解消になったやつもいたな」


「う、うわぁ。大転落ニャ」


「ああ。貴族ではそういうのが普通だ」

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