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33悪 未来なんて潰す物

「エレクス。説明しなさい」


「ひぃ!……お、俺はそんなことしてない!!」


悲鳴を上げたエレクス。だが、口から出たのは否定の言葉だった。認めるつもりはないようだ。

ただ、俺としてはそれでも構わない。重要なのはエレクスが罪を認めることではないのだ。大事なのは、エレクスの株を下げること。俺や宰相に見つめられ怯える姿を、貴族達の目の前でさらすことでな。


「ふむ。本人が認めないというなら仕方ない。物的証拠もないし、罪にも問えないからな。……ただ、これだけはハッキリさせておく。イヤミーやシンユーへ牙をむいた存在に、俺たちの派閥が心を許すことは無いと」


「そうでしょうね。事情は分かりました。お手数おかけして申し訳ありません……では、私どもはこれで」


宰相は頭を軽く下げ、エレクスの頭を押し下げ、去って行った。その一部始終を見ていた貴族達は、


「次期宰相、エレクス殿にすることはできないな」

「ああ。非常に残念ではあるが、我が派閥の中から……」

「非常に残念ではありますが……」


俺たちの派閥だけでなく、他の派閥もエレクスを次期宰相に選ぶことはなくなった。エレクスは表舞台から消えるかもしれないぞ。このままだと、女主人公の攻略対象が1人減ってしまうかもな。親友キャラも悪役令嬢も俺の婚約者になったし、女主人公のルートはどうなってしまうんだろうか。ゲームで起きるはずだったイベントが大きく減るぞ。

つながることのできる攻略対象も数が減るだろうし。


「未来の道が潰えたな」


「そうだね。宰相も5代目で終了かぁ」

「折角アーク様が作ってくれたチャンス。私がつかみ取れるようにしなければいけませんね」


俺の呟きを婚約者2人は違う風に解釈したらしい。今このタイミングで言うとエレクスのことだと思うよな。紛らわしかったか。

ただ、誤解を解く必要もない。誰の運命が消えたかなんて些細な問題だ。誰の運命かではなく、誰がそれを潰したかが問題なのだ。

なぜって?それは、



――――――――――――――――――――

達成済み

・他人の未来の可能性を大きく潰す

 報酬:称号『運命を切る者』

――――――――――――――――――――



そういうミッションが通常ミッションにあったからだ。大きく潰すという表現が曖昧だったが、今回のことで達成できたな。俺がイヤミーの悪役令嬢の未来を消したときとかシンユーの親友ルートを潰したときとかに達成できたと何度か思ったミッションだ。それでも確認してみると達成できていなかったのだがな。なぜ今までのことはダメで今回は良かったのか、俺にはさっぱり分からない。

似たようなミッションもあるし、もう少し調べたいところだ。







※※※





「くそっ!」


1人の少年が悪態をつき、ガンッ!と言う音を立ててテーブルを叩いた。

彼の名はエレクス。父親は宰相で非情に優れた人物であり、強い愛国心を持った人物として有名である。そしてその息子であるエレクスも、次期宰相として期待と注目を集めていた。少し前までは。


毎日のように勉学に励み、鍛練を重ね、文武両道で双方に優れた結果を出してきた。次期宰相としては十分な実績を積み重ねてきていた。だが、それは少しのミスで消え去ることとなったのである。

まず彼は、自分より上の人間が嫌いだった。宰相という身分へ将来就くことはできるが、それ以上の貴族として格を上げることはできない。自分より上の立場にある存在が、羨ましくて仕方が無かったのだ。自分とは違い、努力をすれば高く上っていける者たちが。


そこで、誰も見向きもしないような第4皇女をいじめた。すぐに彼女は消えたが、彼の心の中のどこかが満たされた気がした。ただ、そんな彼女が魔力鑑定の結果で大きく躍進したことにより、彼女への苛立ちは溢れてきたが。


その数年後、またしても彼の標的が現われる。第5皇女だ。

天才だともてはやされ、自分よりも才能があるという彼女が羨ましくて仕方が無かった。だが、元々彼女は次期皇帝の候補。手が出せるわけがない。だが、魔力鑑定で全てが変わった。第5皇女の周りからは人がいなくなり、好きにいじめられるようになった。彼女もまたすぐに消えたが、彼の心は満たされた。

なのに、


「なんでこんなことに!」


エレクスは頭が悪いわけでは当然ない。次期宰相へとなるため、努力を欠かしたことはない。だからこそ、イジメの標的として狙うのも弱者にとどめてきたのだ。誰も見向きもしないはずの弱者に。

だが、その彼の考えは非情に甘かった。弱者が成り上がり強者へ至るということを、彼は知らなかったのである。


「俺は次期宰相なのに!なんで!!」


自身が宰相となる未来を疑ったことは1度もなかった。だが、その未来がちょっとした弱い者イジメで消え去ってしまったのである。輝かしいはずだった未来を。

そして、その未来を消した張本人と言って良い相手が、


「アーク・ワール。……あいつだけは!あいつだけは許さない!!」


彼の心の中のどうしようもない劣等感。それに油が注がれ、復讐心として燃え上がっている。

彼はアークの名を恨みを込めて叫ぶ。そんなことに意味は無く、復讐などできるはずもないというのに。

某自転車漫画の背の高い痩せた高校生が「ポキィィ」って言ってるのが頭に浮かんでいます

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