２７悪 お前も俺の
「お前、俺たちの下に付け」
「………………は？」
俺の提案にシンユーは目を丸くする。これだけ煽っておいて味方になれと言うなんてあり得ないと思っているのかもしれないな。
罵倒でも飛んでくるかと思っていたが、
「私を下につけたってメリットはないでしょう？何をバカなことを言ってるんですか？」
予想外なことに、冷静な言葉が返ってきた。素晴らしい精神力だな。これだけでも部下に欲しいと思うぞ。だからこそ、俺は説得の形へ変えていく。
「本当にバカなことだとお前は思うか？お前は今まで天才と言われてきたんだろう？なら、その才能を捨てておくなんて勿体ないじゃないか」
「っ⁉」
俺の言葉に驚愕するシンユー。そんなに珍しい言葉でも無いと思うが、シンユーにとっては衝撃だったようだな。こういうことはよく言われたと思うんだが。
……いや。天才だからこそ、言われてこなかったのかもしれない。天才は天才であることが当たり前で、常に何かの中心にいる存在。だからこそ、１度捨てられてしまえばもう自分には価値がないと思ってしまう。天才は挫折に弱いと言うが、今のシンユーは挫折に近い状態なのかもしれない。
「シンユー。俺たちに頭を垂れろ。俺たちに、イヤミーに勝利をもたらせ」
「……………………はい。宜しくお願いします」
長い沈黙の後、シンユーは頷く。こうして、俺たちイヤミー派閥に新たなメンバーが加わることとなった。
「……あっ。あと、ついでにお前、俺の女になれ」
良いタイミングだと思ったので口説いておく。先程までのように冷静な表情で断ってくるかと思ったが、
「ふぇ⁉……ななな、なぜですかぁぁ⁉」
顔を真っ赤にして理由を尋ねてきた。断られないのは意外だな。もしかしたらこういうのにはまだ慣れて無くて弱いのかもしれない。幼女だし。
ならば、押し切るだけだな。
「なぜ？簡単だ。俺がお前を欲しいと思ってるから、だ。それ以上の理由なんて必要ないだろう？」
「わ、私が欲しい。……う、うううぅぅぅぅぅ～～」
顔を赤くしたまま、目を回し始めるシンユー。頭がパンクしそうというのはこういう様子を言うのかもしれない。こんなかわいげのある顔が見れるとは思っていなかったな。
なんて、そんなことを考えながらも、
「ほら。早く答えを出せ。これからお前をイヤミーに合わせたりする必要があるんだから、時間が無いんだぞ」
「わ、わわ、分かりました！け、けけけけ結婚します！」
よし。言質は取った。後はこの勢いで俺と結婚すると他のやつの前で言わせれば良い。これで俺の第２夫人も確定したか。
それとともに、
――――――――――――――――――――
デイリーミッション
達成済み
・将来を約束する
報酬：対象の好感度５パーセント上昇
達成済み
・たくさんの人を驚かせる
報酬：スキル『視線誘導１』
――――――――――――――――――――
ミッションも達成だ。このデイリーミッションが丁度良いタイミングで出てくれて助かったな。本来ゲームのシナリオ上のアークは、ここでどこかの貴族の娘か誰かをめとる約束でもしたのだろう。どこかの口の上手い貴族にでものせられたんだろうな。
さて、こうしてミッションも達成できたことだし、俺は少しシンユーと話し合ってパーティー会場へ移動しよう。すぐに俺はイヤミーの側に行き、
「イヤミー！お前に用があるという者が来たぞ！」
俺はそこまで大きくない声で。だが、スキルを使って会場全体に聞こえる声で、イヤミーに伝える。イヤミーも何が起こるかは事前に伝えてあるので、余裕の表情を浮かべている。
俺の声を聞いた事情を知らない貴族たちが注目する中やってくるのは、
「……お姉様。お話があります」
「あら。シンユー。どうしたの？」
当然シンユーだな。それ以外の者を連れてくる予定は今のところない。イヤミーの前に来たシンユーは、
「私をお姉様の配下の末席に加えさせて頂けないでしょうか」
「「「「っ⁉」」」」
驚愕する貴族達。まさかシンユーがそう動くとは思っていなかったのだろう。通常なら今までの派閥にすがりつこうとするだろうからな。常人ではあり得ないほどの変わり身の早さだ。
だがイヤミーは余裕の笑みを浮かべ、
「もちろん構わないよ。よろしくねシンユー」
「はい。宜しくお願いします。お姉様」
こうしてシンユーが派閥に加わることが決まった。貴族達はまだ驚きで固まっているぞ。
スネールも固まってるな。あいつは派閥のかなりトップの方なんだから、もう少し威厳が保てるようにしてほしい。
ただ、驚いてくれたお陰で、
――――――――――――――――――――
デイリーミッション
達成済み
・たくさんの人を驚かせる
報酬：スキル『視線誘導１０』
――――――――――――――――――――
２つ目のデイリーミッションが達成された。いや、最初から達成はされていたのだが、報酬のスキルのレベルが上がった。
このミッションは驚かせた人数で報酬が変わるタイプだったんだ。俺が直接驚かせたわけではなかったが、シンユーの派閥参加を計画したから俺も関わった判定になったんだろうな。
俺がそうして報酬に喜んでいると、イヤミーが動く。シンユーの前に立って、
「で？シンユー？お話はそれだけじゃないでしょ？」
