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11/42

11悪 悪は幼くとも悪である

「約束、だからな」


「……うん!」


イヤミーは大きく頷く。子供の約束は信用できるか不安だが、まあ信用しておこう。駄目なら駄目でも、何かしらできることはあるはずだ。

それから俺たちは隠れて中庭で話をして、会場に戻る。イヤミーは会場に戻りたくないというので、俺だけで戻ることに。


「……あっ。アーク様!」


「ん?どうした?」


俺がスキルも使用しながら会場に紛れ込み、しばらくすると貴族の子息に見つかった。俺は今までずっとこの辺のをうろついてましたとでも言うかのごとく自然に首をかしげる。


「探したんですよ!アーク様がなかなか見つからないので!」


「そうか。俺に何か用なのか?」


探したという所に非難するような雰囲気を感じたが、だからどうしたと言わんばかりの態度で俺は事情を尋ねる。下々の者の事情など知ったことではないな。


「え、えと。あのその……用と言うほどではないのですが何かできることはないかと思いまして……」


言葉が尻すぼみしていく。どうやら急ぎの用事などではないらしい。俺のご機嫌取りでもしたいのかもしれないな。ならば、やらせることは1つだ。


「やる事なんて他の奴らと同じだ。俺の素晴らしさを他の者に語ってこい」


「へ?」


「だから、俺の素晴らしさを他のヤツに伝えてこいと言っているのだ。行け!」


「は、はい!」


俺は少し圧を強めて、どこの誰かも分からないヤツを送り出す。そうしてそいつも誰かに俺のことを話し始めた。

こうして会場の一部に紛れ込みながら話を聞いているのだが、言いつけを守って俺の素晴らしさを語っているものは少ない。きっと最初こそ語っていたのだろうが、途中から話に夢中になって忘れてる者も多いのだろう。子供だからな。

だが、逆に考えると今も語り続けているモノたちは非常に有望だ。後で名前だけでも聞いておいてやろう。そういった者たちこそ俺の取り巻きにふさわしい。


「……おぉい。アーク!そろそろ帰るぞ!」


色々考えていたら、スネールに呼ばれた。もう帰宅時間らしい。

俺は素速くスネールに歩み寄って、


「分かった。もう馬車に乗って良いのか?」


「うぉ⁉いつの間に俺の後ろに⁉……ま、まあそれは良い。それよりも、馬車に乗るのはまだダメだ。派閥の者たちに軽く別れを告げてから帰らないと。アークも話し相手になった者たちに挨拶しておいてくれ」


どうやら話しかけられるまで俺に気付かなかったらしいな。それだけ俺のデイリーミッションで得た隠密系のスキルの効果が高いと言うことだろう。


「ああ。奴らの相手をしてやろう」


少しすると取り巻き連中が俺の周りに集まってきた。スネールもスネールの派閥のモノたちに囲まれているな。向こうは向こうで閉めるのだろうし、ここは俺が取り仕切るとしよう。


「俺の素晴らしさを語る活動、ご苦労だった。……そして、そこのお前とお前とお前。名乗ることを許可する」


俺は3人を指さす。そして、名乗るように指示。

3人は困惑しながらも、


「わ、私、トリマー・キエーです。キエー子爵家の3女です」

「私、ノポノト・リマキーと申します。リマキー男爵家の長男でございます」

「私、モブーム・クチー、です。クチー家の4女、です」


と、それぞれ名を名乗った。


「ふむ。トリマーとノポノトとモブームだな?覚えておこう。……お前達3人はかなり長く俺の素晴らしさを語っていた。褒めて使わす!」


そう。この3人が、最後の方まで俺の素晴らしさを語っていた。その忠義は賞賛に値するな。俺の言葉で3人は感極まったような表情をして、


「「「ありがたき幸せ!!」」」


頭を下げた。

うんうん。次にこいつらと会うことがあれば、できるだけ話をしてやることにしよう。忠信の心はシッカリとにぎっておかなければ。


「ではさらばだ!他のモノたちも、次の俺のパーティーの時に良い働きをすれば名前を覚えてやろう!励むように!!」


「「「「は、はい!!!」」」」


俺はそれだけ言って、馬車の方へ向かう。なぜか父親やその取り巻きからの視線を……いや、他の派閥からも視線を感じるな。一体何なんだろうか。





《side貴族達》

「あれ、ワール家の長男だよな?」

「ええ。確か3歳だったと思うのですが……」

「3歳であのカリスマか?こちらの派閥の子息達へも引き抜きに似たことをしていたし……ワール家も将来有望かもしれんな。王位継承戦で遅れていたから油断していた」

「派閥のモノたちにも仕事をしたら名前を覚えられるという印象を残した。次に何か指示を出した場合には、精力的に活動するだろうな」

「見切りをつけるには早すぎたか………………」

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