第八話 落語って面白いよね?全て人に平等なところが
トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。
某国営放送の年末歌番組を録画で見ました。
某人気アニメの劇場版の主題歌良かったですね~
某所に初詣に行こうと思いましたが、
某ウイルスが猛威を振るっているので諦めました。
なんか生きづらい世の中ですね。
今年の目標 -伏字の〇は息抜き用の穴なので多用する-
それでは 第八話です。
この行軍は正解だったのだろうか?
昼間ほどの暑さは無いが風が酷い、巻き上がった砂が風で叩き突く。
まるでサンドブラストで磨かれてるみたいだ。
足元の具合は砂山よりはマシだが踏み込む為に、
体を前に倒さなければ進めない、体よりも気が滅入る。
ミシンさんは両腕で顔を隠し腕の隙間から先を見ている。
足運びは俺と変わらない歩調だが、
体重差だろうか風に巻き上げられそうだ。
出発しておよそ、三時間が経った所で周囲が明るくなってきた。
彼の世での初日の出だが、砂塵でよく見えない。
二度の休憩を挟んだが二度目の休憩でカヨウの実が尽きた。
二時間ほど進み大きな|岩が何本も突き出た場所に出た。
まるで水平線を守る壁のような存在感。
空からそこに落としたかのようにずらりと行く手を阻んでいる。
この強風はあの岩の集まりから流れてきてるようだ。
ミシンさんがその岩の方を指差し、俺に一度頷いた。
あそこに向かうって事か?風除けになりそうだし、
太陽との方角さえ合えば日除けにも使えそうだな。
岩の下まで辿り着き、その巨大さに恐れを感じた。
見上げると岩の天辺が分からない、ゆうに十階建てのビル程ありそうだ。
もしこの岩がこちら側へ倒れてきたら、、そう考えるとゾクっとした。
岩を背に風を凌ぐかと思ったがミシンさんは口元のスカーフを下げ。
「岩の間を抜けて、向こう側に行く!
キンは私の腰を掴んで付いてきて!」
ゴゥっと吹き荒れる風で彼女の声が消え入りそうだ、
それを掻き消されないよう必死に伝えてきた。
岩壁を抜ける風は狭い川を濁流が流れるかの様で、
身を預けているその岩さえ削り取りそうな荒れ方だ。
スカーフを直し進もうとするミシンさんの目を捉え、
指で"L"字を作り二回捻って見せた。
呆れた眼差しだが理解してくれたようだ。
俺の方が重いし壁役ぐらいには成れるだろう。
すんなりとはいかないが岩壁の間を一歩また一歩と進む。
上半身が水平になってはいるが風を避けるには合ってるだろう。
ミシンさんは腰を掴むというよりは腕で巻き着いている。
役得かと感じたがそんな余裕が無い。
岩壁の間を進んだ中程だろうか巻き付いた腕が、
右に行けと言わんばかりに腰に力を掛けてきた。
さらに姿勢を低くし指示に従い右手で岩を掴んだ。
一瞬前に影ができ何かが左を通った?
植物の枝か?巨大な木か?横を吹き飛んで行く。
左の岩壁に激しく衝突しその勢いのまま後方へ過ぎていった。
それを最後まで見る余裕がない早く次の一歩を進まないと、
次にあんな物がここに飛んで来たら一溜まりもない。
膝を上げ爪先で地面を蹴って足を前に出せ。
ようやく岩壁を抜けた瞬間。
ピタッと風が止んだ、、、音がしない静かすぎて耳鳴りがする。
今しがた岩壁の間だったがここは凪いでいる。
あの風の脅威はまだ続くと思い気合を入れたところだったが、
拍子抜けした、が今はやり切った感がある。
ミシンさんは俺の腰から離れない。
「ミシンさん、ミシンさん?抜けましたよ」
反応が無い、思った以上に強く抱き付いてる。
このままだと座る事も出来ないし進むか?と
足を進めようとしたが、グッと後ろに引かれた。
「、待って、、アレ、見た?」
背中に張り付いたミシンさんは震えている。
「アレって?風でぜんぜん見えなかったから、、」
そう言うとミシンさんの腕がスルっと解けた。
腕は緩んだがベルトのバックルを両手で握っている。
そして頭だけは背中から離れない、らしくない。
「左を何か通って行ったでしょ?」
背中越しの話しに振り向こうとしたが
「アレ、、、たぶん化け物、、」
耳の後ろから腰までを氷塊が流れたように寒気を感じた。
岩壁を左手に進んでいたらと思うと生きた心地がしない。
巨木か枝の塊みたいだったが、アレが化け物なのか?。
「人が絡んでた、というか人を咥えてた、、、たぶん私と同じ種族、
でも、、もう生きた目してなかった、、」
「助けよう、、まだ、まだ助かるかも、」
ミシンさんは両手で腰を掴み直し、後ろは振り向かせない。
「ダメ、あの風の勢い、、追い付かない
それに風のせいで、アレは戻れない、、」
体を前に押された、、、後戻りは無しか、
「、聖者って、なにか出来ないかな、、」
背中に額をコツンと一度当て、俺と接地点し無くなった。
「行こっか、、」
俺を追い抜いた横顔は険しかった。
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俺たちはしばらく無言だった、ピリピリしていたと思う。
岩壁の先は穏やかな砂丘が続いていたが視界が悪い。
点在する数メートル級の岩影から化け物が出てくる想像をしてしまう。
先行するミシンさんの回数がより多くなっていた。
軍隊の斥候任務みたいで、もうプレーリードッグの可愛さはなかった。
"何かあれば腕輪で呼んで"とそれ以上は言わなかった。
30分で戻るを繰り返しているが、俺よりミシンさんの体力の方が心配だ。
ミシンさんがいないと考えてしまう。
あんな化け物どうやって倒すんだ。
枝に植物に思考があるのか?それとも植物を纏った何かなのか、、
人を、生き物を捕食してるって事か?
それは植物としての形態から逸脱してないか?
食虫植物は罠で餌となる生き物を捕獲するが、、人は餌なのか、
化け物はこの世界の脅威で異世界の理不尽さを感じた。
三度目になるだろうか、ミシンさんが戻ってきた。
「ここから15分ぐらいのところに村が見える、
もう少しで休めるから」
表情が少し明るくなっていた。
「りょーかい!頑張るよ!」
明るい時は、明るく返さないとな。
ここから先行はせずに、村まで同じペースで行くらしい。
二人だけど頼もしい。
でもお約束ってのは、どこかに必ずある。
村の入り口付近で道を塞がれた、あの枝に
もうそこに水があるかも知れないのに、助かるかも知れないのに。
ミシンさんは構えた、獲物を狩るイタチみたいだ。
態勢を低くして耳はいつもに増して尖っている。
しかし俺たちには武器が無い、何か無いかと思ったが。
例の消臭剤はカヨウの実を持ち歩くのが手一杯で、
あの場所に置いてきた、あれ自体に攻撃性はないが。
ズボンに通しているベルトは?と思ったが、
それはかなり近づかないとダメだ。
枝がうねった、なんとなく形が分かる。
アレだワームだ、デカいミミズみたいな形をしている。
差し詰め"ブランチ・ワーム"って感じか。
体長もかなり大きい、電車二両よりも長いんじゃないか?
それが枝の集合体で形成されていた。
よく見ると乾燥してしなやかさは無さそうに見え、
動く度に木の粉が舞い上がっている。
こいつ動植物だ、意味が違うが動物と植物だ。
ブランチワームは鎌首をもたげ、こっちに気づいた、、!?
「汝等!!とみに逃げよ!引きやられるぞ!!」
-お前ら!!急いで逃げろ!まともに食らうぞ!!-
村の方から男の叫び声がした、ミシンさんと顔を合わせると
右の方にある少し大きな岩へ走った。
俺たちが数メートル走った所で、シュッヒュンッ!と風を切る音が聞こえ、
村と化け物の間に白い紐のような光が繋がった。
同時に俺たちの後ろで光線が鞭のように暴れはじめた。
光が眩しく直視できない、辺りには木の焦げる匂い。
白い光は幾度となく化け物を叩き続けている。
その勢いは地面ごと抉るように強く鋭く、
化け物の体を何等分かに割り裂いていった。
そのうちバチバチッと火が回り炎が化け物全体を覆いつくした、
化け物は魂を抜かれたように動きを止める。
その様子を隠れた岩から垣間見ていた。
「我が行くば故な近づきそ!」
―俺が行くまで近づくなよ!―
先ほどの男の声だ、得体の知れない化け物なんだ、
まかり間違ってもそんなことはしない。
往生際が悪くて襲ってくるかも知れない、、
、そういや言葉が分かる?少し理解できる?が時代劇みたいだ。
敵意を示さないため、なんとなく両手を挙げてしまったが
このジェスチャーに意味あるのか?
俺よりも頭一つ分は大きい男が、村の方から近づいてきた。
年の頃は30代半ばぐらい、外国人の様な彫りの深い端正な顔立ち。
いや説明はそこじゃないな、、やっぱり耳が尖っている。
がっちりと言うほどの体躯ではないが、引き締まった体をしている。
世が世<斯の地>なら俳優になれそうな風体だ。
「汝等、この地の者では在らぬな?
ようせずは防人奴が帰りこしかと、思ひけれど、」
―お前ら、ここら辺のもんじゃないな?
もしかしたら尖兵が帰って来たかと、思ったんだが、―
しかし話し方が古いな、ちょっと理解しがたい。
俺の言葉は通用するだろうか?現代語?で話せるか?
そう思った俺よりも先にミシンさんが口を開いた。
「助けて頂いて感謝します、我々は風の吹き荒れる砂漠から来ました
その防人の方はおそらく、化け物によって命を落とされた
風のとても強い石壁の辺りで、化け物と一緒に亡骸を見ました」
ムゥと言った感じだろうか?
片耳を横に引っ張るような仕草を見せ村の方へ歩き出した。
背中越し空に向けた人差し指をクィっと曲げ
着いて来いとばかりの手振りをした。
ミシンさんはこの男を警戒をしているようだが、その後ろを着いていく。
俺も素直に従う、ここもまだ安心できないし。
化け物の死骸はパチパチと焼け焦げ、ガソリンをかけられた
大きな焚火の後にしか、もう見えなかった。
いかがでしたか?
今回はシリアスでお送りいたしました。
命の前でふざけるのは良くないと思いました。
後半はハイフンを使って実験的に字幕にしてみました。
ハイフンの間は読者様用です。登場人物には見えも聞こえもしません。
しばらく字幕化しますのでお付き合いください。
造語の書き間違いルビに注意してます。
古文はあまり得意ではないので許して下さい。ごめんなさい。
評価・誤字の報告など頂ければ、とぉーっても励みになります。
次回 第九話 サブタイのサブタイ「踊らにゃ損」
それではまたお会いできるのを楽しみにしております。
誠意執筆中です。