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チョキンとミシン ~パラドックスは足元が見えない~  作者: トチ
第二章 背けた目先に芯が見えた
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第三十九話 苦を悔いても歩幅が狭まる訳ではない

トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。

悩んで学んでという言葉がありますが、

悩みすぎてタイミングを逃したことの方が多かったなと悩んだり、

そんな経験を学んだりしてます。

進むことを躊躇う事も経験だったりしますね。


それでは 第三十九話をご覧ください。


 ふざけたつもりじゃない、ただメイ安心させようかなって。

あれから何度もドアノッカーを叩いた。

当然のように扉が開く素振(そぶ)りを見せない。


 いやこのやり取りは経験していた。

ルームサービスの食器を外に出すときに締め出されたようだと。

金属製のドアノブは体温を奪うのにも適している、だから触りたくないのも。

きっと扉の鍵を閉める手順はドアノッカーにあるのだろう。

先刻は砂漠装備だったが今はお手製のカーテンマントがある。

カタカタと震えだしたメイを引き寄せマントの中に収める。

メイは顔を上げ怯えるが抵抗はしなかった。

二人分の体温は厚手のカーテンのおかげで寒風を(しの)げている。

さっきも行った窓からの侵入はやはり無駄だった、暖炉からは一向に炎は立ち上がらない。

その暖炉に火を灯すのは当のニシキなのだから。


 するとソファに座ってるミシンが首を(だる)そうに何度か傾けた。

ミシンはハッと周囲をキョロキョロ見廻す。

彼女が意識を戻したと理解すると同時にニシキは窓を枠ごと音が出るように叩いた。

この窓は叩くと重い音がする、分厚い寒冷地仕様になっているようだ。

鈍い殴打(おうだ)の音に流石のミシンも気付く。


 片方の目は瞑っているが、もう片方の目はギョッとしている。

慌てたように玄関の方へ駆け寄ると勢いよく扉が開く。


「どうしたの、ここ何処?」


 ミシンは状況が理解できていないようだが、かまわずメイと共に屋内に入った。


―ニシキも状況が理解できていない―


 このは説明し難く、館の中に自分が複数いるとも感じない。

当たり前だが自分は自分である、自分を疑っても仕方がないのだろうか。

何故か馬鹿々々しい状況に含み笑いをしてしまう。

薄気味の悪い笑いは、二人をを遠ざけるには容易(たやす)い。

警戒を解いていたメイは身構えた。


「ごめん ごめん 頭が回らなくて、、もう笑うしかないなって

 きちんと説明したいけど その前に暖炉に火を入れるから」


 暖炉の前には無造作に開けられた、サバイバルキット。

ファイヤースターターが床に置かれてる。

どうやらこれから火を付ける準備をしていたのであろう。


 俺はこの先を知っていて、暖炉に火を灯したはずだ。

マグネシウムの棒は膜で覆われ出したての新品。

サバイバルキットの中に固定されていたミニライトは、、俺が持ってる。

エマージェンシーシートは、、コンリーさんを包んでいて。


 まるでセーブポイントに戻された気分だ、リスポーン?戻された?ような。

RPGでゲームオーバーになって街へ戻され、

ストーリーをやり直しているのにダンジョンの宝箱は空になっている。

物語上は訪れていないのに、ゲーム上では宝物は手に入れている。

完全なゲーム脳の発想なのだが、この状況に適した言葉が浮かばない。

頭が回らないのは寒さのせいにして、とにかく火を入れよう。


 暖炉の横から当然のように薪を取ろうとするが、

それが見当たらない、十数本は積んであったはずだが。はずだ。

自分の記憶が気持ち悪い、行動を繰り返すのが気持ち悪い。


「ちょっと薪取って来る」


 ブツブツと独り言のように行く先を(こぼ)した。

燃やす薪を確認しないのに、ファイヤースターターを出すだろうか。

羽織っている外套(マント)如何(いかに)して出来たかも知っている。

脳天に矢印が付いているように、(うつむ)きフラッと揺れながら扉を目指す。

考える時は何故、足元数メートル先を見てしまう。

身体は何故、悩みを聞いて欲しい形になるのか、理解できない事の説明も出来ない、もどかしい。

そんな姿を晒しても道すがら身体を支えてくれる人はいないのだろう。

わざとらしく痛々しさを自然と装っている自分が嫌になる。


「キン? 私を運んでくれたの」


 なぜか分からないが(まぶた)が熱くて(たま)らなかった。


 返す言葉が出なかった。


-------------------------------------------------------


 手慣(てな)れるというのは、繰り返した事で慣れる。

繰り返してはいるが先刻(さっき)と同じことをしているだけだ。

ゲームなら経験値をもう一度得られるのだが、この繰り返しは経験値が得られないだろ?

自分自身すら気味が悪いのだから、メイが警戒しているのは当然だ。

ニシキが玄関外から薪を()き集め、暖炉の脇に運ぶのですら奇怪な眼差しを送る。

この間各々(おのおの)の言葉も出ず、ニシキの作業をジッと眺めるだけである。


「チビッ子、、何かあったの? ケンカ?」


「、、、、、、、」


 耳をピンと水平に張り出し、瞬き一つしないメイ。

(おび)えというより動物が天敵(てんてき)対峙(たいじ)しているようだ。

飛び退()ける様にか一定の距離に離れソファの影に(ひそ)んでいる。

その(ただ)ならぬ雰囲気に意気消沈(いきしょうちん)のニシキ、メイの姿が心配になり言葉を切出す。


「いや俺から話すよ、そのメイの反応は普通なんだよ」


「よくわかんないけど、その態度はナイよね」


 化け物でも見たかの様相(ようそう)でメイは悲しく冷めている。

"普通なんだよ"化け物を見たらこの反応は普通だ。

例えば知り合いが幽霊になったのなら、気味が悪く悲しく。

地縛霊(オバケ)の気分ってこんな感じなのだろうと考え、メイの反応をニシキは受け入れる。


「たぶんなんだけど、時間が戻ってる、、俺だけかも、なんだけど」


 気持ち悪いこと言った、ミシンさんも(あき)れるよな、、

目線を落とし、乾いた笑いを付け足す。

そうすることでより現実だと感じて欲しかった。


「凄いじゃん! もっと怖い事かと思ったよ

 なんでチビッ子が怖がっているのかと思ったら

 それだけ? 身構えちゃったじゃん」


 エセ外人みたいに両手を広げてジェスチャーする。


「えっ? 変じゃないの?

 時間巻き戻ってるんだよ」

 

「キンが言ってるんだから そうなんでしょ?」


 ―優しく諭された気分だ―


「気持ち悪くない? 俺やり直してるんだよ?」


「んん、、便利そう?」


 困ったり笑顔を出したりコロコロと表情が変わる。


「そのだけ?」


「うん キャラが立って良いんじゃない?」


 キャラ付けにしては重いし、他人に認識されてない。


「良いんじゃないって、、」


 あっけらかんとしているが救われた気分だ。


「チビッ子? もう問題ないでしょ?

 じゃあキンに "ごめんなさい" しようね?」


「、、ミシンさんは平気なんですか?」


 間接的だがアレを認識したのはメイだけで、易々(やすやす)と受け入れられるものじゃない。


「私のなんだから、私が責任を取るしチビッ子は信じろ

 私からしたらキン以外どうでもいいんだけど

 ただ言葉じゃ返せない物が貴方にはあるんじゃない?」


 横に張り出した両耳が芯を失くす。


「そ、そうでした、、怖がってごめんなさい」


「私たちは彼の世から来たんだから、ちょっとぐらい可笑(おか)しな事があっても

 それが普通だと思う事、、主人公補正? みたいな?」


 腕を組んだミシンは何処(どこ)か自信ありげに(こた)える。


「キンが"お兄ちゃん"なら私の事を"お姉様"と呼ぶ事を許可? 、、許諾(きょだく)しよう

 愚妹(ぐまい)よ、良きにはからえ~」


 許諾は上から過ぎるが、ホント格好良すぎて()れちゃうよ。


「で? 前の私はなんか言ってた?」


 ニシキの面前に顔を突き出し、楽しそうな表情で聞いてきた。


「俺に運ばれたことが嬉しかったみたいで」


 大きく二回(うなず)く。


「笑いながらキレてたよ」


「なんでよ」


 今回はニヘラともせずキレ倒した。


いかがでしたか?

感じるままに書き綴っていたので

整合性を合せるのを失敗して堂々巡りで手が止りまして

本当にお待たせしてゴメンナサイ。

評価など頂けると今後の励みになります。

宜しければブックマークの登録もお願い致します。


二章 第四十話 サブタイのサブタイ「一虚一盈」

また皆さんとお会いできるのを楽しみにしております。

誠意執筆中です。

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