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チョキンとミシン ~パラドックスは足元が見えない~  作者: トチ
第二章 背けた目先に芯が見えた
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第三十六話 雪風タイフーン っていう気分

トチです。長らくお待たせ致しました。

書き続けられる人って本当に才能ですよね。

凡才の私は枝を枯らしてしまっているので、

不定期にしか書けないのでした。ごめんなさい。


それでは 第三十六話です。


 ふざけたつもりじゃない、ただメイが喜ぶかなって。

あれから何度もドアノッカーを叩いた。

全く扉が開く素振そぶりを見せない。

何度目だったか指先がリングに張り付き、指が引っ張られる感覚がある。

ホテルのオートロックを忘れ外に出てしまった様な放り出され方だ。

金属製のドアノブはビクともしない。

手の平の皮をドアノブに献上することになりそうなので諦めた。

何より筋肉が緊張で引きつるような感覚があり、いよいよ限界が近いと感じた。

冷たい風が俺たちに "やあ!" と挨拶をして行く。

家主やぬしが中にいると開かない仕様システムなのか?

砂漠装備はホント寒さに弱くワー〇マンが恋しい。


 メイも水に浸ったお尻を寒そうにしてガタガタ震えており、

その場でけ足をし身体を暖めている。

まつ毛の先に氷滴(ひょうてき)が出来始めており、綺麗だな~なんて空気の読めない事を考えてしまった。

テラスの窓から侵入を試みるもめ込まれた窓で無駄なようだ。

中では暖炉の焚火が燃えており暖かそうだ。

俺たちはマッチ売りの少女気分でそれをながめた、

しかしこするマッチすら無いのはいただけない。


「こここれ、ヤババいなこごえてしまうよよ!」


「すすすみません、私が変な事コト、考えなきゃきゃ」


「えええい、今まさららだだ、き気にすんなな!」


「うきゃぁぁ!!! 風がぁかぜかぜぇ!!」


 ガタガタ止まらない建物の前で凍死とかないよ。

指先の感覚が無くなってきた、鼻水が出てくる。

腕輪の金属まで冷たさが増してきた!凍傷になっちまう。

腕輪も震えてるよ、お前も寒いよなぁ。

そんな長い付き合いでもないが、こう肌身離さず着けてると愛着(あいちゃく)()いて来る、、


 、、ちがぅ! コールだ!


 …もももしもしし!…


 …キン? どこにいるの?…


 …ととと扉の外ととと! ああけててて!…


 ミシンは何食わぬ顔で扉を開けた。

その顔は眠気の中に疑心ぎしんが満ち、かしげた首と同じ方のまゆがさがる。 


 たまらずニシキとメイは館に飛び込んだ。

ニシキは暖炉に一目散(いちもくさん)に向かい火に手足を向け座り込む。

手足がビリビリと熱をびていき、感電しているかのような感覚だ。

メイはまるで生まれたての子羊の様に暖炉までコテコテ歩くと、

四つんばいいでお尻を焚火に向けていた。


「暑いの次は寒いかよ! どうなってんだコッチは!」


「砂漠に長く居すぎました、わたし寒さに強い筈なのにぃ!」


「なんで! 二人楽しそうなの! ズルイ!」


 三者三葉(さんしゃさんよう)の言い(ざま)ではあるが、ここは暖かい生きた心地がする。


 パチッと音を鳴らす暖炉の薪が区切り付けてくれた。


-------------------------------------------------------


 ミシンは恥ずかしそうに嬉しそうにクネクネしている。

不安そうな顔から一転、あふれんばかりの笑顔である。

あの岩のサークルから森の中を通り、

この館まで、お姫様抱っこで連れて来られた事が、

大層たいそうお気にしたようで何度もニシキに確認してくる。


「重かったでしょ?」


「んな事なかったよ」


「そんな事あるよ!」


 ()()()顔でキレてるし、そんな乱暴な謙遜けんそんの言葉はない!

ぼう笑いながら怒る人の様だが、かくしにソレはないでしょ。

メイちゃん? そんなに暖炉に近づくと燃えちゃうからね?

ブッタの逸話いつわにジンギスカンは出て来ないからね?

そんな事考えてたらお腹減ってきたよ。

んできた水も中に引き入れないとな。

あの壺かなりデカかったけど、よく運べたよな。


「いつ目が覚めたの?」


「さっき暑くて、目が覚めた」


 まあ外は極寒だったけどね。


「コンリーがコ〇スのハンバーグみたいになってるけど」


「あーアレは保温? っていうか寒さ対策」


「包むと中までふっくら仕上がるもんね」


 ゆっくりとした呼吸で銀シートが明かりにキラキラ反射する。


「大丈夫なの? こんなに騒いでも起きないけど、、」


「なんか安静にしろって」


 誰にって聞かれたら()()()にって言うと理解が早まるか?

命を狙われた相手に蘇生させられてるわけだし、ミシンさんがどこまで覚えてるかの話しで。

全てを説明するには、俺もまだちゃんと把握(はあく)出来ていない。

グライデルの気まぐれで生かされた、なんて方がまだ理由にもなるんだろうけど。

そもそも敵だったのだろうか、グライデルの眼差しは子に向ける目だった。


―それよりミシンさんの身体は大丈夫なの?―


「ミシンさんは? 怪我してない?」


「少し暑いだけで、なんともない、、」


 目線が下がりニシキの手元を見ているのが分かる。

"痛そう"と言った表情ではなく手当の心配をしているようだ。


「キン、、怪我してる」


「これはなんて言うか、、大したことないよ」


 手を一度握って見せるが鈍い痛みがそこにある。

ひび割れた血液がポロポロと剥がれる。

その下に現れた肌は赤い粉で(まみ)れており、見た目に衛生的でない事は誰の目にも分かる。

他に目立った小傷や擦り傷は無いのだが、これだけで大袈裟(おおげさ)大怪我(おおけが)に見える。

コンリーさんの方がよっぽど重症なんだが。

芯まで暖まった感じではないが、目先の生存を()こう。


「メイ? 水の入ったやつ入れよっか」


「はーい」


 すっかりお尻は乾いたようだ。

立ち上がり扉に向かうが一度ニシキを見て立ち止まる。


「扉締まらないように、押さえてて?」


「そかそか、また締め出し喰らうもんな」


 メイの身体が隠れる程の壺は軽々と室内に運ばれる。

おそらく有るであろう水は揺れない、その中で動くのは逃げ遅れた空気だけだった。

薄氷(うすごおり)が張っており外の寒さが壺を通してヒヤリと部屋に伝わった。


「うわ、氷張っちゃってるよ」


「ホント? 外スッゴイ寒いんだね」


 ん? ちょっと待てこの館そんなに広くないけど、

薪のストックまだあるのか? 暖炉の脇に10本は無いぞ?

一本丸々燃料にしても二時間は燃えないよな。

単純に明日の朝前には使い切っちゃうんじゃないか?

薪って寒さが厳しくなる前に調達しとくもんだし、生木(なまき)を薪にするには時間が必要だし。


「…俺達もしかして遭難したかも」


「そうなんですか?」


 ちっとも笑えないし、女子高生サバイバル漫画は見てない。


 とりあえず燃料の予備がないか館の探検を始める事とした。


いかがでしたか?

展開がゆっくりです、書きたい事が溢れるとゆっくりです。

評価など頂けると今後の励みになります。

宜しければブックマークの登録もお願いします。


二章 第三十七話 サブタイのサブタイ「探驪獲珠」

また皆さんとお会いできるのを楽しみにしております。

創意執筆中です。

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