表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チョキンとミシン ~パラドックスは足元が見えない~  作者: トチ
第一章 ここに至るまでの経緯とかなんとか
32/43

第三十二話 いい加減にしなさい!

トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。

本当に睡眠って大事ですね、起きてからの執筆が弾みます。

四時間で寝て起きるを繰り返すと集中力が低下してました。

今は枕とお布団が恋しいです。


それでは 第三十二話です。


 化け物の背に乗るグライデル。

昔ゲームで見たガマガエルに乗ったジラ〇ヤみたいだ。

虫の上から腕を組んだ姿は太々(ふてぶて)しい。


「へい! おまち!」


 フワッと地に降りるが(なお)腕は(ほど)かない。


「気の(まよ)いがあるな~追い付いちまった

 余計(よけい)なこと考えなきゃ、お前ら逃げれたんじゃねぇのか?」


「コンリーさんはアンタの(まご)なんだろ!

 なんで傷付けた! なんで化け物なんか(したが)えてる!」


 ニシキ考えは斯の地の(いき)を出ていない。

しかし彼の世の常識(じょうしき)(うたが)ってかかる。


「なんでってなぁ~ いきなり殴られたら

 殴り返すだろ? 普通? (しつけ)だ、し・つ・け

 虫なんか(エサ)やりゃ簡単に躾られんのにな~」


とボケてるだろ? ホントは躾じゃなく(あらそ)ったろ?


「悪い、、こっちの作法(さほう)は知らないんだ?

 俺の知ってる躾と(くら)べたいから、見せてくれよ?」


気合(きあい)で、どうにかなるなんて思ってんじゃねぇよ

 死なねぇ程度(ていど)にぶちのめしてやっから

 負けても舌噛(したか)んで死んだりすんなよ?」


 あっちはやる気満々だけど俺に戦う(すべ)がない、

状況(じょうきょう)を変えなくちゃ、おそらく()られる。

どちらか個別撃破(こべつげきは)で数の有利(ゆうり)さを()かさないと。


「ミシンさん! メイ! 化け物なんとかしてくれ!」


 アントリオンとグライデルを分断(ぶんだん)させる。

共闘(きょうとう)されたら(たま)ったもんじゃない。

あの化け物に意識や自我(じが)があるとも思えないが。


メイが放つ石の玉は何度か、化け物の頭部を(とら)えるが、

瓦解音(がかいおん)を立てて直後に(くず)れる。

ミシンの火の杭も収束(しゅうそく)が上手く行っていない、

竹製の水鉄砲(ウォーターガン)かの(いきお)いで虫の背でハタと消えてしまう。

化け物は少し(ひる)むも大した傷を()っていない。


「んで? お前が俺の相手をすんのか?」


 そんな様子じゃ半笑(はんわら)いだよな。

遊戯(ゆうぎ)に付き合っている保護者(ほごしゃ)の目線だ。

ハッタリ()まして()()がりとは行かないが時間(かせ)ぎだ。


「男なら(なぐ)()いの喧嘩(けんか)だろ?」


「なんで俺が殴られんだ? 殴り合いってのは

 (たが)いに殴るから殴り合いなんだぞ?

 一方的に殴るのは "()()" じゃねぇ」


()がないな~老人は若者をもっと大事にしないと?

 孫だって小遣(こづか)いせびりに遊びに来ないよ?

 少なくても俺はお(じい)ちゃん愛してるからな~

 ルマ〇ド買っといてくれるし」


「なめるなよ、それがお前の作戦か?

 時間稼ぎと分断に意味はねぇぞ!」


 気付かれるのも計算済(けいさんず)み、のつもり。


(ちが)うね、俺が化け物(たお)しに行っても足手まといだ、

 ならアンタを止められりゃ良いんだよ」


 向こうと十分すぎるぐらい(はな)れたか?

コンリーさんはまだ開放されないか?

この魔術師がどの程度の範囲(はんい)影響(えいきょう)を与えるかだけど。

もっとだ、もっと俺に注目(ちゅうもく)しろ!


「んでお前は俺に殺されると?」


「そんな悲観(ひかん)はしてない、アンタは俺を殺そうとしてない

 なぜなら俺の不思議パワーに興味(きょうみ)があるから

 アンタ(よく)が丸見えなんだよ! 糞ジジイ!」


「手足()いで頭(のぞ)いてやっから後悔(こうかい)しろ! 糞ガキ!」


 砂漠の中どのようにして集めたのか、

グライデルの腕には水流(すいりゅう)が集まる。

(ため)()りだろうか片腕を軽く振り上げた。

砂地にサメの背ビレの様な海波(かいは)が走り、

モーゼの十戒(じっかい)の様に砂漠が()れる。

3メートル程の断崖(だんがい)に変わった、退路(たいろ)まで()たれた。


 次は(ホン)チャンが来る、アレは()らったらヤバい。

(あお)りに煽りまくって、十分逆上(のぼ)せたか?

前にアレ話してたもんな? (たの)む、ミシンさん気付いてくれ!


「ジジイキャラで、何考えてるか分からない権力者(けんりょくしゃ)って

 お前は、ブラッ〇レイか!!!」


 アントリオンと対峙(たいじ)しているミシンの様子が変わる。

(かかと)から脳天(のうてん)まで一直線に()び、ブーストが掛かった。


「仲間に()(あた)えても、俺とはどうする? アホがぁ!」 


 ()てと言わんばかりにニシキは(てのひら)を見せた。


「アンタに(おこ)ってるのは、俺だけじゃない

 ついでに挨拶(あいさつ)したいらしいよ、、な? ミシンさん!」


 ミシンはアントリオンを(ほふ)ろうと、

(キツネ)の口先、一杯に魔力を()めていたが、

ニシキの叫びに一瞬の()が出来る。


転移(リプレイス)!」


 (あわ)ててミシンは腕輪をひと(なで)でする。


 ―(うす)(はがね)がぶつかり合い、鼓動(こどう)(ひび)く―


 魔術師の目の前にいるのはニシキではない。

広げられた掌は、()ままれた狐に変わっている。

(あふ)れそうな魔力を放つのに、(まばた)き一度もさせはしなかった。


火の(フレイム)! (ステイク)!!」


 放たれた火の杭は収束し色を白く変えていく。

グライデルは腕を(かさ)ね合せ水の(かべ)(まと)うが、

火を(ふせ)ぐ事しかできず空間が二重に(ゆが)んでみえる。

それどころか熱の勢いに負け蒸気(じょうき)()き上げている。

防いでいる腕の表面が赤く(ただ)れていく。

熱量(ねつりょう)()えられなくなり後ろに大きく跳躍(ちょうやく)する。

グライデルの身体を火の杭が吹き飛ばす。


「メイ! 化け物()めてくれ!」


石の(ロック)! (トラスト)!」


 石柱(せきちゅう)がアントリオンの四方(しほう)から()()える。

(よろい)の様な体に石柱は突き()さらないが、

昆虫標本(こんちゅうひょうほん)のようにアントリオンをその場に()り付ける。


 こんなの()焼刃(やきば)だ、、上手く行くか分からない。

でも俺はこれしか出来ない!


 ジャンケンのチョキを髑髏(ドクロ)に生えた(つの)に向ける。

そんな事で到底(とうてい)切れない事は理解(りかい)していた。

 

 しかし、、、ニシキは願う。


「たのむ! 切れろ! その角、邪魔(じゃま)だっ!!!」


 ―チョッ/ /

     / /キンッ!!!―


 まただ、また音が消えた、みんなが叫んでいたはず。

水が蒸発する音が、ミシンさんの声が、化け物の(きし)む音が。

気圧(きあつ)が変わったみたいに全てが無音(むおん)になってる。


 化け物の外殻(がいかく)破片(はへん)となって飛んでくる。


 ()けないと怪我(ケガ)するか?

この速度なら手で(はら)っても平気だな。


 アントリオンの角が頭部が足が切断(せつだん)される。

(あご)(はさ)まれていた、コンリーも(ばく)()かれる。

コンリーが投げ出されると同時に、切れた化け物の角は砂に()さる。


 ニシキは虫でも()(はら)仕草(しぐさ)をするが、

手の(こう)は薬指の付け()から親指までパックリと切れている。

水を含んだスポンジを(しぼ)るように血液が(にじ)み出る。

()じた(かさ)に残った雨粒(あまつぶ)を払う、そんな赤い水滴(すいてき)軌跡(きせき)が見えた。

それは雨を取り(のぞ)く作法であって、血液を(ぬぐ)う仕草ではない。


「ぃってぇえぇ、、なんで切れてんだ?」


 思わず手首を(つか)んで、(ぬる)生命(いのち)が出ないように堰止(せきと)めた。

切れた手が(ふる)えているのだろうか?

掴んだ手が震えているのだろうか。

血液が砂地に(したた)(ごと)に、体温まで()われ寒気(さむけ)がした。


「メイ! コンリーさんを(はこ)んで!

 ミシンさん! (にげ)げるぞ!」


 ミシンは力を使い切ったのだろうか、

()れる()の様に立ち()くしている。

ニシキの叫び声も風の様に通り過ぎる。


「メイ? コンリーさんとミシンさん二人運べるか?」

 

「たぶん、、なにするの?」


 グライデルは頭を振りながら体を起こす。

両腕を(かば)っており火の杭を防ぎきれていない。


「リプレイスだ!!」


 ミシンは(おそ)らく無意識(むいしき)だろう、しかしニシキの叫びに反応(はんのう)した。

下腹部(かふくぶ)の前で両腕を(かさ)ねる様に腕輪を()れた。


 ―甲高(かんだか)波長(はちょう)の金属音が(ひび)き、深紅(しんく)のカーテンを(くぐ)った―


 ミシンはメイの真横に立ち尽くす。

 ニシキはグライデルを立ち(ふさ)ぐ。


「二人(かか)えて走れ! 俺もすぐ行く!」


 メイの身長では二人を引きずる事しかできない。

それでも両脇(りょうわき)に抱え全力(ぜんりょく)()()る。

頭部を切断された化け物は(なお)動こうとしていた。

黄色い体液を噴出(ふんしゅつ)痙攣(けいれん)()り返している。

人間なら絶命(ぜつめい)するはずの欠損状態(けっそんじょうたい)だ。


「ガキが、、やってくれるじゃねぇか

 裏かきやがって、、やめだ! (きょう)()めた」


 ニシキはまるでバスケットマンの様に(かま)える。

逃げるも()めるも都合(つごう)が良いと思っていた。

ただあの指バサミが有効だとは考えていない。


本音(ほんね)とか、俺は分かんないです

 俺たちを逃がす気ありますか?

 どっちにしても手は()きませんよ」


 戦意喪失(せんいそうしつ)か? フェイクか?


「もぅ好きにしろ、ここからお前等は

 お(たず)(もの)って事だ、それ忘れんなよ?」


「思い当たる(ふし)がないです

 (とく)に悪い事してないですよ?」


「そりゃ俺の言い方、次第(しだい)だからな」


 魔術師は手を()()度開き、怪我の具合を確かめていた。

苦痛(くつう)の表情を浮かべているが、まだ余裕もありそうだ。

ニシキの指先から(こぼ)れる熱に痛みがない。


「まあ、そう言う事ですね」


「せいぜい生き()びろ、んで俺に()られろ

 今日は再放流(リリース)してやる、次まで十分に()えてろよ」


「二度と会いたくないですね」


 グライデルを気にしながら戦地(せんち)を後にする。

ミシンとコンリーの様子が気になる、

足を()かそうとするが(ひざ)が重く砂に()まる。

メイの魔術付与は(すで)に切れていたようだ。

今一度グライデルを確認するも姿が見えない。

あの化け物の遺骸(いがい)も無くなっていた。


 こんな簡単に逃がすか?

まだ(かく)(だま)がありそうな気がする。

気も()けないがメイとの合流(ごうりゅう)を急ごう。


 岩のサークルの中心に三人はいた。

コンリーとミシンは仰向(あおむ)けで(なら)んでおり、

メイは背負子(しょいこ)背負(せお)ったまま(すわ)(うつむ)いている。


()たせた、すぐ行こう!」


「お兄ちゃん、コンリーさん(いき)してない!」


 その顔は(やす)らかで、メイの頭を撫でていた時の表情で


 夕日が()しているのに青白(あおじろ)く、美しさが増していた。


さていかがでしたでしょうか?

バトルです、魔術の打ち合いとは行かないです。

この世界の魔術師は大艦巨砲主義の様な畏怖と、

一撃強大な威力で相手を圧倒するものです。

グライデルぐらいの使い手なら連発も可能なんですが。

今回はニシキ捕獲を優先した結果の敗因です。

評価など頂けると今後の励みになります。

宜しければブックマークの登録もお願いします。


次回 第三十三話 サブタイのサブタイ「顛沛流浪」

またお会いできるのを楽しみにしております。

創意執筆中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ