第三十話 盆回り
トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。
私は寝る事で物語が想像されるという変な人です、
寝ずに執筆していると物語が止まります。
寝ちゃうとキーボードが打てません、どしたら良いの!
それでは 第三十話です
ミシンさんの拘束がない事に気づかれた。
疑問と驚嘆でコンリーアタック!
"あんたら・・・・の為にそこまでするか!" と涙目〇発音。
追撃に "プレイが荒い!" "服まで切る事ないでしょ!" 文句がとまらない。
"大人だってガッツいて切ったりしないわ!" とツッコみは裏切らない。
その服は穀風の外套と言って羽織るだけで涼しく、
コンリーさんの魔術付与の中でも自信作だったらしい。
このローブかなり貴重な糸から作られているらしく、
費用は店の売り上げ三ケ月分だと言ってる、婚約指輪じゃないんだから。
可哀そうにヒ~ンと泣いている、犬の使い魔じゃないんだから、、
「コンリーさん、、あの、、ごめんなさい、、
なんか、すみません、、、弁償とか、します?」
「もういいよ、悪気が無いのは分かるし
切れた理由も分からないんでしょ」
大衆演劇の別れのシーンみたいに、
自分のローブの裾を咥え感情を抑えている。
毛布の隙間から三白眼がこちらを見据えている。
「そもそも腕の拘束だってローブだって
そう簡単に壊れたりしないの魔術構成があるんだから」
「魔術構成?」
一人床に横座りさせている事に引け目を感じ、
ニシキも床に正座をした。
「魔術が簡単に解かれないように、構成は複雑にしてある
物質には壊れやすい方向とか、相殺される条件とかがある」
「俺に理解できます?」
ベットが頷きで二度揺れた。
「罪滅ぼしに黙って聞くこと、、、」
床の端に落ちていた一枚の布切れを拾い上げ、
ニシキの鼻先に張って見せる。
「たとえばこの布、普通の服なんかにも使われてる
縦糸と横糸で編み込まれているわね?
横糸を全て切ったとしたらどうなる?」
「そりゃバラバラになって布じゃなく糸の束になります」
「物質の構成が壊れて状態が変わる、布じゃなくて糸に変わった
元の布に戻すにはまた横糸を入れなくちゃ直らない」
「、、はぁ」
ベットの中の人はゴソゴソと方向を変え背中を見せる。
真白な肌に浮き出た、背骨の膨らみが妙に艶かしい。
ミシンはすでに考える事を諦めていた。
毛布が掛かっていない事に気が付いたのだろう、
腰まで露わに出ていた体を慌てて毛布で包む。
「魔術付与というのは重なった糸同士を固く結ぶの
横糸が切れたり縦糸が抜けないようにね
そうすると布は堅固になる、土で結べば固く
風で結べば涼しくとその恩恵もあるの、これが魔術構成」
お?なんか理解できてきた。
「理解了解、結んだ魔術によって重さも変わる
土を纏わせると重くなり、風は変わらないかな
水なんかは条件が少し違うけど」
天秤のような身振りで表現をする。
ニシキには某演歌歌手が降りしきる雨に、
語り掛けている様に見えていた。
「んじゃ次は相殺の話し、ミシンちゃんの拘束
アレを火の魔術で付与したらどうなる?」
「そんなの火傷しちゃいます」
苦痛な表情で答えるが、コンリーは呆れる。
「言い方悪かった、この布に火の魔術だったら?」
「焼け焦げちゃいます」
「そうね燃えやすい物質に火の付与は出来ない
結果として燃やしたいなら良いんだけど
長期間魔術付与したいのなら適当じゃないわ
次に穀風の外套の魔術付与を解くには
同じ風の魔術で相殺するか、火の魔術で物質を
壊してしまうしかないの」
「なんか俺の思ってる相殺って事と
意味が違ってて不思議な感じです
火を消すのに水を掛けるのかと、、
じゃあ火の魔術を相殺するには火の魔術を掛ける
って感じですか?」
「そこはちょっと違うんだ、同じぐらいの魔術効果は
均衡してお互いに影響を及ぼさない
片方の効果が高いと弱い方は飲み込まれて消失する
相殺というより、魔力の移行って感じね」
駄目だ~こんがらがって来た。
「これ使う魔術によって条件が違うから
だからそんなに悩まなくていいから
要点はここ、穀風の外套と硬堅の魔術は
相殺や移行で消えたんじゃなく切断されてる
物質と魔術が切り離されているって事」
「それを俺がやったって事ですか?」
指の腹を見せる様にニシキを差す。
「君はとんでもない事をしたんだよ
君は彼の世の脅威になった」
コンリーさんは笑顔に溢れ
話した言葉と噛み合わなく思えた。
-------------------------------------------------------
柏手の様に一度手を叩く、撮影のカチンコが入ったみたいだ。
集中してはいなかったが、幕が変わった気がしハッとする。
コンリーは立膝に姿勢を変え、見下ろすように切り出す。
「って事でみんなでアテノを脱出します!」
「突拍子ないです!」
コンリーさんの考えに追い付けねえ~
一つカーブを曲がるたび、ヤツの背中が遠ざかる!
なんで脱出? 俺たちこの町に囚われてるの?
トライアンフで大ジャンプとか出来ないぞ?
後ろから寝息が聞こえるのは、たぶん気のせい。
「え~だってこのままだと君は実験台兼対魔術兵器だし
ミシンちゃんは魔術砲台で一生を終えるよ? それでいいの?」
「心の準備が、、まだなんか」
あとクゥクゥ寝息が気になって仕方ないのも、きっと気のせい。
「それはソウサもジジイも同じ、千載一遇のタイミングは
もう訪れないかもしれない、だから今なの」
「今が一番見つかりづらいって事ですか?」
コンリーは立ち上がり手を差し伸べる。
ニシキはその手を掴みゆっくりと立ち上がった。
「そゆこと、ミシンちゃんを着替えさせたら
すぐに出発するから準備して」
「それから砦の持ち物は諦めて、
ここの食料をメイちゃんに集めさせてくれる?
なるべく保存の利きそうな物で、あーっと」
昼に夜逃げの騒ぎになってるな、コレ大丈夫なのか?
コンリーさんの言ってる事はもっともだけど。
脱出ってドコ行くんだ? まさか本当に野盗になるんじゃないよな?
「そこ!余計な事考えない!
炊事場に背負子があるから持ってきて!」
んな事いったって、なら魔術の説明なんてしてないで、
さっさと荷造り始めりゃ良かったじゃん。
「悪かったわね!構成悪くて!」
「ドキッとするから、心に返事しないで下さい!」
三者三様バタバタと夜逃げの準備に取り掛かった。
って言うかショイコってなんだ?
「なーメイ、ショイコってなに?」
「荷物を積んで背負う道具です」
「リュックみたいなのか?」
「リュックって何ですか?」
「荷物を積んで背負う袋だよ」
「背負子みたいなのですか?」
「そこ!時間ないんだからボケあうな!」
ミシンさんは赤いアオザイみたいな服で出てきた。
「どう?似合うかな?」
「凄い似合ってる、可愛いと思うよ」
「ほんと? 体の線、出すぎてないかな?」
「ミシンさんスタイル良いから、問題ないよ」
「キン体見すぎだよぉ」///
「ごめ、見惚れた」///
「そこ!時間ないんだから乳繰りあうな!」
さながら遠足早朝の騒ぎである。
必要最小限の食料、荷物の準備を整え、
やっとアテノ脱出作戦が開始である。
荷物を積んだ背負子はメイが担当になった、
ホントかどうか四人の中では一番力があるらしい。
「それ重くないの?」
「お兄ちゃんぐらいの重さなら、
三つぐらい持ち上がるから全然軽いよ」
「メイって凄いのな」
店中の明かりを灯し、コンリーは誓う。
「次戻る時は、本物の調律師になってるから」
その直後、コンリーの両手から風が巻き上がり
四人を包み込んだ、空気の断層が外界を遮る。
外部からは光が屈折し視認できていない。
「これは静穏の魔術、しばらくは気付かれない
この範囲から出ちゃダメ声もね、さっ行くよ」
コンリーの店を出立した。
いかがでしたでしょうか。
バタバタと一場面に出たり入ったりする主人公の仲間たち。
コンリーの店が手狭に感じます。
さあ長かった前置きはここまでです、冒険の始まりです。
評価など頂けると今後の励みになります。
宜しければブックマークの登録もお願いします。
次回 第三十一話 サブタイのサブタイ「佞奸邪智」
またお会いできるのを楽しみにしております。
ただいま絶賛執筆中です。




