第二十九話 単独ライブは冒険できる
トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。
ここ数日のクラブハウスの話題が凄いですね。
テレビもラジオもその話ばかりです。
そんな話題に乗ってみたりする私もミーハーです。
それでは 第二十九話です
紐を切ってから空気が聞こえない。
息を吸う音もしない、耳の情報にノイズがない。
外で聞こえていた筈の町の喧騒すら静まり返る。
時が止まったように落ちた紐を見つめる。
「すごい、、、凄いよキン!
今なにしたの?なんで切れたの?」
音が帰って来た、緊張の糸も切れた。
瞬きを忘れたかのように呆然とするニシキ。
「わかんない、、なんか切れた、」
手首を縛られたままニシキに抱き着こうとするミシン。
手首の紐が邪魔でフェ〇スハガーの様に、
両手で顔を挟み込む、両の掌が顎に当たる。
その所作にも動じず固まるニシキ。
「じゃじゃ、こっちも切れる?」
縛られた手首を突きだすミシン。
歓喜と興奮が伝わってくる、なぜか狂気も感じた。
「切っちゃって良かったのかな?
これってグライデルが掛けた魔術で
ある意味、保険だったんだよな」
「うん、、それが?」
「俺たちからしても保険だったんじゃないか?
絶対に外れない魔術を、いとも簡単に外す奴って、
そいつもうヤバいだろ?」
ニシキに向けられていた両手はつぼみの様に閉じる。
「、、、あ、そういう事か、」
「これを外したって事は、危険視されるって事だよな
保険のかからない奴は、排除にならないか?」
「どーしよ、、もう一回着けてみる?」
「こんな切れた紐を着けたって、すぐバレるし
切れた事はもう察知されてそうだし」
手首の紐を切っても状況は変わらないか?
その方がミシンさんの自由も利いて動きやすいか?
単純にしか考えられないが、無抵抗よりましか。
ニシキは人差し指と中指で、
手首に巻かれている元紐を恐る恐る挟み込む、
体温を奪う温い金属は、ビクともしない。
鉄の塊を指で切ろうとしているのだから、当然切れるはずもない。
「駄目っぽい、さっきなんで切れたか分からない」
「さっきは、なんて思ったの?」
グイグイと手首の塊を指で触る。
「なんてって、、、いや邪魔だなって」
―ジョ//
//キンッ―
手首の元紐が切れた、、鉄はただの紐に戻った。
しかし切れたのは紐だけではなく、
ミシンの着ている服まで切れた。
胸の襟元から、みぞおち付近までハラっと開く。
切れた瞬間にニシキはドキッとした。
ミシンの体まで切れてしまったのではないかと、
いつ血液が噴き出るのかと思ったが何事もなく無傷だ。
肉体は切れていないが、服の背部まで切れたようで、
バナナの皮を剥いたように上半身が露わになる。
「キン、、こういうのは順番があるの、、でも、、ね?
そんな強引なの、、嫌いじゃないょ」
ネコ科の動物が獲物を狙う一歩目の様に
フワリ近づき、肩口にハラっと後れ毛が零れる。
服はいまだ腕に残っており、繭から蝶が抜け出したようだ。
上目づかいで明らかに顔が紅潮している。
鼻息とも吐息とも取れない、艶やかな産声が聞こえた。
「ちょちょちょ! まった!!!
こここれに、そーゆー意図ないです!!
落ち着こう、それなんだかんだです!」
直視できねー見ちゃったら、なんか、もうなんかだし、
落ち着いてくれ、昼間だよ真っ昼間だよ!
昼だから駄目とかじゃなくて、なんだだし!
こういう展開が駄目とかじゃなく、落ち着けって!
「にゃ~、、ん」
「ストップ!落ち着こう!
まだ慌てるような時間じゃない!
慌わわわわわ、、、」
ミシンは二歩目に歩み寄る。
左手はニシキの座っている木箱に体重を掛ける、
先ほどズレた木箱はピクりとも動かない。
切れた服の裾はミシンの膝に踏まれ、すっかり羽化をした。
産まれたばかりの肢体は滑らかに反り、初めての餌を探す。
猫のような手が、爪を見せずスッと持ち上がる。
その右前足が目を背けるニシキの顔に触れる。
「ただいま帰りました~」
「たっだいま~」
「ちぃっ! あいつら帰って来やがった、、」
目つきが凄い悪いですミシンさん。
ミシンは毛布を被りなおした。
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俺の理性の虎の子は守られたようだ。
しかしミシンさんからは、威圧感が伝わってくる。
小声で"バカ、アホ、イクジナシ"と聞こえる。
ものすごく積極的なんですね、ちょっと怖いです。
普段のあの興味ないですって感じは作っているのですか?
照れ隠しからの強襲って、もう狩猟ですよね。
「ニシキ君? いったい何されたの?
なんでニシキ君が怯えてるの?」
「いやまぁ、なんて言うか、
生き物の繁栄って怖いなって、、、」
―ボソッ―「作戦 失敗」
「あ~、そーいうこと? じゃまた女子会ね~」
作戦失敗? 女子会? なんでコンリーさんが
あっちの言葉知ってるんだ?
ミシンさんに毒されたかー
この作戦もコンリーさんの作戦かー
でもあいつら帰って来たって言ってたけど、
帰りが早いってこと?
「せっかく2時間も外したのに、
進展なしか~残念、、フゥ~ゥ」
時計を見ると確かに、2時間経っていた。
ニシキの感覚としては30分は経っていない。
コンリーは薄い赤の布を持っており、
メイも同じような素材の服を着ている。
水色のワンピースの様な服には、
腰にベージュのスカーフが巻かれており、
左足にサイドスリットが入っていた。
少し大人びたデザインである。
「勝手に着替えさせちゃった
やっぱり女の子の服を選ぶの楽しいわ
ミシンちゃんのも買ってきたけど
拘束取れてからのお楽しみね~」
あっ!? 忘れてた思いだしちゃダメだ。
やめよう、メイの服可愛いな~ 水色似合うじゃないか~
足元はサンダルが普通なんだね~
「ちょっと白々しい、ナニ隠してんの?
なにか考え逸らしてるでしょ?」
バレそう、、こうなったら、、、
妄想でコンリーさんを剥いてやろう。
まあ容易いよ、その巨大な胸部をトリガーにな!
そんなエロ同人たくさんあるしな! くらえ!
見たな? 顔が青いぞ? まあ待て焦るな本命はコッチだ!
ニシキの怒涛のエロ妄想劇は、
コンリーの顔色を変化させる事に、そう時間を掛けなかった。
「バカ! 変態! ミシンちゃんがいながら
そんな事を想像すんな! バカなの? 死ぬの?」
もともと姉属性、強めなのが悪いのだよ。
コンリー、聞こえていたら君の生まれの巨胸を呪うがいい、
君はいい友人であったが、君の巨胸がいけないのだよ、
フハァ!ハハハハ!!
「ニシキ、謀ったなニシキィ!」
「なぜそのセリフが出る?」
妄想が途切れ、あっけらかんとしてしまった。
「なんとなく、このシチュエーションなら
これが正解かなって、、、」
「ミシンさんにエンタメまで擦られた?」
「ちょびっと」
そのやり取りの中ゴソゴソと毛布が動く。
口元だけがチラッと見えた。
「おかえりー、ちょっと楽しそう
私も混ぜて欲しいんだけど」
毛布の隙間から右手を出し手を振る。
「なんで拘束外れてんの!」
毛布を指差しながら絶叫するコンリー。
あーあ俺の工作、台無しじゃん。
いかがでしたでしょうか。
フフフッと私の妄想が盛り上がってしまいました。
ニシキは奥手ミシンは攻め手なのです。
二人は朝チュン出来る日が来るのでしょうか?
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次回 三十話 サブタイのサブタイ「驚天動地」
またお会いできるのを楽しみにしております。
ただいま絶賛執筆中です。




