第十四話 フリとオチってどっちが大事ですか?
トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。
この季節は乾燥が酷くて大変です。
エアコンをつけないと寒いですし、
手がかじかみキーボードが打てなくなります。
乾燥対策で加湿器をつけていますが、あまり効果が無さそうです。
なにか良い案はありませんか?
それでは 第十四話です
えーどうも錦ですこの度、
私の特技と言いますか長所を封印する事と相成りまして。
いささかの御不自由、御不便など御座いましょうが、
何卒ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。 敬具
俺とミシンさんは、しばらく距離を置いて生活をするようにと、
コンリーさんからのご指導がありました。
そうだよね俺のツッコみで、あんな風になったら普通は距離置くよね。
それは、ジジイ?先生?と呼ばれている魔術師に、
見てもらうまでの期間限定でと言われた。
ジジイってのはコンリーさんの魔術の師匠で、じゃなく師匠は先生だよ。
まあ何故ジジイ扱いなのかは詳しく聞けなかったが。
先生ってのはソウサの宮廷教師で、ソウサには全く魔術の才能がなく、
それでも知識だけは、と宮廷教師に配属されたとのこと。
ぶっちゃけ王族だし"俺に魔術は必要ない"ってのがソウサらしい。
二人の間で敬称が違うので、俺はジジイ先生と呼ぶ事にした。
オドに対する二度の負荷は相当キツかったみたいで、
しばらく時間を置いても起きてこなかった。
コンリーさんが"君が心配しても彼女良くならないよ"って、
ミシンさんの看病を買って出てくれた。
俺たちの寝床のアテだが、俺はソウサとソウサの家?で、
ミシンさんはコンリーさんの店兼家で過ごす事となった。
コンリーさんに今後の事をお願いして、俺とソウサは魔術店を後にした。
ソウサの家に向かう道すがら、この地域の事を教わった。
ここは王都ではなく"アテノ"という町で、
砂漠から化け物の侵入を警戒する砦になっている。
化け物だけではなく、野生の生物も対象なんだと。
俺たちが通ってきた岩壁は"風門"と呼ばれており、
岩壁に呪法が掛けられていて、術が強風を生み出し
こちら側に化け物が入って来るのを、防いでいるとの事だった。
呪法ってのは魔術と違うのか?
町中を移動し日が傾き始めた頃。
ソウサが先ほどとは一変、真面目な顔で話を切り出した。
「ちょっと悪い、一か所寄りたいところがある」
「ぜんぜん良いぞ、俺に当てなんて無いんだから」
微笑んでいたが、目は真剣だった。
通って来た大通りから細い小路を抜け、
およそ人目の付かない裏路地に入った。
二階建てのような周りの建物とは一線を画す、
民家?の前で止まった。
「さっき呪法って話したよな?」
「あぁ俺もそのこと聞こうかと思ってた」
「ニシキ達が風門を通って来たなら、
会わせ無くてはならないと思って
俺もここの主に用があるしな
、、、ニシキは予め覚悟しろって言われたら、
"覚悟"ってするか?それとも"抗う"か?」
「なんだよ怖い事いうなよ、
覚悟しなくても怖い目に遭ってるし
ソウサに言われたら、そりゃ覚悟するかな?
場合によっちゃ抗う?かもだけど」
「これから、抗えなかった者に会う
、、悪いが覚悟してくれ、、、」
そう言うと建物に近づき扉を強くノックした。
そんなに強く叩かなくてもと思ったが、
中から十代後半ぐらいの男の子が出てきた。
遅れて後ろに十代前半ぐらいの小さな女の子も顔を覗かせる。
男の子の方は右手を胸に当て深くお辞儀をした。
ソウサが飯屋の前でやった仕草と同じだ。
彼の世での挨拶はこうなのかと思い俺も真似たが、
男の子は横に首を振り、女の子はまじまじと俺を見ていた。
男の子は俺たち二人を家に招き入れてくれた。
普通の暮らしはこんな感じなのかと部屋を見渡していると。
ソウサは懐から小袋を取り出し男の子に渡した。
「すまぬ」
小声だがそう聞こえた。
男の子は小袋を大事そうに懐へ納め、
二階への階段を案内してくれた。
男の子は階段を上がりながら話し始めた。
「わざわざ有り難うございます、
王自らこのような場所へお越しいただくなど
ご厚意心よりお礼を申し上げます」
ソウサは特に言葉は発しなかった、
これは王の威厳なのだろうか。
二階に着くとロウソクの様な明かりが、
奥の間へ向かって左右にズラッと並んでいる。
まるでここを進めと案内をされているようだ。
男の子もその方向へと足を運ぶ。
明かりの続いた先に部屋はあるが扉はなく、
代わりに大きなドレープで仕上げられた、
濃い色のカーテンの様な布が掛かっている。
その前で男の子が立ち止まり再び胸に手を当て、
今度は軽い会釈をした。
男の子は布に手を掛け、布を少し捲った。
ソウサが俺を見て。
「よいな」
俺は声が出ずコクンと頷いた。
ソウサは捲られた布を潜るように部屋に入る。
俺も続いて入ろうとするが、
一番後ろを付いてきた女の子が、
俺の手を、手の甲に軽く触れボソッと何か言った。
気になり声を出してしまった。
「どうしたの?入っちゃダメ?」
女の子はこう話していた。
「お願い、します、、」
意味が解らなかった、
なにか俺に出来るような願い事があるのか?
女の子はそれ以上何も喋らなかった。
その言葉が気にもなったが、
先に入ったソウサも気になり
続いて捲られた布を潜った。
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潜った先はさほど広くない薄暗い部屋だった。
数か所の明かりはあるが生活するには少し暗い。
ソウサの背中が近く部屋全体がよく見えないが、
俺たち以外の気配はする。
「ご苦労である、護衛隊の視察で寄った故
お主の顔を見に来た、体の調子は如何した」
ソウサはいつもより声が低く、話し方も侍みたいだ。
そうだよな日本だったら殿様だもんな。
部屋の奥に誰かいる?そう感じソウサの横から顔を出した。
そこには高齢の男性が大きなベットで横たわっている。
ただその男には瞳が無く瞼が酷く窪んでいる。
腹から下に掛かっている毛布からは、
そこに足が無い事を容易に想像できた。
「国王さま直々の御来訪、私感謝の極みに御座います。
相も変わらずのなりとて、さほど変わりも致しませぬ」
「そうか、幾ばくか健やかならん事を祈る
、、して何か欲するものはあるか?」
「勿体ないお言葉で、しかしなれど
私めの欲しき物など、もう十数年とすれば手に入る事にて
そのお心遣いが一番の褒美で御座います
卑しくも有難く頂戴いたします」
「、、そうかあいわかった、、、おぉそうで有った
お主に会わせたい者がおっての、連れて参った!」
ソウサの後ろから半身で様子を見ていた俺を前に出す。
「おおっおっ俺そんな難しい言葉で話せないぞ」
「いいから普通に話せ、俺は対外的にこういう
話し方をしてるだけで、ニシキは普通に話せばいい
さぁ話してやれ、風門を通った時の話を」
両肩を掴まれグッと押された、なんでそんな話をと思ったが、
ソウサが"さあ"と言った感じで背中をバン!とひと叩きする。
男はこちらを向き耳を傾ている様子だった。
そんなに面白い話じゃないけどと思いながらも、一通りの出来事を語った。
男は俺の言葉に何度も頷き、宙を探るような仕草をする。
風門を抜けた辺りまでを話すと、男は胸に手を当て。
"有り難う"とひと言返してくれた。
「してニシキよ、風門は如何であった?」
またソウサは殿様みたいな言葉になった。
俺は素直な感想で答える。
「風門は凄かった、とんでもない場所だと思う
俺たちは途中で諦めかけたけど必死で通った、
吹き飛ばされた化け物も、戻って来れないと思った」
感想文は苦手だし、たぶん棒読みだったと思う。
「そうであろう、そうであろう!
あのような呪法、天下の端まで見渡しても
他には見当たらん、まこと見事な技よ!」
ハハハと豪快に笑うが、俺はこの時見てしまった。
ソウサの目に涙が滲んでいたのを。
「我らそろそろ事があり出立する故、
お主も達者であるよう願っておるぞ」
「有難き幸せ、御身健やかで有らせられますよう祈っております」
「うむ」
そう言葉を交わし、俺たちは布を潜った。
「ではニシキ参るぞ、、」
「あぁ、、、」
男の子と女の子は家の外まで見送ってくれた。
俺は数歩後ろを見て、おそらく彼らは兄妹かと思い、
また二階にいた男性は祖父だろうと思った。
兄妹は俺たちが見えなくなるまで、深く腰を折っていた。
「悪い待ってくれ、ザワザワが止まらないんだ、、
あのさ風門って何なの?
呪法って何なの?
あの女の子は何を願ったの?
二階にいた男の人は誰なの?
俺はあんな話し方で良かったの?
質問ばかりでごめん、、教えてくれ、
俺なにも知らないんだ、ココの事、、、」
ソウサの口は重かったが、それでも一つ一つ丁寧に教えてくれた。
風門は呪法の技であり、その力は強大だが代わりに
対価が必要となる、風門は長大な呪法の装置である。
たった一人の呪法師が地平の"端から端"まで呪法を顕現させ、
数多の化け物を風の力で"拒む罠"だと説明してくれた。
顕現した呪法の距離を歩いて図ろうものなら、丸二日とかかるらしい。
対価の話はさらに口が重い、目と足はその対価だった。
見える範囲に目を、風を従える為に足を置いてきたと言った。
今日はその労いに訪れたとの事だ。
普段は使いの者をよこし変わりがないか様子を伺っており、
代が替わる前に礼が言いたかったという。
代替わり、、、
ここにも世襲があった、ミシンさんも世襲だ。
あの様子だともう数年のうちに代が替わり、
次はあの兄妹のうちどちらかが対価を払い、
風門の呪法を引き継ぐだろうと。
「ちょっと待ってあの兄妹に親はいないのか?
次の代って祖父の次が孫ってないんじゃ、、」
振り返り悲しそうな眼差しが見せる。
「あの男が父だ、生気があるだけマシなんだ、
考えてみてくれ、目が見えず歩けなかったらと
生きる気力をなくし老いた 広がらない先は老いを早めた
だが呪法を引き継ぐものは、自らの子であり子孫だ
少しでも長く生き、子に孫に引き継ぐまでの時を稼いでいる
俺やお前の話で一時の喜びを与えたからってどうなる?
僅かな喜びの後でつらい現実が押し寄せる
お前だったらどう生きる?どう生きれる?
これが呪法を引き継ぐ一族だ、お前は替われるか?
抗えず受け入れる継承を、生まれを覚悟した結果を!」
普通にソウサの知り合いとして会ってしまった。
知らなかったとはいえ、それは軽々しい態度だった。
でも俺にこの一族の絶望を見せてどうなる?
廻り続けるこの流れは変わらないじゃないか。
一体なにをしたいんだお前は。
「俺はこれを背負う、あの一族と一緒に国も民も!
だからお前とミシンには期待をしている
オドに負荷を掛けるなど呪法以上の危険な技だ!
ハッキリ言う!俺は抗う!抗い民を救う!
お前には悪いがその力、この国の為に利用させてもらう!!!」
大袈裟に背を向けたが、その背中は小さく感じる。
「いろいろ助けてやるから、いろいろ頼まれろ
無礼も飯も奢ってやるから、、」
この男は悪に徹する事が出来ない。
国の為に民の為に、誰も犠牲に出来ない。
他人である筈の俺すら犠牲にするつもりがない、
本当にアホだな、俺ぐらい騙して利用すりゃいいのに。
「晩飯は美味い物が食いたい」
「無礼だな?」
ソウサはまた高らかに笑った。
ちょっと奢られても良い気になった。
いかがでしたか?
今回はタグにある死生観にスポットを当てました。
何かを引き継ぐ事は大変なことです。
代を繋げて未来に過去を知ってもらう事も大事だと思います。
そんな思いのお話でした。
造語の書き間違いルビに注意してます。
評価・誤字の報告など頂ければ、執筆の励みになります。
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次回 第十五話 サブタイのサブタイ「引き続き」
それではまたお会いできるのを楽しみにしております。
誠意執筆中です、次回はいつもの感じに戻る予定です。




