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チョキンとミシン ~パラドックスは足元が見えない~  作者: トチ
第一章 ここに至るまでの経緯とかなんとか
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第十三話 一人でずっと突っ込むって大変ですね

トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。

去年はお家時間が増えて、色々と買い物をして失敗もしました。

プロジェクターがそのうちの一つです。

迫力があってとても良いのですが、スクリーンが低くならず、

上向きで見ていたため、首を痛めてしまいました。

画面やスクリーンは座った目線より下が良いですよ。


それでは 第十三話です


 俺は一体なにをしてるんだ?

延々(えんえん)と続くオチの説明かな?

オチにはネタの説明しないとならないし。

お笑いのネタの内容なんて覚えてないし。

ましてや作家さんや芸人さんじゃないし。

ただの古着屋の店員がする事じゃないし!

ミシンさんは泣き止んだが、オチへの理解が(とぼ)しい。

オチの常套句(じょうとうく)を知らない人は、ボケちゃダメ!

確かにお笑い好きだよ?でもネタとか作った事ないよ俺。

一回一回どこが面白いとか説明しなきゃダメ?

あと分かり辛いボケとか止めてね。

(えら)い人とか巻き込んじゃうから、差し止まるから!


「キンにツッコみ入れられると、胸の真ん中が熱くなる

 お風呂で逆上(のぼ)せたみたいに、心臓がバクバクする」


 真顔でそんなこと言っちゃダメだよ?

(かり)にも女の子なんだからね、俺的に意味が違っちゃうし。


「それ言われると俺の顔が熱くなるよ、

 はい!ツッコみました!どうですか?俺のツッコみ!

 みたいな感じでかなり恥ずかしい」


 まあさっきのはツッコみじゃなくオチなんだけど。

"いい加減にしなさい"とか"もういいよ"みたいな、

そんなオチを持ってきたつもりだったけどね。


「そう?キンのツッコみ良いと思うけど、、」


コンリーさんがしたり顔で間に入って来た。


「君は実にバカだな、やーいバーカバカバーカ」


 ミシンさん目つき鋭いですよ、どうどう。

まだミシンさんは敵意があるんだから、

そういう(あお)るようなこと止めて下さいよ。

でも俺もそんな単純な挑発(ちょうはつ)には乗らないし、大人だし。

キッチリ社会人としてのクレーム対応をさせてもらおう。


「突然なんです?自分そんなに(かしこ)くないですよ

 コンリーさんって案外子供っぽいんですね

 そういうのお好きなんですか?

 知らなかったです意外ですねー」


コンリーさんにグイっと胸ぐら掴まれた。


 顔近いし、眼力(めぢから)強いし、鼻息荒いし、腕力弱いし、

掴んでる腕プルプルですよ?なんです~もう。

少し涙目か?おおきく鼻息(ひといき)ついて~なに!?


「ボケてんのよ!!!」


 店全体がビビッと()れた、震度2ぐらい揺れた。

すっごい静寂(せいじゃく)が訪れた、コレからは聖者(せいじゃ)来るより静寂だね。

俺は目線を(はず)(ゆか)を見ながら言った、言ってやった。


「、そういうのボケって言わないんスよ、、

 それ罵詈雑言(ばりぞうごん)って言うんスよ、ただの悪口っスよ

 そんなのボケと(みと)めてたら、世の中悪意(あくい)()(あふ)れるっス

 だいたいなんでボケたんスか?新手(あらて)のテロっスか?

 (まった)くのフリもなく、良くボケられましたね?

 俺なら怖くてその場に座り込んじゃいます」


 コンリーさんの両手がスルっと俺の首元(くびもと)から外れ、

外れた両手は顔全体を(おお)い、その場にうずくまった。

消え入りそうな(こも)った声でなんか言ってる。


「だってちゃんとしたヤツ知らないし、

 こういうの初めてだし、わたしおねーさんよ!

 初めてのボケには優しくするもんだと思うよ!」


 声だけじゃなく自分の(カラ)に籠ったし耳真っ赤。


「おぉ!そうか!コンリーはボケて突っ込まれたいのか!

 そう言う事は俺に(まか)せろ!昼夜問(ちゅうやと)わず突っ込んでやるから!」


 ややこしい奴はすぐ放送コードギリギリだな!

それ駄目なの!やっちゃダメ!(しも)は使えないの!

ツッコみってのは、相手が傷つかない程度(ていど)にやるもんなの!


「ソウサは(しん)のパリピ王を名乗れ!パリピ王国復活させろ!

 言葉を(つつ)みたまえ!パリピ王の前にいるのだ!と言え!

 考えるな!感じろ!とにかく言え!三分間待ってやるから!

 俺のツッコみはソレ待ちだ!!!」


 なんかミシンさんから湯気(ゆげ)が出た、またなの?どしたー?

フラフラとこっちに寄って来る、耳まで赤いよ?ホント大丈夫?横になる?

コンリーさんは顔が真っ赤で、立ち上がり俺を指差す。


「それ!」

「それ!」


二人(そろ)って叫んだ。


「どれ?」


-------------------------------------------------------


 倒れそうなミシンさんをコンリーさんは支えてくれた。

自分の膝の上に座らせるようにして、ミシンさんごと腰掛ける。

上半身だけで片手を伸ばし水差(みずさ)しのような壺を、

手に取ろうとするが届かない。

俺のツッコみに、あっけにとられていたソウサがふと気付き、

ヒョイっと彼女に渡した。


「ありがと、、これをどう説明すればいいか、、、

 ちょっと考えながら話すから、ゆっくり聞いてくれる?」


 壺の(せん)をスポッと開け、

ミシンさんに一口二口(ひとくちふたくち)と飲ませている。


「さっきオドの説明したわよね、君はどう思った?

 難しく考えなくて良いわ、簡単に答えて?」


「そうですね引力?とか磁力って思いました、

 生き物同士の磁性(じせい)って感じの、、」


 ミシンさんの顔の赤みが(おさ)まっていく。


「うん、おおむね合ってる、オドは相互(そうご)が無いと成り立たない

 一対一、一対多、多対多とね、一対ゼロは無いって事

 関係性によっても違うけど、そこはひとまず置いておいて

 オドは人によって極端(きょくたん)に強いとか弱いとか無いのね」


 コンリーさんはミシンさんの首元に手の甲を当てた。

まだ熱いのだろうか。


「カリスマ性とは違うの、あくまでも本質(ほんしつ)の話

 元々持っている()の質、洗練(せんれん)される事はあっても

 大きくなったり小さくなって消えたりはしないの、、、

 消えるときは、、そうね死ぬときね、、、」


 この説明って何だろう?ここまでに関係があるのか。

ミシンさんが倒れることと、それに嫌に深刻(しんこく)だし。


「さっきわたしがやった、、ボケ、、、は試してみたかったの

 その、、君の突っ込みで何かが起こってると思って

 でもわたしは何ともなかったの、単に恥ずかしかったけど」


 試すにしたって適当すぎやしないか?

ボケで"バカ"は無いだろ?


「でもね、、彼女のオドには負荷(ふか)がかかった

 あんなに負荷のかかったオドは見たことがない、

 あれは個が持つ強さのオドじゃない、、、

 そんなものを個が(かか)えたら誰だって倒れてしまうわ

 その原因は君の"他者(たしゃ)に対する指摘(してき)"つまり

 "突っ込み"ね仕組(しく)みは調べないと分からないけど」


 俺が普段してるツッコみって何なの?

負荷ってミシンさんに苦痛を与えてるって事か?


「じゃあこのまま俺がツッコみ続けたら、

 ミシンさんどうなっちゃうんですか!」


これはツッコみじゃない(あせ)りだ、無責任なりの動揺(どうよう)だ。


「んっ分かってる、だからどうしようか考えてる、、」


 コンリーさんは手の平をミシンさんの額にそっと当てた。

具合は?熱は下がっているのか?

(あご)に手を()えて話を聞いていたソウサが口を開いた。


「なぁコンリー、それ一度先生に相談した方が良いんじゃないか?」


「、、、そうね、それだわ!ジジイが何とかする!

 なんであなたは普段トンチンカンなのに、

 こういう時は(まと)()ること言えるの!

 そこ大事よ!ホント大事だからね!」


 カッと目を見開き瞳を輝かせている、先生?ジジイって誰?

しかし妙案(みょうあん)に力が入ったのだろう、

ミシンさんのこめかみを鷲掴(わしづか)みにし興奮してる。

鷲掴まれたまま、上下に揺らされるミシン頭部。

なんだろ使用前のスプレー缶にしか見えなくなってきた、

きっと悪夢(あくむ)しか見てないだろうな。


 ずっとこのシリアスに()えてきたのに。


 コンリーさんには、ここでツッコみたかった。


-------------------------------------------------------


 小船(こぶね)の影が波間(なみま)(うつ)る、陽光が乱反射(らんはんしゃ)をする。

水面下には砂が見え(あさ)波打(なみう)(ぎわ)のようだ。

船体の中ほどに片膝で胡坐(あぐら)をかく男がいた。

片眼鏡(モノクル)の奥に光る瞳は(あわ)くまるで砂色だ。

日差しを()けるように差し出た大きな傘は、

まるでこの船を目印(めじるし)にしろと言わんばかりの派手さだ。


「ワシが戻るまでよく仕込んでおけよ、面白そうな物が見れるな」


 胡坐を直すと、船体が大きく左右に揺れた。


「アテノに、向かうぞ!」


 小舟の後方に乗っている中年の男が(かい)を引き上げる。

そして空の様子を見ながら大きな傘を(かたむ)けた。

その周囲には砂しかなく見渡す限りの砂漠だ、

ただ小舟の周囲には水が満ちている。

小さなオアシスに船を浮かべているようだ。


「ワシの釣果(ちょうか)はなかったが、他所(よそ)に掛かったか」


傘は砂漠の風を受けた。


いかがでしたか?

お兄さんお姉さんにも頑張って貰いました。

主人公達の知らないことを指摘してくれます。

お互いの世界を知らない同士の掛け合いをお楽しみ下さい。

造語の書き間違いルビに注意してます。

評価・誤字の報告など頂ければ、とても励みになります。

宜しければブックマーク登録もお願い致します。


次回 第十四話 サブタイのサブタイ「引継ぎ」

それではまたお会いできるのを楽しみにしております。

誠意執筆中です。

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