第十一話 ドツキ漫才って、パンチドランカーになりそうだよね
トチです。前書きは短い方が良いと思ってます。
執筆中はBGMをかけてます、Mでないことが多いですが。
最近のお気に入りは落語の死神と猫の皿です。
噺家さんによって、情景や感じ方が少しずつ違って新鮮です。
それでは 第十一話です
「ねぇミシンさん?離受盤でこのイヤリング送ったら
高く買い取ってくれるかな?」
「さぁ、オーナーパリピっぽいし行けるんじゃない↑」
「俺イヤリングなんて着けた事ないからさ
穴空いて無いんだよね」
「私だって痛いの苦手だし空いてない」
ソウサを蚊帳の外で待たせて俺たちはしゃがんで話してる。
"の"の字が足元に無数に書かれてる"の"って無限に書けるから。
"の"がゲシュタルト崩壊しそう、ミシンさんの"る"は崩壊始まってんな。
リア充アレルギーってのは -こうも心に暗い影を落とすんだなあ にしき-
ソウサのイヤリングを着けるジェスチャーをまとめると。
耳を横に引っ張ってイヤリングを下から押し当てるって感じだが。
身振り手振りを何十回もやらせたせいか、ソウサは横で項垂れてる。
簡単なことを本当に分からないフリするのって大変なんだよ!
何故ならお前には罪があり罰が必要だからな!
だいたい俺の耳短いんだから、そんなに引っぱ、、、掛った。
アレ~?耳痛くない。
「おぉリングの方が切れた、耳に付いてる」
ミシンさんが教えてくれた手首を付けたまま拍手してくれてる。
咄嗟にソウサがこっち向いた、主人が帰って来た愛犬の反応だ。
「やっと、やっとかぁ、なんでお前ら分かんないんだよ!
そんなに俺の説明は下手か?」
「うん!言葉の壁って充実感と比例するよね!」
ん?言葉が今風だ、ついに俺の耳までリア充に感染したか?
「なんだお前ら充実してないのか?んな事より普通に話せるだろ?な?」
「女の腰を叩けるほどリアルが充実してない」
「こんなの挨拶だし普通だろ?」
ミシンさんの腰に手を伸ばしたが、
挨拶代わりの重い一撃を肩に喰らってた。
「普通は肩でしょ?」
ミシンさんは手首をグルングルン回してる。
"そだね~挨拶は肩だね~"なんて言いながら、三人で爪屋に入り直した。
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このイヤリングは翻訳をアップグレードするみたいで、
言葉の情報を得るために俺の爪と髪が必要だったらしい。
なんか希少な金属を使っているらしく、
費用が結構掛かってるって言ってるが、
俺は頼んでないからな、ソウサが自腹でなんとかしろ。
「お前らどうせ寝るトコもねぇんだろ?俺んち来いよ!」
たぶん言葉が俺のリア充イメージで翻訳されてる。
イヤリング作り直して欲しい、話し方が絶妙にウザい。
爪もとい"コンリー"さんは魔術師で魔術付与が得意らしい。
この店は生活道具や装飾品に魔術を付与する店だとのこと。
ソウサとは旧知の間柄で、親の代から仲が良いとのこと。
いつの間にかミシンさんもイヤリングを着けてる。
コンリーさんに輪転の腕輪を見せながら、なにか話しをしてる。
「うわ~ずいぶん古い魔術使ってるのね?術刻が四つもあるし
一番古いのは翻訳で次に転移ね、このツウシンって何?
転移に近いけど、、すごい、これなんてコモンのエーよ!」
なにが凄いのか分からないけどミシンさんはニマニマしてる。
離受盤を見せようかと思ったが斯の地の事も気になるし止めた。
どうやら転移の事を聞いてるみたい。
そうだ俺も聞きたいことあるんだ。
「誰に聞けばいいか分からないんだけど"オド"って知ってる?」
一瞬空気がピタッと止まった。
これ聞いちゃイケない事だったの?今から取り消せる?
「ップッ、ハハハハッ!なーに言ってんだお前!
んなもん何処にでもあるだろ?お前にもあるし俺にもある
ソコ這ってる虫にだってある!それが無いと俺らじゃないからな」
「ちょっと!真面目に聞いてあげなよ
この子そういう事を言ってるんじゃないわよ?
ね?おねーさんが教えてあげるわ」
コンリーさんは俺の手を取って話しを続けた。
なんか違う意味でドキドキする、あとなんかミシンさんが慌ててる?
「つまりね"オド"って言うのは、君と君の繋がり
君が引きつける力、私が引きつける力、同じく反発する力でもあるの
目に見えないけど、そこに存在して互いを引き寄せたり離したりしてる
ソウサが私に好意があるとか、彼女が君を好きとかね」
「なんだ!お前もリア充じゃねーか!」
これは挨拶でも演習でもない!繰り返す!これは演習ではない!!
礼砲でも弔砲でも、ましてや祝砲でもない!
顔から火を吹く戦火の口火が切って落とされた!
艦砲射撃の実態弾で沈黙する味方艦艇、
轟沈する旗艦の甲板であっても叫ばなくてはならない!
"我が艦は沈まぬ!だがあえて言おう!
意図せず殴られたと!痛っぁあぁぁいぃ!と!!"
これが俺の走馬灯だろうか戦時下の記憶ないんだけど。
薄れ逝く意識の中ミシンさんの叫び声が聞こえる。
「忘れろぉ!忘れてしまえ!!二度と記憶喪失になれ!!!
、ニシ、、が、キンが悪い、ん?、、、ウソ?、、嘘で、しょ、、
二周水平回転して爪屋の壁に座礁した。
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、、、ほらな、、人生分かんねーだろ?」
「ほんとかな、でも俺の本当は俺しか知らないじゃん?」
「じゃあ言わせて貰うけどな、お前はお前を知ってるのか」
―バチッチッツ、、ッ―
焚火がまた爆ぜた、意識が焚火に向く。
「いやだって俺は俺なんだから、知ってるよ」
「枝の事も忘れてるくせに、、、やめるわ、、寝る、
火にあたっていない背中が寒い。
上着持ってこよ。
それと暖かいコーヒーが飲みたい。
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「、、ごめんってぇ、ごめんよぉお、、やりずぎたよぉ、ぉっ起ぎてよぉ~」
―ズッ、ずズっゥっヒッうっうゥ―
「好きって痛いのよね、ソウサもこのぐらいストレートに出来ないの?」
「俺はフックが得意なの」
実はもう気が付いてる、ミシンさんにも罰が必要だ。
なんで俺が殴られてるんですか?相手が違うでしょ。
それでどんな顔してるの、本当にごめんなさいしてる?
少し薄目で確認してみた、、いつものクールガールはドコですか?
あーあー近畿地方が荒天土砂降りですよ?温井ダムが決壊しそう。
ベルト持って揺すらないで、さっき食べたの緊急放流しちゃう。
まだ頬と首が痛いんだよ、、、
ってまぁ諸々気付いてた。
初めてウチの店にお客として来た時、顔真っ赤だったよね。
大学一緒だったんだね後から同期に聞いた。
何度か俺のクリーニング見に来て、俺の趣味を聞いたり君が趣味の話したり。
わざとらしく近所を自転車で通って、見掛けてもさりげなくスルーしたり。
オーナーと一緒にウチの店に来た時は正直驚いた。
大学卒業してココで働くの?こんな小さな古着屋で?とビックリした。
仕事に私情を持ち込むと上手く行かないから距離を取った、
これは言い訳。
そもそも色恋なんて柄じゃない、俺そういうの似合わないんだ。
人が人を背負うのは重い、俺の背中じゃ彼女が可哀そうだ。
俺がお客の女性を見てると、焼き餅みたいに膨れるでしょ?
それ知ってってやってる、俺じゃない人が良いよって云ってる。
人に心を触られるの苦手なんだ、だから真面目に出来ない。
楽しいだけのが良い、心が揺れるのは辛い、ざわつくのが怖い。
俺を形成しているのは曖昧なんだよ、無責任なんだよ、
これが本音。
しかしこのままじゃ教会にでも運ばれそうだ。
"おお にしき! しんでしまうとは なにごとだ!"とか
モンスター倒して世界救おうとして死んでんのに怒られてさ。
そのうえ所持金半分になっちゃうし、踏んだり蹴ったりだよ。
あれモンスターじゃなくて、たぶん神父がお金を盗んでるよきっと。
だってちょうど半分だよ、普通モンスターなら全部盗ってくよね?
有り金どころか身ぐるみ剥がされ荒野にポイだ。
モンスターはお金盗ってどこで使うの?町で買い物とかしないよね?
全部盗られたら冒険者辞めちゃうもんね。半分残してやるからまだ戦えって。
"王様今月分でございます""教会屋おぬしも悪よのう"とかやってる。
でも I だから仲間の蘇生にお金掛からないね、
良かったね人生ソロプレイで。
な?不真面目だろ?ふざけて結果を曖昧にしたいんだよ。
俺は聖者でも何でも無い。
そろそろ放置じゃミシンさんが可哀そうだしな、、、
俺の周りに簡易オアシス出来そうだし。
さてどうやって起きるかな?ベタだけど、、これかな?
「っっつう、、、ココはドコ?ワタシはダレ?」
片手で上半身だけ起こして呆けた顔をしたつもりだった。
―シュッゴォォォォオンッ!!―
壁で後頭部が絶壁になるぐらい抱き突かれた。
もぅヤダ!二度も記憶喪失した!
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ソウサてめぇニヤニヤしてんじゃねぇよ!
俺の頭は傷だらけで天使になりそうだよ!
もし死んでたら夢の島にドラム缶で捨てられるちゃうよ!
店の壁は凹んでるし、まあ血は出てないけど!
目玉落ちてないか回りを見たが大丈夫でした。
「人属って案外ピュアなのね~
手握られただけでドキドキしてたし」
「ニシキからかうの止めてくれます?」―ずずっ―
アレ?俺の名前知ってんだ、初めて言われた~。
庇ってくれてカッコいいけど、お鼻が出てますよ。
"ちーんしよーね ちーん"でもティッシュ無いや。
ソウサがなにかを閃き、俺を指差しながら何か言いたげだ、
お前の閃き大体ロクなもんじゃないよな?
「あぁっ!それで主って言ったのか!」
ミシンさんがスッと立ち上がりソウサをキッと睨む。
「キン!目と耳塞いでて、そいつから落とす!!邪魔だ!カ〇ンボ!」
「まてまてまてまて!!!お前はドコの聖〇士だ!
なんで木星帰りじゃなくて、オーラ力を選んだよ!
ソウサも出てこなければやられないから!
もっと離れていれば撃たれないから!」
主ってなんだよ?あるじ、、待てこの流れ、、、
"主が名前で何が悪いんだ!俺は主だよっ!"
とはならない、まったくならない、、、主じゃないし。
それに俺また殴られるじゃん!今度は地球のエリートさん達に!
最終的に魂ごと持っていかれてパァになっちゃう!
なんだこの状況は収拾付かない、むしろ酷くなってる。
コンリーさんは面目躍如で楽しそう。
そもそもの事の発端はあなたが原因ですよ?なぜ楽しめる?
なにか指さしてる?あっち?なにどっち???
ミシンさんが俺を見て、紅潮しふるふる震えてる。
なに?どうしたの?黒目無いんだけど!やめよ!怖いから!
耳から湯気が出てるみたいに見える、頭がフットーしそうなの?
数秒のうちに、ふにゃふにゃになって倒れた。
「二人ともよく倒れるわね~」
「俺も昔は初心だったな~」
「そっち二人黙って!ミシンさん壊れちゃったから!」
床じゃ可哀そうだからと、膝をそっと貸してあげたが、
ミシンさん起きて湯気出てまた卒倒ゴロンと倒れたこの状況。
なんて語呂だけが良かった。
御後が宜しい訳ないだろ、次の噺家がいないよ。
いかがでしたか?
十話、十一話と少しボリュームが出てしまいました。
投稿前のブラッシュアップに時間を掛けて
描写と言い回しの違いを直していたら文字数が増えていました。
もう少し磨きを軽くすることが目標です。
造語の書き間違いルビに注意してます。
評価・誤字の報告など頂ければ、すこぶる励みになります。
ブックマーク登録も宜しくお願い致します。
次回 第十二話 サブタイのサブタイ「御出座」
それではまたお会いできるのを楽しみにしております。
誠意執筆中です、、、まさか!あいつも?




